ji91.jpg

    「とらんかな主義」の税務調査が横行

 全国税制懇話会の2017年春季全国研究集会は、去る4月9~10日、箱根で開催された。
 北は北海道から南は沖縄まで、多くの仲間(税理士)が参加し、税務の実態報告を含め、充実した討論が行われた。
 また、同時に行われた第29回全国税制懇話会定期総会は、一年間の活動経過報告とともに、今後の行動計画・組織方針が可決された。
  4月17日に開催した公開講座
KC3P0046.jpg

 定期総会で提起された情勢を紹介する。
<情勢報告>
 ・・・ 略 ・・・
 カジノ法、年金切り下げ法、共謀罪取締法など国民の生活と権利・人権を脅かし、利権絡みに蓋をする安倍政権に対して、市民と野党共闘は澎湃として形成対峙され、大きな潮流が生まれている。
 29年度税制改正が成立した。消費不況を打開する決め手のひとつは大幅賃上げである。所得拡大促進税制は拡充しているが、大企業の賃上げは冷淡で、中小企業は体力がなく、これで賃上げが促進されることはない。自民党内には、内部留保を賃上げに回させるため、大企業の内部留保に課税すべきとの意見があったとも伝えられているが、改正ではカケラも見えない。しかし、政権には禁句であろう大企業の内部留保課税を与党が取上げざるを得ないほど安倍政権の政策運営は行き詰まっていると言える。 ・・・ 略 ・・・
 税務行政では、調査手続の形骸化と「とらんかな主義」の調査が横行している。納税者の権利がないがしろにされ、不当課税が野放しとなっている。併せて税理士が対峙しきれていない実態も浮かび上がっている。
 社会保障税番号(マイナンバー)が実施に入った。国民にとっては利便どころか負担と危険が増す一方の制度であることが明らかになりつつある。
 全国税制懇話会は、全国組織を生かし、これまで積み上げられてきた活動を一層発展させ、情勢に見合った行動を積極的に展開することが求められている。

   春季研究集会・大淵名誉教授の講演ポイント

  ■事実認定と税法解釈適用のプロセス

 ・ 大淵 博義   中央大学名誉教授

 税法の解釈適用は、先ず、私法上の法律行為及びそれにより発生した経済的意義(実質・成果)を認定して、「事実の確定」が行われ、次に、確定して当該事実に適合する税法の規定を発見または検認して、その税法規定を解釈して確定した課税要件規定に適用する作業が行われることである。

 その真に意図している私法上の事実関係を前提として法律構成をして課税要件への当てはめを行うべきである(大阪高裁H12.1.18・訴訟月報47巻12号3767頁)。

 税法上の実質主義・租税回避防止等如何なる理由からでも、私法上まったく有効に形成された法律効果自体はこれを絶対に否定できない(渡辺伸平「税法上の所得を巡る諸問題」『司法研究報告書』第19輯1号(1967年)28頁)。

 現実に有効に成立した法律行為により発生した法的効果又は経済的効果の存在を、税法の解釈適用の場面において、私法上の事実を否定するみなし規定等の格別の規定もなく否定することは許されない。 ・・・

   研究集会における会員の報告

 ・ 「最近の税務調査の動向について」
            中村  明   近畿ブロック会員

 ・ 「小規模宅地の特例」
            阿保 秋声   東京ブロック会員

 ・ 「税務当局の動向」 -東京国税局開示資料から-
            小田川豊作   関信ブロック会員

 以上の講演・報告が行われ、真剣な討議が展開された。

  東京税財政研究センターの公開講座

   東京税財政研究センターの研究活動、第56回「公開講座」が4月17日開催された。メインテーマは「2017年度税制改正の実務への影響」でした。
 講座で報告されたのは次の3本。

 ・ 「国税犯則取締法廃止と国税通則法改正」   講師  小田川豊作 会員
 戦後悪質脱税犯罪の取締りを担ってきた「国税犯則取締法」(通称・国犯法)が廃止され、国税通則法の中に新たな「章」を設けて編入された。その狙いは? 影響は? 
 平成23年の国税通則法改定以来、税務調査手続は厳格化<調査の透明性と予見可能性の担保>されたが、税務調査の実態は強権的傾向がしばしば指摘されている。
 この国税犯則取締法廃止と国税通則法改正が今後の一般調査の強権化にどう影響するのか注視していく必要がある。

 ・ 「法人税改正のポイント」          講師  石井 裕二 会員
 2017年度の法人税改正について、法文を紐解き、実務への影響などを検討。

 ・ 「4-6月期の税務調査の特徴と対応」    講師  千田 範道 会員
 確定申告期が終わり、確定申告書の処理から実地調査へと移行していく税務行政。その中で、申告書がどう扱われ、実地調査対象がどう選定されていくのか、4月~6月にかけて行われる「事後処理」「呼出し調査(机上調査)」の実態とともに、税務の現場の実態も明らかにし、それへの対応を検討。

   春季研究集会および公開講座の報告集をぜひ


● 2017年春季研究集会・講演報告集(全国税制懇話会)
● 公開講座資料(東京税財研究センター)
を配布しております。 それぞれ下記へお申し込みください。
    169-0073東京都新宿区百人町1-16-18 センチュリービル2F
        TEL03(3360)3871   FAX03(3360)3870