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「納税者権利憲章」の制定は見送られる


 納税者の権利は
 ① 情報提供等を受ける権利
 ② 不服申し立ての権利
 ③ 正当税額のみを支払う権利
 ④ 予測可能性の確保
 ⑤ プライバシーの権利
 ⑥ 個人情報の保護
 とOECD報告書「納税者の権利と義務」では規定されている。
 先進諸国の中で「納税者権利憲章」が制定されていない国は日本だけである。

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  23年度税制改正法案(国税通則改正法案)、政府税制調査会納税環境整備PTでは、「納税者権利憲章」の策定「税務調査手続きの明確化・法制化」が議論され、第1条の目的規定として「国税に関する国民の権利・利益の保護を図りつつ・・・ 」と抜本的改革を予定していた。

  野党(自・公・・)、財務省、一部税理士グループ、税務労組(第2組合)の反対

 民主党税制調査会、政府税制調査会は、財務省や一部税理士グループ、税務署内労働組合(第2・御用組合)の反対、野党(自民・公明・・ )の合意が得られないと「納税者権利憲章」の策定、「税務調査の事前通知や調査終了時の手続き」の法制化の一部を見送りにした。

   納税者権利憲章と税理士

 税理士法第1条は、「税理士は、税務に関する専門家として、独立した立場において、申告納税制度の理念にそって、納税義務者の信頼にこたえ、税法に関する法令に規定された納税義務の適正な実現を図ることを使命とする。」と規定している。
 我々税理士は、税理士の使命において、納税者の信頼にこたえ、納税者と税務署(行政)との平等の関係を原則とし、独立した公正な立場で納税者の権利を守る必要がある。

 事務所も今春5件の税務調査が終了した。調査省略2件を含むすべてが申告是認である。
 税務調査における調査官の言動は、重箱の隅をほじくるような手法で、法令に規定された納税義務の履行調査とは程遠く、ミスをほじくり回すような調査で、納税者も呆れてしまう始末である。
 宗教法人の調査では、「お寺の過去帳を見せろ ・・・ 」 等々 個人情報保護など税務調査の権限を逸脱した、犯罪捜査のごときである。
 調査終了通知に至っては、「請求書の整理が不十分である」「棚卸計算が簡便すぎる」「一部未払金が未計上である」 よって指導に値するので「調査完了通知書は発行しない」と調査が行われた証拠すら納税者に通知しない(隠ぺい?)のである。
 また、自宅と店舗に複数で税務調査(現況調査、ガサ)が入った。顧問の税理士に相談したが「拒否するとかえって疑われ、調査が厳しくなるので、調査は受けたほうがよい」と言われたが、税理士は来てくれない。どう対応したらよいか ・・・  との相談も舞い込んでくる。(任意調査であり、当日は都合が悪い、後日改めて・・・と主張しなさいと相談者には指導)
 役人の上から目線、税理士のご都合主義である。
 申告是認の税務調査など、本来、褒めてしかるべきである。(法令に規定された納税義務が正しく履行されている)
 まさに、税理士としての「公正な立場で納税者の権利を守る」手腕が求められる。

   納税者は国家の奴隷ではない

 税法は国民の財産権に直接影響を及ぼす。
 税務調査(手続き)は国民の基本的人権に直接影響を及ぼす。
 そういう意味で「納税者権利憲章」「税務調査手続法」の制定は緊急課題である。
 決算期後2ヶ月(原則)以内で法人税の確定申告書の提出と納税を求めている国は、世界の先進国では例を見ない。
 生活資金すら困窮している(可処分所得がない)納税者にも容赦なく課税される(消費税・所得税・・)税制は、憲法で保障された生活権すら無視している。
 有無を言わさず現況調査(無予告調査、いわゆるガサ)を強要、対抗すると更なる強権的・恫喝的調査へとエスカレートする税務調査手続き(任意調査)無視の調査の横行。
 滞納しているヤツは非国民だ! のごとく、納税者を自殺にまで追いやる徴収・取立。
 税理士の社会における必要性の発信。納税者が納税義務を完遂しやすい環境整備が求められている。

   なぜ今 消費税増税 ・・・ 日本の消費税は低くない

 消費税率と税収構成比 

国別日本イギリススウェーデンドイツフランス
消費税率  5.0%17.5%25.0%19.0%19.6%
税収構成比14.3%22.2%24.9%29.0%25.9%


 日本では税率5%の消費税が税収の14.3%を占めている。スウェーデンは税率は5倍だが、税収に占める割合は1.74倍にとどまっている。

   世界一過酷な日本の消費税制

 日本の消費税率は5%、ヨーロッパの消費税(付加価値税)率20%前後より低い。の議論がある。
しかし、税収全体に占める消費税収の割合は、日本14.3%に対し、イギリス22.2%スウェーデン24.9%だ。日本は消費税率の割に消費税収は極めて高くなっている。
 ヨーロッパでは消費税に非課税品目やゼロ税率(免税品目)があり、食料品や書籍、国内旅客輸送、医療品には消費税がかからないか軽減税率が適用されている。
 一方、日本は出産から葬儀(生まれたときから死ぬまで)、食料品や生活必需品にいたるすべてに消費税がかけられている。その結果、財務省が喜ぶ税率は低くても税収は上がるという世界で最も過酷な税制となっている。
 日本ではゼロ税率や軽減税率の経験はなく、馴染まない。納税者に過大な負担を掛け、混乱すると財務省は単一税率を主張するが、ウソである。現に輸出に対しては免税取引(ゼロ税率)を適用し、トヨタなど大企業10社で6,842億円という莫大な消費税還付金をせしめている。
 大企業にはゼロ税率を適用し、中小企業・国民には摘要させないということだ。
 「社会保障と税一体改革」は社会保障給付の削減と消費増税で年間20兆円もの国民負担増となる。消費増税は社会保障の目的税というが、一般会計に組み入れられ(社会保障に使われる保証なし)、財務省のみがホクソ笑む内容となっている。