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  事業者への影響 - 厳格な情報保護義務

 マイナンバー(国民共通番号)とは、国民一人一人に付される12桁の番号のこと。社会保障、税、災害対策の分野において効率的に情報を管理し、複数の機関に存在する個人の情報が同一人の情報であることを確認するために活用されるという。 ?   これにより、国や地方公共団体等での情報連携が可能になり、「国民の利便性」「行政の効率化」「公平・公正な社会の実現」といった効果が期待されるとしている ?

 以上は国の説明であり、内閣府の調査では「知らなかった」28.6%、「言葉は聞いたことがあるが、内容は知らなかった」43.0%に達している。 法人にも番号が付されることについては「知らなかった」が87.1%にも達している。

 実務上は個人が個人の事情でマイナンバーを利用・使用するのではあまりなく、社会保障と税を間接的に取り扱う事業者が行う(社会保険加入・喪失・手続・給付・・・源泉所得税の徴収・還付・源泉徴収票の発行・・・)等あらゆる分野で事業主が関わることになる。  ・・・  そこには管理者としての厳格な責任と義務、違反者には刑罰と罰金が伴う制度である。

 こんな制度、国民・事業者から求められたのか ?  国民・事業者はまったく求めていたものではない。国家権力は国民を管理・統制するためにあっという間に提案し、あっという間に国会通過、あっという間に公布され、国民の知らないうちに、あっという間に施行されようとしている法律だ。

 マイナンバーの通知は、2015年(今年)10月から行われる。住民票を有する全ての者に対し、市町村から簡易書留で届けられ、その封書の中に同封された「通知カード」に一人一人のナンバーが記載されている。

 実際にマイナンバーが利用されるのは2016年(来年)1月以降の行政手続きからだ。
 具体的には、「来年6月の児童手当の現況届の際に市町村にマイナンバーを提示する」、「厚生年金の請求の際に年金事務所にマイナンバーを提示する」、「源泉徴収票などを記載するため勤務先にマイナンバーを提示する」、「法定調書等に記載するため証券会社や保険会社などにマイナンバーを提供する」 ・・・ など様々なケースがある。 マイナンバーに関わりのないケースは稀だ。

 提供を受けた側から「番号確認」と「身元確認」(「本人確認」)が求められる。 「通知カード」だけでは本人確認ができないため、運転免許証やパスポートなどの身分証明書も提出しなければならない。

 「通知カード」の後、来年1月から、申請した者に対して発行される「個人番号カード」は、そのカードで本人確認のための身分証明書として使用することができる。
 「個人番号カード」の額面には、氏名・住所・生年月日・性別・マイナンバーなどあらゆる個人情報が記載され、本人の写真が表示される。

 マイナンバーの取扱には、個人情報保護法よりも厳格な保護措置が設けられており、取り扱う事業所、事業所の社員にも違反した場合には罰則が設けられている。

  マイナンバー - 運用前から拡大

 マイナンバーの政府広報(テレビコマーシャル)が盛んに流されている。危険な側面は何一つ開示することなくバラ色の広報である。
 来年1月から本格運用が始まるが、運用前から利用拡大が審議されている。
 現行法の税・社会保障・災害対策の3分野に加え、預貯金の口座、特定健診、予防接種の履歴情報にも利用するという。

 1人の生涯不変の番号をお上から与えられ、官民あらゆる場面で使うマイナンバー制度、危険極まりないものだ。 先進国では見直そうとしている制度である。

 マイナンバーがあらゆる個人情報のマスター(万能)キーになること。さらに、その番号を役所や勤務先、取引先、金融機関などどこでも提示しなければならず漏洩の危険はつねにつきまとう。ATMの暗証番号どころではない。 暗証番号は「頻繁に変えてください」と銀行からも注意喚起され、変更することができるが、マイナンバーは生涯不変だ。来年生まれてくる子供は一生涯70年、80年不変である。

  まずは 「徴税強化」 と 「社会保障削減」 に利用

 マイナンバーの利用範囲が預貯金口座まで拡大されることは、財務省が預貯金額も勘案して国民に負担を求めるとしているとおり「高齢者の金融資産を調べ、税、医療、介護の負担を引き上げること」が狙いである。財務相も「社会保障制度を維持するため、負担を求めることが必要」と認めている。
 富裕層は資産を国内から国外へ移転すれば把握は困難であり、海外取引の儲けは国内のマイナンバーではわからない。結果として富裕層の資産には手をつかられず、国内の中間層や低所得者層への徴税強化だけに使われる。

  番号ナシは 社会生活から排除

 マイナンバーは国による国民管理・統制の道具に使われる懸念があるなか、マイナンバーを持てなかったり、マイナンバーを使いたくない人は社会的に排除される恐れがある。
 派遣や日雇労働の現場では、労働者が会社に登録する際、住民票などで本人確認はせず携帯番号の登録が一般的だ。マイナンバーが施行されると、「源泉徴収票」「支払調書」に賃金を受け取った人のマイナンバーと支払った企業のマイナンバーの記載が求められる。マイナンバーを持たない人は働くことすら不可能になる。

 配偶者暴力(DV)やストーカー被害から身を守るため住民票の住所から避難した人やさまざまな理由で身元を明らかにしたくない人、無戸籍の人など ・・・ 弱者が人格さえ認められなくなる制度である。

  いつか来た道  戦争への道

 いま国会で戦争法案が問題化している。
 マイナンバー制度が「徴兵」、「徴用」にも利用されるのではと疑念が浮かぶ。
 戦前、市町村役場の戸籍係が戸籍を点検して徴兵検査を通知した。その徴兵検査結果が軍に連絡され令状をもって徴兵された。
 国家総動員法も都道府県知事名で強制され、軍が国民を徴用した。

 マイナンバーは即時選別可能である。  マイナンバー制度と戦争法制 結びつかなければ ?