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  所得税・復興特別所得税の申告は3月15日(木)
     消費税・地方消費税の申告は4月2日(月)まで

 今年も所得税・復興特別所得税の確定申告の時期となりました。還付申告は既に1月から始まっていますが、納付額のある人については、2月16日(金)から3月15日(木)までとなります。
 消費税・地方消費税の確定申告は、2月16日(金)から4月2日(月)までとなります。

 確定申告とは、毎年1月1日~12月31日までの1年間に得た所得の金額(収入金額-必要経費)とそれに対する所得税の金額を計算し、確定申告書を税務署に提出。 源泉徴収されていた税金と相殺し、過不足額を清算する手続です。

 以下、平成29年分の確定申告のポイントを整理しました。

  確定申告の対象者

● 確定申告をしなければならない人(主な例)
 ① 個人で事業を行っており、納税額がでる
 ② 不動産収入があり、納税額がでる
 ③ 給与が年間2,000万円を超える
 ④ 2ヶ所以上から給与をもらっている
 ⑤ 同族会社の役員等で、その会社に不動産や事業資金を貸付、賃貸料や利息を受け取っている
 ⑥ 平成29年中に土地等の譲渡があった
 ⑦ 給与所得者で、給与以外の所得金額が20万円を超える
などです。

● 確定申告をすれば、所得税の還付を受けられる人(主な例)
 ① 雑損控除、医療費控除、寄付金控除、配当控除、住宅ローン控除を受ける
   ・ 確定申告をしなければ所得税の還付は受けられません ・ 住民税も減額されません
 ② 会社で年末調整(控除の申告もれ等含む)を受けられなかった
 ③ 年末調整制度がない公的年金
 ④ 退職金から源泉徴収されている人で、一定の条件の人
などです。

  所得税は収入ではなく ・ 所得にかかる

 所得税の計算は以下のとおりとなります。
 1 収入金額 - 必要経費 = 所得金額
 2 所得金額 - 所得控除 = 課税される所得金額
 3 課税される所得金額 × 税率 = 所得税額
 4 所得税額 - 税額控除 - 源泉徴収税額 -予定納税額 = 納付税額/還付税額

 以上より、マイナスされるもの(必要経費・所得控除・源泉徴収税額)を正確に把握することが、税金を正しく計算(納め過ぎない)するポイントとなります。

 * 必要経費(収入から差し引かれる金額) ・・・ 字句のとおり、収入を得るために必要な費用です。収入との相関関係(相互関連)と金額的合理性(世間常識)であり、十分な主張と根拠を示して計算<自己主張>しましょう。
 給与収入、公的年金収入に対しては、給与所得控除額、公的年金控除額として法令で定められている控除額が適用されます。

 * 所得控除 ・・・ 俗に家庭事情控除と言われるものです。下記事項を参考にしてください。
 ・ 雑損控除            ・ 医療費控除
 ・ 社会保険料控除        ・ 小規模企業共済等掛金控除
 ・ 生命保険料控除        ・ 地震保険料控除
 ・ 寄付金控除           ・ 寡婦.寡夫控除
 ・ 勤労学生控除          ・ 障害者控除
 ・ 配偶者控除           ・ 配偶者特別控除
 ・ 扶養控除             ・ 基礎控除

 * 税額控除 ・・・ 政策的控除とも言われるもので、下記事項を参考にしてください。
 ・ 配当控除                ・ (特定増改築等)住宅借入金特別控除
 ・ 政党等寄付金特別控除       ・ 認定NPO法人等寄付金特別控除
 ・ 公益社団法人等寄付金特別控除 ・ 住宅耐震改修特別控除
 ・ 住宅特定改修特別税額控除    ・ 認定住宅新築等特別税額控除

 ・ 源泉徴収税額、予定納税額は、既に支払っている税額であり、当然の控除です。

   平成29年分確定申告の主な留意・改正点

 平成28年度の所得税の税制改正では、給与所得控除額の変更だけでなく、株式関係などの金融・証券税制の変更やリホーム減税の拡大など身近なところで多くの変更が行われています。平成29年分の確定申告時に特に注意しておきたい変更点をまとめました。

● 平成26年度の税制改正のうち、平成27~29年分の所得税から適用されるもの
 ・ 給与所得控除の上限額が引き下げ
 平成27年分では給与収入額1,200万円超1,500万円以下の控除額は、「収入金額×5%+170万円」、1,500万円超では、一律245万円でしたが、平成28年分の確定申告で給与所得控除の上限額が変更され、給与収入が1,200万円超では、一律230万円でした。
 平成29年分は、給与収入1,000万円超の場合、一律220万円控除に引き下げられました。

● 平成26及び27年度の税制改正のうち、平成28~29年分の所得税から適用されるもの
 ・ 空き家に係る譲渡所得の特別控除の特例の創設
 相続開始直前において、被相続人のみが居住の用に供している家屋を相続した相続人が、その家屋(耐震性のない場合は耐震リホームをしたものに限り、その土地も含む)又は家屋除却後の土地を相続時から3年を経過する日の属する年の12月31日までに譲渡した場合には、その家屋又は除却後の土地の譲渡益から3,000万円を控除することができます。
 この制度は、平成28年4月1日以後の譲渡から適用されます。

 ・ 住宅の多世帯同居改修工事等に係る特例の創設
 平成28年4月1日から、自己の有する家屋に多世帯同居改修工事を行った場合に、次の①又は②の特例を適用することができます。
 対象となる工事は、キッチン・浴室・トイレ又は玄関のうち少なくとも一つを増設し、いずれか2つ以上が複数個所になる工事です。
 ① ローン型減税
 多世帯同居改修工事に含む増改築工事に係る住宅借入金(償還期間5年以上)の年末残高1,000万円以下の部分について、一定割合を乗じた金額を5年間の各年において所得税から控除
 ② 投資型減税
 多世帯同居改修工事の標準的費用の額の10%相当額をその年分の所得税から控除

● 平成26及び27年度の税制改正のうち、平成29年分の所得税から適用されるもの
 ・ 非居住者等に関する課税原則の変更
   (省略)

● 平成28年度の税制改正のうち、平成29年分の所得税から適用されるもの
 ・ 事業所得等関係
 1 特定の地域において雇用者の数が増加した場合の所得税額の特別控除制度(雇用促進税制)
    (省略)
 2 雇用者給与等支給額が増加した場合の所得税額の特別控除制度(所得拡大促進税制)
    (省略)
 3 金属鉱業等鉱害防止準備金制度
    (省略)
 4 特定災害防止準備金制度
    (省略)
 5 探鉱準備金制度
    (省略)
 どれも中小零細個人事業者には、適用が難しい減税です。

● 国税通則法関係
 ・ 延滞税
    (省略)
 ・ 加算税制度
 ① 調査通知後、調査があったことにより更正又は決定があるべきことを予知する前にされた修正申告に基づく過少申告加算税の割合
   <0%→5%>(期限内申告税額と50万円のいずれか多い額を超える部分は→10%)
   無申告加算税の割合
     <5%→10%>(期限内申告税額と50万円のいずれか多い額を超える部分は→15%)
 ② 短期間(5年以内)に繰り返して無申告加算税や重加算税が賦課される場合の無申告加算税又は重加算税について
   無申告加算税の割合
     <15%→25%>に10%加算
   重加算税の割合
     <35%→45%>に10%加算
   無申告で重加算税の場合
     <40%→50%>に10%加算
   <適用関係>29.1.1以降に法定申告期限が到来する国税について適用

● セルフメディケーション税制
 ・ (特定一般用医薬品等購入費を支払った場合の医療費控除の特例)の創設

* 土地・建物の譲渡所得について一言
 土地・建物の売却に際し、その取得価額が不明? ということで売却価額の5%しか差引いてもらえなかったとの話をよく聞く。 売却物件の取得価額が全く不明な場合又は戦前や戦後間もなくから所有していた場合は、最低限5%の取得価額を差引と法令上は規定しているが、20年40年前の取得で全く不明という事例はあまりない。戦前や戦後直後の不動産なら取得価額5%でも十分かもしれないが?
 バブルが崩壊し、不動産の価額が著しく低下した現在、逆に赤字覚悟で売却している例が多い。
 5%の取得価額のみの控除で課税されたのではたまったものではない。
 取得時の契約書がなくとも、登記簿謄本を取り寄せれば取得時が明白になる。記憶をもとに、或いは、親の話ではいくら位であったと主張すれば、その土地・建物の取得時の相場は税務署でも計算できる。
 取得価額とは、契約書の金額だけではない。所得に際しての付随費用(仲介料・不動産取得税等)も取得価額に加算できる。
 必要経費(収入から差し引かれる金額)を如何に主張し、正確な所得を計算するかにある。

* 復興特別所得税
 平成25年分から平成49年分までの25年間の所得税について、復興特別所得税が課税されます。対象となるのは、源泉分離課税や申告分離課税も含めたすべての所得税で、税額はその年の所得税額(基準所得税額)の2.1%相当額です。
 給与所得者等の場合は、源泉徴収義務者である勤務先等が源泉徴収します。

 ・・・何故、個人所得税だけ25年も続くのか?  法人税は廃止されたのに! ・・・

  確定申告書が送られてこない ?

 平成29年分の所得税及び消費税の申告書は、税理士関与の納税者等については、申告書の発送が停止されました。

 それに伴い、従来は送付された申告書にプレプリントされていた下記の申告情報が確認できなくなりました。
 ◇ 所得税の申告区分(青・白・所得の種類)、予定納税額、振替納税の届出の有・無
 ◇ 消費税の申告区分(一般・簡易)、中間納税額、振替納税の届出の有・無

 これは、今後、納税者を電子申告に誘導し、納税者サービスをカットして、浮いた経費と労力をすべて税務調査に振り向けようとする意図が見えてきます。

  年金所得者の確定申告不要制度
     誰のため ?  ・・・  税務署のためでしょ !

 公的年金の収入金額が400万円以下で、かつ、その他の所得が20万円以下の人について、確定申告不要制度が設けられていますが、いったい誰のため ?

 公的年金者の申告不要制度は所得税についてのみであり、住民税の申告は必要となります。所得税の申告は不要だが、住民税の申告はしなさい。 ・・・ なら、なぜ所得税だけ不要としなければならないのか(所得税の申告をすれば住民税の申告は連動される) ?
 それは、税務署の都合だけです。 ・・・ 年金者の申告が税務署に殺到すると税務署が忙しくなる。 税金を還付するような申告は受け付けたくない ・・・ が本音でしょう。

 申告により所得税が還付される

 確定申告を不要とする人であっても、申告することにより所得税が還付される場合があります。(源泉徴収税額がある方)
 ○ 医療費控除、寄付金控除、生命保険料控除(年末調整もれ)、雑損控除などがある
    * 家族の分も支払っていれば控除の対象になります
 ○ 住宅ローン控除を受ける
 ○ 社会保険料(介護保険料など)を普通徴収により個人で納付している
    * 家族の分も支払っていれば控除の対象になります
 ○ 平成28年中に扶養親族等が増えた
 ○ 平成28年中の扶養親族等に誤りがあった、障害者控除、寡婦(夫)控除(年末調整もれ)を受ける

  * とくに、生命保険料や別途納付の社会保険料(後期高齢者医療保険料・・・)の支払がある場合は申告しなければ所得税の還付は受けられません。また、寡婦(夫)控除も年金受給の際に申告しなければ控除されておりません。(漏れていることが多く見受けられます)
 年金の源泉徴収税額は、サラリーマンの源泉徴収と同じで概算であり、税法に照らし正確な税額となっていません。正確に計算すると所得税額と源泉徴収税額と一致することはなく、多くの年金者は税金を払い過ぎとなっています。 ・・・ 申告をすることによって還付を受けられます。(サラリーマンが年末調整で税金が還付されるのと同様)

 税務行政の事務効率のため、年金者の確定申告の権利を奪うものと言えます。