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  コーポレートガバナンス ・ コンプライアンス

 国税庁長官は「国税庁リポート2013」で、“税務についてコーポレートガバナンス(企業統治)の充実を図る取り組みを進めている”“企業の税務コンプライアンス(法令遵守)の維持・向上には税務に関するコーポレートガバナンスの充実が重要である”と述べている。
 同レポートは「税務運営の考え方」として、“納税者の権利・利益の保護を図りつつ、適正な調査・徴収を行う”としている。
 しかし、国税庁が率先してなすべきコンプライアンス(倫理規範・法令遵守)は、税務調査・徴収の執行現場においては適正に行使されていない。税務行政に関してもコーポレートガバナンス(団体統治)が機能していない。
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   統括国税調査官の暴走

 調査途中受任した税務調査事案では、若手事務官の税務調査に統括国税調査官が介入、法を無視した強権調査が行われていた。
 納税者は税理士に依頼することなく自己記帳し、決算は商工会に帳簿を持参し指導を受けていた。
 調査において若干の売上計上漏れ(領収書控の提示で判明)と領収書の受領のない経費が帳簿に記載されていた。
 若手事務官の復命を受けた統括国税調査官は自ら先頭に立ち、「売上の隠蔽だ」「経費の架装だ」 ・・・ 「7年間調査する」「重加算税だ」 ・・・ 「3年間の検査だが前4年間は税務署で計算する」 ・・・ と、悪質脱税者を摘発するがごとき強圧的になり、 ・・・ 税務署自らがストーリーを捏造した「質問てん末書(聴取書)」(納税者が自ら脱税したとの自白調書?)に署名・押印まで強要した。
 さらに、修正申告書(所得税・消費税=7年分)も税務当局自らが計算・作成し、納税者に署名・押印を迫りながら、追徴税額の説明では修正申告書の合計追徴税額より少ない金額を説明し、明らかにごまかす手法で過大な税金を詐取しようとした。

 依頼を受けた事務所は、税務調査官の規範たる国税庁リポート2013にも反するのみならず、国会決議にも反し(事務所ホームページ「税金ウォッチ」№38掲載)、所得税法155.156条、消費税法30条違反等々・・・15項目以上の法令違反、違法行政があると統括国税調査官の暴走を国税局、税務署、担当調査官に指摘した。

  逆切れ ――― 嘘・詭弁・さらなる脅かしの連発

 統括国税調査官は正当な指摘に逆切れしたのか、「3年より前の帳簿は提示されていない」 → 「トイレに行っていて見ていない」 → 「記憶にない」(同席していた事務官は「提示され説明を受けた」「上司は隣に同席していた」と証言)と二転三転の嘘を繰り返した。

 修正申告額の計算においても同統括官は、「法律のことは分からないが計算は正しい」(実態は・納税者は支払消費税が経費となることを知らなかったため経費算入をしていなかった[税務的には無知]につけこみ、支払消費税を経費認容せず、前4年分は全て推測計算)と強弁。さらに同統括官は「7年分の修正申告に応じなければ青色申告を取り消し、消費税の仕入税額は全額否認して更正する」「24年分(23年分までの調査事案)も調査する」(実際に調査を強行・国税通則法違反の指摘に対し、「書面照会なので違反にならないと」とこれまた嘘の上塗り・・・事務官は実地に調査を行ったと証言)と嘘・詭弁・脅かしの連発で、同統括官の意に応じない納税者・税理士は一切認めないという強権的調査に終始した。

 このような税務調査はあってはならず、国税局・税務署に「苦情申立書」を提出し、責任者との面会を求めるに同統括官は受付に仁王立ちし面会を妨害。また、税務当局責任者も“「質問てん末書」は虚偽公文書偽造にあたり、数々の違法・不適切な行政行為を改めよ”との要求に、「質問検査権に基づく調査官の裁量の範囲」と全く無視した対応であった。

  法の支配

 統括国税調査官のストーリーどおりに税務調査を展開し、納税者を犯罪者に陥れる。 ・・・ 厚生労働省事件で検察庁も起こしたが。 ・・・ そこには『法の支配』が存在しない。
 法の支配が存在しなくなる恐れがある(税務調査官の法を逸脱した裁量)からこそ国税庁リポート2013は「国税庁のなすべきコンプライアンスは、調査官が適正に調査・徴収権を行使すること」「団体統治を充実させること」と述べているのであろう。

 法の支配とは、専断的な国家権力の支配を排斥し、権力を法で拘束することによって国民の権利、自由を擁護することを目的とする原理である。民主主義の根幹である。

 実際の税務行政において国税庁が持つべきコンプライアンスやコーポレートガバンスは残念ながら根づいていない。誰もが納得のいく税務行政が行われることが国税庁にとっても、納税者にとっても重要である。

 なお、この調査事案は、人事異動で担当者が全て変更され、無事決着をみた。

  組織・企業のモラスハザード

 よくもまあ次から次へと出てくるが、法の番人であるべき検察庁の証拠資料の隠蔽・改竄、警察官による供述調書の捏造・虚偽記載、直近では、三瀧商事の産地偽装米の納品、JR北海道の手抜き検査、みずほ銀行の暴力団への融資、阪急阪神ホテルの食品表示偽造……、たちの悪さでは福島原発汚染水は「完全にブロックされている」と誰もが嘘と見ている安倍首相発言もひけを取らない。
 目先の利益、目先の成果を上げるために、嘘、偽造、隠蔽、手抜きなどが当たり前の組織・企業体質になっている状況だ。
 知らなかったのではなく、知っていてやっているのだから確信犯であり、組織・企業のモラルは地に落ちている。

  増差・件数「ノルマ主義」の税務調査

 全国税労働組合の職場新聞に掲載された実態標語である。署長交渉では「(税務調査は)結果として件数にこだわらない」と回答しているが、国税局は「計画の調査件数は断固死守せよ」が本音で、11月を前後して国税局の事務指導が実施されている。
 国税局は実査官を増員してまで例年にない体制で各署への対応を強化している。「あと何件残っているのか」「無予告調査事案がない。もっと無予告調査をつくれ」「(この実績)見る価値がない。また来るからな!」 ・・・ 国税局の事務指導は国税局の意を押し付けるのではなく、各署の実情に応じた適正な指導であるべきなのに「○○の成績が悪い」「他人の責任にするな」等々・・・ 増差・件数「ノルマ主義」が横行している実態が報告されている。
 国税庁リポート2013の趣旨を生かすべき努力を国税庁長官に求めたい。