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供物のフルーツ籠盛りはどっち?

  私は生きものが生きていくために絶対的に必要な食料品に税金を課税するのは人の道に外れた行為だと思っているのだが、どうも少数意見らしい。
 一方、死んだものに対しては、火葬料や埋葬に係る埋葬料は非課税だとしている。
 この関係、究極の状態を描くと、重税で飢え死にを促進し、死んだらノータックスで埋めてやるというのであるから、生き地獄を味わえ、死んだら天国だぞということではないか。
 いやいや、地獄の沙汰も金次第という仏の教えがある。死んだら金は支払わなくていいことになっているからと金を持たずに閻魔さまの前に行くことになるわけで、地獄へまっしぐらだ。為政者は、国民が死んだら地獄に落ちろというわけだ。
 なんともはや、神も仏もないとはこのことか。げに恐ろしきは為政者。

 そんな世で、体力の乏しい子供に十分な食物を与えられず飢え死にさせた。親がとりあえず葬式をだし、祭壇に供物としてフルーツの盛り籠を涙ながらに供えた。
 埋葬も終わり、葬儀屋から請求書が渡された。
 フルーツ盛り22,000円(税込・税率10%)とある。ちょっと待ってよ、死んだ子供に食べさせるための食料品だから軽減税率の対象でしょうと文句を言った。

 さて、さて、専門家のみなさんは消費税税率をどう考える?

 血も涙もある専門家か、血も涙もない専門家か、試されますぞ。

 ちなみに、軽減税率取扱通達は次のように記述している。

  (食品の範囲)

2 改正法附則第34条第1項第1号《31年軽減対象資産の譲渡等に係る税率等に関する経過措置》に規定する「食品」とは、人の飲用又は食用に供されるものをいうから、例えば、人の飲用又は食用以外の用途に供するものとして取引される次に掲げるようなものは、飲食が可能なものであっても「食品」に該当しないことに留意する。

(1) 工業用原材料として取引される塩
(2) 観賞用・栽培用として取引される植物及びその種子

() 人の飲用又は食用に供されるものとして譲渡した食品が、購入者により他の用途に供されたとしても、当該食品の譲渡は、改正法附則第34条第1項第1号に掲げる「飲食料品の譲渡」に該当する。
 ‥‥‥‥‥‥‥

 この葬儀屋が私のクライアントなら、社長に次のようにアドバイスする。 親御さんからフルーツの供物を依頼されたら、社長は次のような一人芝居をすること。

 “はいはい、祭壇の前で子供を思いながらフルーツを食べるために用意してほしいというのですね。分かりました。すぐフルーツを買ってきます。
 買ってきましたよ。さあ食べてください。えっ、胸がいっぱいで食べることができない。じぁ、供物として供えて後で食べたらどうですか。はいはい、了解です。籠代はサービスしますね。”

 この筋書きを親御さんの前で社長が一人芝居すれば、まさに通達の注書に当て嵌まる。
 フルーツの代金は自由設定だから、税抜20,000円。当然食料品の販売だから軽減対象請求額は21,600円(税込・税率8%)となる。

 「フルーツを食べたい方はお申し付けください。なお、食べきれない場合は供物として供えた後、お持ち帰れるよう手配します。<軽減税率対象>」という看板を掲げてもいいよと指導する。

 配慮がよくいき届いた葬儀屋として、地域で評判になること間違いなし。税理士の評価も高まるというものだ。

 
 フーテンの寅さん流「バナナのたたき売り」

 そのポイント還元の実務

  フーテンの寅さんが50円で仕入れたバナナを、「生まれは台湾 台中の 阿里山麓の 片田舎 台湾娘に 見染められ ポーッと色気の さすうちに 国定忠治じゃ ないけれど 一房二房 もぎとられ 唐丸かごにと 詰められて 阿里山麓を 後にして ガタゴトお汽車に 揺すられて……」「これがたったの500円!」と啖呵売。値段をどんどん下げて「えーぃ100円、もってけ泥棒」と、売り上げた。500円が100円で買えたと買った人は大喜び。
 寅さんもしてやったり。50円の儲けである。

 フーテンのシンゾウは、現代風に「カードで買ったら、な、なんと、5%のポイント還元だぁー。さあこの店で買った買った」と啖呵売。
 しかしフーテンのシンゾウは、自分でバナナの仕入はせず、懐はまったく痛まない。人の商売に乗って10%をかすめ取る仕組みを作り、ただ金だけを得ようという露天商の風上にも置けないあくどい奴だ。こんな奴だから、10%の仕切りを当座5%ポイント還元して実入りが少なくても、どこ吹く風だ。

 なんともはやのポイント還元であるが、還元方法は「即時充当」「ポイント付与」「引落相殺」「口座充当」の4種類である。

 大抵の事業者は交際や福利厚生でコンビニから物を買う。大手コンビニ各社は、「即時充当」という方式で2%のポイント還元をしている。レシートは次のようになっている。

領収書 

コンビニ・センター店

20191023日 1000

  雑貨       1,100
  パン        540 軽
  合計       1,640

     (10%対象 1,100
      (8%対象  540

    ポイント還元額 32

〇カードマネー支払  1,608

軽印=軽減税率対象

  これをみるとカードから引き落とされる額は1,608となるので、「値引き」と判断するのが自然だ。

 値引きの対象が表示されていないので、税理士としてクライアントの仕入税額控除の関係を考えれば、次のような取引が行われたとしたくなる。
 1,100はそのままで本体価格は1,00054032の値引きがあり508で本体価格は508÷1.08470

 財務の仕訳は……

   10%雑貨  1,000    現金(電子マネー)  1,608

   仮払消費税  100 

    8%パン   470 

   仮払消費税   38 

 とすることになる。

 しかし、ポイント相当額をその場で充当するということであるから、値引きではない。したがって、充当されたポイント相当額は雑収入となり、不課税である。

 財務の仕訳は……

   10%雑貨  1,000    現金(電子マネー)  1,608

   仮払消費税  100    雑収入(不課税)     32

    8%パン   500 

   仮払消費税   40 

 となる。

 後者の仕訳が正しく、かつ、仕入税額控除もクライアントに有利となる。

 なお、以下は個人的見解。

 「ポイント付与」の場合、ポイントと買物券を交換する場合は不課税。ポイントに応じて値引きする場合は課税商品・非課税商品に対応して値引き。ポイントと引き換えに商品を販売する場合は不課税となる。

 「引落相殺」は相殺時点で課税商品・非課税商品に対応して値引き。

 「口座充当」の場合は雑収入(不課税)となろう。

 フーテンのシンゾウや、まったくかすめ取るだけの啖呵売をするのなら、こうした処理についてもしっかりいえってんだ。べらぼうめぇ。