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 1月18日、19日の2日間にわたり、都内で「第2回いのちとくらしを守る税研集会」が開催された。全国から250名の参加者があった。
 初日に二つの講演があった。
 第一公演は「2020年度政府予算案と税制改正大綱」と題して、岡田俊明税理士がとりわけ軍事費の増加の持つ予算案の意味を掘り下げるとともに、自民党税調が密室で取り決めた税制改正案が年金課税、賃金課税の強化に向かっていることをわかりやすく解説した。
 第二公演は「消費税増税を凍結せよ~日本を豊かにする処方箋~」と題して、藤井聡京都大学大学院教授(元内閣官房参与)が講演した。

 藤井教授の講演に関して、参加者の一人として正直な感想を述べておきたい。
 というのも、若い参加者などが藤井教授の話にしきりに頷いてメモを取り、パワーポイントで成長が阻害されたグラフ等を教授が表示すると熱心にカメラに収める姿を見ると、ちょっと心配になったからだ。
 藤井教授の話は、「消費税増税で経済は冷え込んで成長が止まり日本は終わる」「成長すれば経済大国になり国民は幸せになる」というもので、つまるところ消費税凍結は成長戦略を睨んだもので、成長第一主義を強調するものであった。これは、アベノミクスの戦略そのものであり、いささか筋が違うと受け止めざるを得ない内容であった。

 藤井教授は当日、西部邁の指導を受け保守に属すると自らの立ち位置を語っていたが、第二次安倍内閣の参与として、アベノミクスの推進を支えた人物である。
 その人が消費税を凍結すべきと吠えたことで、消費税増税に苦しみ5%に戻せと主張する人々や野党から注目を浴びているのだが、消費税を凍結した結果、経済の成長が図られて日本が経済大国になっても、それが国民の幸せに結びつく保証は全くないし、その道筋が語られることはなかった。
 安倍首相は日本のGDPを600兆円にすると公約しているが、たとえ600兆円になってもそれで国民の幸せが見通せないことと同じである。

 日本の少子化は予想より早いペースで進んでいる。少子化の下では国内需要は伸びない。成長に限界がある。それでも経済を成長させようとすれば、輸出の増大しかない。
 経済大国はともに輸出の増大を成長戦略に組み込むから、アメリカと中国、日本と韓国の貿易戦争にみられるように激突することになる。
 その場合、輸出を伸ばそうとすれば、勢い経済小国、発展途上国に対する輸出攻勢となる。そこへの輸出は思想、文化等の改編も強制する攻勢となる。マルクスが言った資本の根源的蓄積に近い収奪を伴うことになろう。
 「××第一主義」がはやり、アメリカ第一主義の害悪が世界に巻き散らかされているが、藤井教授の話は日本第一主義といえるもので、最早そのような主義の限界は明らかである。

 消費税の凍結は大賛成である。しかし、それだけで国民が幸せになることはない。
 いま、国民が抱かざるを得ない閉塞感は何が原因なのかを正しく分析し、それを取り除く政策、経済運営の在り方、財政負担の求め先、税金の使い方がどうあるべきかを全国民が自ら考えて、国民の合意の下で日本を運営していくことでしか国民が幸せになることはない。
 この集会に参加した若い人たちは、何かを得ようとして参加しているのであるから、その志には大いに期待したい。人の話を単純に受け止めず、よく咀嚼して、そして真剣に考えてもらうことを望みたい。その点では、いい集会であったし、今後の継続を望むものである。