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   政治の出番

 世界が未曽有の困難に直面している。人民の健康不安とともに、経済も停滞必至である。
 まだどうなるか見通せないが、確かに1国が何かをやって世界人民の健康を守り、世界経済を正常に維持することはできないといえるだろう。
 だが、少なくとも先進諸国には、新型コロナウィルスに効く新薬の開発と防御できるワクチンの開発を早急に成し遂げてほしいものだ。
 それには多数の研究者を動員し、多額の費用を投入しなければならないであろう。
 日本も先進国の一員として、その責務を果たすなら、世界に貢献するとともに、日本の信頼を高めることになる。

 また、経済の停滞は雇用破壊や可処分所得の低下をもたらす。それをほっておくことはできないので、政府は様々な対策を用意することになる。まさに政治の出番だ。
 ここでも多額の財政を投じなければならない。

   過去に学べ

 江戸時代、飢饉の際にとられた施策は、コメの供給と免租、負債免除である。
 国内でいえば、今政府がとるべき策は江戸時代と変わりはないはずだ。
 また、1929年に始まり1930年代後半まで続いた世界大恐慌時の各国の施策も参考にしたい。とくにアメリカのニューディール(新規巻き直し)政策であろう。

   財源はどのぐらい必要か

 現在でいえば、コメは現金となる。商売人には救済資金を支給し、生活費を全世帯に均等に支給することとしたい。全国民が安心できるからだ。金持ちも含めなぜ全世帯なのかは、所得制限などをやっていれば後れを取るので、それはやめたい。ただし、富裕層には後で述べる別の拠出をお願いし、結果的に所得再分配に行き着くことになる。
 財源は……5千万世帯×30万円×3か月=45兆円

 免租は消費税の1年凍結。消費税の1年の税収は20兆円。

 負債免除は、今打ち出されている様々な納付等の繰り下げといえる。ただし、納付の繰り下げは負債の免除ではないので、江戸時代より劣る政策といえる。この際、税金や社会保険料等の国に対する負債は免除すべきだ。医療支援、中小企業支援、など必要な支出は大胆に行うことにしたい。そうなると膨大な財源が必要となる。ざっと150兆円規模は確保したい。
 政府はリーマンショック時の50兆円を上回る規模といっているが、60兆円や70兆円では到底対応できないと思った方がいい。

   財源確保への二つの施策
    個人富裕層が国債引き受けを

 150兆円については二つの政策を実施する。
 ひとつは50兆円の国債を個人の富裕層が購入することとする。いうまでもなく、資金の没収ではない。
 確定申告と財産債務支払調書の情報から、財産額に応じて強制割り当てとする。 今、日本国民の金融資産総額は1,800兆円とされている。上位数パーセントの人が総額の60%ほどを所有しているとの推計があるので、富裕層は1,000兆円の金融資産を保有していると考えられるから、50兆円は5%の持ち出しでしかない。
 日本救済のためにそのぐらいの貢献をしてもいいのではないか。富裕層の倫理感も試される。

    「留保利潤税」にならい「企業蓄積現預金税」を

 残りの100兆円は、上場大企業の内部留保に対して、臨時の課税を行うことで確保する。
 これはアメリカのローズベルト大統領がニューディール政策の基幹的政策として打ち出し1936年に導入した「留保利潤税」に倣うものだ。

 財務省の2018年度法人企業統計によれば、金融・保険業を除く全企業の内部留保金額は463兆円となっている。このうち、「現金・預金」は223兆円で、10年前の1.5倍になっている。
 この伸びは、法人税率の引き下げが大きく貢献しており、代替財源として消費税増税があったことは誰も否定できない事実である。
 つまり、それらの企業努力というよりも、庶民増税で大企業は税金を負けてもらい、現預金をため込んだことになる。
 安倍さんはしきりに大企業に対して、これらの資金を賃上げや設備投資に回すようお願いしたが、大企業はそれを聞かず内部資金を使わずにきた。
 いってみれば、この内部資金は会社経営上いま使う必要のない資金である。

 ここに着目するなら、国難に対する財源として、このため込み資金に大胆な課税を行うことは最も理にかなっている。
 現税制にある留保金課税をいっているのではない。
 臨時の新税として、誰にもわかる端的な名称として「企業蓄積現預金税」を導入する。
 資本金基準と過去数年の所得金額を基準として大企業、その連結法人、グループ法人に限定する。いうまでもなく、現預金から急遽有価証券やその他税逃れのための資金移動は規制する。
 そのうえで、それらの企業が有している223兆円の現預金に対して、50%の単一税率で1回限りの課税を行う。そうすると111兆円が直ちに国庫に入ることになる。
 これで、50兆円+111兆円=161兆円 がすぐに確保できる。
 この財源が確保できれば、平年度の予算執行を行えると同時に45兆円規模の現金給付とウィルス対策に資金を投入することができる。

    「死に金」を「生きた金」にして新型コロナウィルスに勝とう

 3か月や1年限りで終息するとは限らないが、今生きた金を使わなくていつ使うのか、という観点が大事ではないか。
 国民が国に対して信頼を寄せることになり、その後は別の解決策が必ず手当されていくだろうし、国民は理解と納得を示すであろう。
 これで経済停滞を回復できれば、また大企業は儲ければよいし、その条件は整備されるはずだ。

 本来、こうした提案は日本の政治の裏権力を握っている財界からあってしかるべきだが、財界の動きが全く見えないのは残念なことだ。
 日本政府はこの提案を是非受け入れてほしいし、このページを見た人たちは、「企業蓄積現預金税」導入せよと大きな声を上げてほしい。