成果主義(新人事評価制度)で 無茶な調査・徴収
異動しなかった幹部、職員も同様だ。・・・今年は異動(栄転)しなかったが、来年こそはより高い成績(成果)を上げ異動(栄転)するぞ。と心静かに闘志を燃やす。 ・・・ 税務署はそんな心境を持った職員が入り混じり、交錯する時期である。
人心一新、新しい人事体制の下、税務調査・滞納整理は本格化する。
国税局長会議、全管署長会議、統括官・特官会議等々 ・・・ 人事異動を挟んで会議が行われる。25年事務年度の総括と26年新事務年度の方針が確定される。 ・・・ 各署ともこの方針で26年新事務年度の事務計画が策定される。その方針に沿って、いかに成績(成果)を上げるかが幹部、職員の使命である。 ・・・ 方針に従わなくても、結果、成績(成果)を上げればOKであるが。
税務職員個々は、自らの目標を設定する。その目標で常に管理される。 目標を低く設定すれば、「何だ、この目標は」と叱責される。目標を高く設定すれば、成果・成績は届かない。目標と成果・成績を前面に出した評価制度。これが、税務職員を競争へと駆り立て、無謀な税務調査・滞納整理へと拍車をかけている。
この交錯した税務署環境の中、7月以降、税務調査・滞納整理は本格化する。新たな方針のもと、新たな競争組織のもと、我こそはと一斉に動き始めるのである。まさに、民族(税務職員)大異動である。 ・・・ 納税者は悪である。皆、脱税している。滞納など国家に対する反逆、非国民である。あらゆる手段を使っても調査・徴収する。 ・・・ そこには、国民のための公務員。租税は国民の血税である。などの思想はカケラもない。 ・・・ 悪を退治する。正義の税務職員との思想である。
良き.昔の公務員 悪しき.今の公務員
いつも、明るく、みんなを見守る駐在所のお巡りさん。お年寄りも、子供も、皆声掛けあって仲良しだ。 ・・・ そんな良き昔の公務員はいなくなった。 学校の先生も、役所の職員も、税務職員も、社会も ・・・
昭和40年代、税務署は「親しまれる税務署」との方針のもと、納税者が何でも税務署で相談できる時代があった。事務室も開放的であった。戦後の強権的な税務行政の反省から ・・・ 今はどうだろう ? 税務署での相談は完全予約制だ。受付でブロックされ、事務室を覗くことさえできない。電話での相談を試みても音声案内である。 納税者・国民から隔離した世界で、納税者・国民に一番身近な税務行政が行われている。 昭和40年代を税務職員として勤務した私(20歳代)からすると180度違った違和感を持つ。
税務職員も人の子である。人事評価制度によって査定される。自分の査定(成果・成績)は気になる。ボーナスや昇給・昇任・昇格と将来の出世に影響する。それも、上司の評価によってである。
公務員は国民の公僕なのか ? 組織の忠実な犬なのか ? テレビドラマと同じである。
税務調査の基礎的知識
「税務調査を受けて大変だった。」という話をよく聞くが、税務調査(犯罪捜査としての査察調査以外の一般調査)についての基礎的な知識を考えてみよう。
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① 我が国の納税義務は、原則として納税者自ら申告により確定する申告納税方式です。
したがって、税務行政においては、この権利を崇高なものとして尊重しなければなりません。
② しかし、 ・納税者が申告すべき税額を申告していない場合。 ・税額等の計算が法律の規定
に従っていない場合。 ・また、申告等の内容が適法でない場合。 ・あるいは、納税者自らが
確定した税額を納付していない場合。に税務調査の目的や対象となります。
③ 税務調査は「狭義の行政調査」に属します。
憲法は、個人の尊重(13条)・法定手続の保証(31条)・令状主義(35条)・自白強要の
禁止(38条)・・・等、人権及び財産権に対する保護規定を設けています。したがって、行政
上の必要(税務調査上必要)との理由で実力行使することはできません。あくまでも任意調査で
あり、納税者の同意の下に行わなければならない行政調査です。税務署(税務調査官)の言うこ
と全てを受任しなければならないというのもではありません。
④ 税務調査官には「質問検査権」があります。
納税者に対して、課税要件事実について質問し、納税者の支配に属する資料を検査する権限で
す。
この質問検査権は、税務調査官の恣意独断で行使されるものではありません。必要最小限度の
行使に止まらなければなりません。
「質問検査の必要があり、かつ、これと相手側の私的衡量において社会通念上相当な限度にと
どまるかぎり」・・・と、最高裁判所(昭和48、7、10)も判決で規定しています。
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以上が一般的税務調査の基礎的知識です。
税務調査の円滑な執行は、税務調査官のコンプライアンス(法の遵守)と行政説明責任、納税者の協力から成立ちます。
納税者としては、税務署(税務調査官)の行政に何がなんでも従う必要はありません。仮に、税務署(税務調査官)が強制調査であるがごとき行政調査に及ぶときは、国民のひとりとして断固抗議することが大切です。
我が国は、国民主権の民主主義国家を国是としています。
江戸時代・封建領主的な租税取り立てはあってはならないし、許してはならないということをいま一度考えてみましょう。
「あんな調査官の顔.2度と見たくない!」
事務所でも25年事務年度、税務調査(月次継続関与先)が完結した事案が3件<調査率1.2%)あった。国税局資料調査課事案1件(実調査日数9日)と所轄税務署事案2件(ともに実調査日数1日)である。全て申告是認(修正申告ナシ)であった。
また、この間、税務調査中に依頼を受けた事案、及び、税務調査終了後に相談に来た事案がいくつかあった。
その事案の中から、25年事務年度で決着した事例を2つ上げてみる。
○ 税務調査中に依頼を受けた事例。(統括官の暴走・・・ホームページ既報のとおり)
(* 法律は知らないが、違法ではない。俺の言うとおり7年遡及・重加算税だ)
若手事務官の税務調査に統括国税調査官(上司)が介入、法を無視した調査をゴリ押し。
納税者は自主記帳し、市の商工会に帳簿を持参し決算指導を受けていた。
調査においては、帳簿・領収書等を全て提示。結果、領収書(控)より若干の売上計上漏れが
判明(現金分)。領収書のない経費の帳簿記帳分もあった。
納税者は、現金で仕入れた材料分(経費に計上せず)と現金で売上げた収入分を相殺したもので、
金額の誤差はある。領収書のない経費の帳簿記帳分は、接待交際費等で領収書をもらえない、貰わ
なかった分(過大かもしれないが?)である。と主張。
・ 統括官は先頭に立ち、「売上の隠ぺいだ」「経費の架装計上だ」・・・「7年間調査する」「重加算税だ」と息巻き ・・・ 3年間の調査だがその前4年間は税務署で計算する」と悪質脱税者を摘発するがごとき強圧的となった。
・ また、統括官自らがストーリーを組み立て、捏造した「質問顛末書(聴取書)・・・納税者が自ら脱税したとの自白調書?」に署名・押印を強要した。
・ さらに、修正申告書(所得税・消費税=7年分)も調査官自らが計算・作成し(当初説明より作成された修正申告書のほうが追徴税額多い)、署名・押印を迫った。
納税者は、署名・押印はできないと拒否し、当職に調査立会を依頼してきた。
当職は、国税庁の調査規範、国会決議にも反し(ホームページ既報)、所得税法155、156条、消費税法30条違反等々 15項目の法令違反、違法行政があると統括官の暴走を国税局・税務署・調査官に抗議。
その後統括官は、正当な指摘に逆切れしたのか、「3年より前の帳簿は提示されていない」「いや、トイレに行っていて見ていない」「記憶にない」等々二転三転と嘘を繰り返し、 反面調査にいたっては、実地に調査しているにもかかわらず「書面照会なので国税通則法違反にならない」と嘘の上塗りを繰り返すのみで、 挙句には「法律のことは分からないが、違法ではない。計算は正しい」と自らの非は認めず強弁するのみで調査進展は見られなかった。
最後は、「7年間の修正申告に応じなければ青色申告を取り消し、消費税の仕入税額控除は全額否認して更正する。当然重加算税である」と嘘と詭弁、恫喝と脅迫を繰り返すのみであったので、納税者は自主的権利である「修正申告」(3年分のみ)を自らの計算において強行提出した。
合わせて、このような税務調査はあってはならないと、国税局・税務署に「苦情申立書」を提出し、「保有個人情報開示請求(質問顛末書)」・(全部開示・・・嘘、偽りの文面が判明)、 ・・・ 「質問顛末書」は虚偽公文書偽造に当たり、数々の違法・不適切な行政行為は改めよ! と、責任者との面会を求めるに統括官は受付前に仁王立ちして面会を妨害。責任者も「質問検査権に基づく調査官の裁量の範囲」と無視してきた。
また、3年分の修正申告書の提出に対して、「俺が指示したとおりの7年間の修正申告書の提出がない限り、調査は終了しない」「今後も調査を続ける」と、統括官の意である7年間の修正申告の強要を続けてきた。
その後3ヶ月、対応してきた責任者・統括官4名すべてが退職・人事異動で転勤し(栄転か、左遷か?)いなくなり、異動してきた別の統括官(複数)が謝罪。自主的に提出した3年間の修正申告で調査を終結したい旨の申出があり、調査は決着した。
調査官の描いたストーリーどおりに税務調査を展開し、納税者を犯罪者に陥れる。・・・厚生労働省事件などで検察庁も起こしているが、そこには『法の支配』が存在しない。権力による冤罪が発生する。
(調査受任から決着まで8ヶ月を要した。)
○ 税務調査終了(修正申告・追徴税額納付済)後に相談を受けた事例。
(* ウソを言って、税務調査に臨場。恫喝・強要・脅迫。個人情報は漏洩)
税務署) 事業を始めて10年位になりますね。指導を兼ねて訪問したい。3年分の帳簿類を用
意しておいてください。
納税者) 指導ということですか? 分かりました。
・ 臨場した途端、調査官は変貌。身分証明書を提示、「これがあれば何でも調査できます。調査に応じなければ国税局がきますよ」と恫喝。
・ 帳簿を管理しているパソコンを見せてほしい。(パソコンは夫婦の寝室にあると答え躊躇すると)「見せられないのは、何かやましいことがあるのですか」とたたみ掛けた。
・ 領収書を見て、「この領収書を渡した人の電話番号を教えてほしい。教えてくれなければ疑われても仕方ないよね」と脅迫。
権力を盾に、恫喝、脅迫するような強権的な調査。納税者の無知につけ込み、拒否できない心理
を逆手にとって犯罪捜査のごとくなんでも要求し、無理難題を押し付ける調査を行った。
調査官は、3年分の見積書、請求書、通帳、領収書を持ち帰り、後日、「領収書の相手先が確認
できないから認められない」「相手先の電話番号を再度調べてほしい」と強要。取引先へ次々と反
面調査を行った。 ・・・ 取引先からは、「税務署から連絡があったよ。調査されているの」「税
務署から調べが来たよ。何しでかしたの」と電話がくる状況となった。 税務調査により個人情報
が漏洩され、今まで築いてきた信頼が一挙に崩れ落ちた。
調査2回目は税務署に呼び出された。調査官は、「経費として認められない領収書がある。(実際
は領収書を見ていないことが後に判明) 必要経費は1/2否認する」と威圧。 『多額な税額に
なるので納められない』と申し立てると ・ 「それでは1/4否認としよう」 と修正申告書を
その場で作成し直した。
納税者は、その場を一時も早く逃れたく、『地方税はどの位になりますか?』と質問すると、「地
方税はいくらでもないですよ」と答えたので同意して押印し、追徴税額の納付書を受領し退席した。
その後、所得税の倍額ちかい地方税の追徴通知が来た。
あんな調査官の顔は2度と見たくない。あんな思いは2度としたくないと事務所に相談に来たとのことであった
納税者は乗り気ではなかったが、相談を受けた当職としては、こんな違法・不当な調査は許してはならないと調査手続瑕疵、調査手法・発言の問題を抗議、「更正の請求」・「異議申立(2種)」・「保有個人情報開示請求(①質問応答記録書又は聴取書、質問顛末書、②争点整理票、③調査報告書又は調査経過記録書、④調査結果の説明関係資料、⑤提出した領収書等からの複写物)」をすると同時に、調査結果の取り消し、改めて調査をやり直すよう要求。
保有個人情報開示請求に対しては、文書不存在等の理由で一部開示となった。
責任統括官が2度変わるなか、最終的に3度目の統括官・特官が2名で対応。今までの調査の展開について謝罪。再調査と同様の進展で決着。追徴税額の半分以上の税金の還付を受けた。
納税者の無知に漬け込み、調査記録も残さず、メクラ判の決裁で税務署内部が処理され、調査官の成績のみが優先される。
(再調査要求から決着まで4ヶ月を要した。)
事前(調査)手続
税務調査を実施するに当たり、以下の11項目について事前に納税者および税務代理人(税理士)に通知しなければならないとされています。(国税通則法および関連法規)
1 実地調査を行うという通知
2 調査対象者の氏名・住所
3 調査担当者の氏名・所属部署等
4 調査開始日時
5 調査を行う場所
6 調査対象税目
7 調査の目的
8 調査対象期間
9 調査対象となる帳簿書類その他の物件(法令による保存義務の有無)
10 調査日時・調査場所を変更する場合は協議するという調査官からの説明
11 非違が疑われた場合は通知事項以外も調査できるという説明
また、実地調査中は ・調査の透明性 ・納税者の予見可能性を担保し、調査終了に当たっては、調査内容の争点整理、調査結果の説明等、が税務調査官には義務付けられています。