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   税理士の説明責任

 平成26年6月に公布された新行政不服審査法に伴い、整備法として国税通則法の不服申立が改正された。28年4月1日以後の処分から適用となる。
 問題点はあるものの、国税不服申立は以前に比べると納税者を救済する視点で整備された。税務調査で行われる処分に対して不服がある場合は、積極的に活用したいものだ。
 したがって、税理士は調査では安易に修正勧奨に応じるのではなく、更正という処分を基本に置き、調査の終結とその後の不服申立を組み立てる対応をとらなければならない。
 顧問先も当然のように国税不服申立て改正の情報を得て、調査結果に対峙することになる。その時、税理士が安易に修正に応じて、顧問先の不服申し立ての機会を奪うなら、損害賠償で訴えられかねない。
 税理士として、通則法改正を踏まえ、調査終結に向けてそうした道があることを顧問先に丁寧に説明することが不可欠になる。

   改正点のポイント

 改正前は、税務署長に対する異議申立、国税不服審判所長に対する審査請求、訴訟という流れで、「前置主義」となっていたためこの順番を経る必要があった。
 改正後は、税務署長の異議申立が「再調査の請求」という言葉に置き換わったが、「前置主義」が外されたので、すぐ審査請求をすることができることになった。
 これは格段にスピードアップとなり、納税者側の負担が減る。
 改正では、「再調査」における標準審理期間を設定することが新設されたので、結論までダラダラということはなくなる。
 しかし、そもそも原処分庁の税務署長が判断して調査に基づく更正をしたのだから、その税務署長に「再調査」を請求しても、結論はほとんど変わらない。
 これまでの経験でも、税務署長に対する異議申し立てにおける結論は、更正処分の正当性をなぞるものであった。意味がないとまではいわないが、実に馬鹿げた手続であった。
 調査の結論で争いがあるにもかかわらず、税務署の更正に至った場合、直ちに審査請求すべきであろう。
 税理士として押さえておきたい改正の第一ポイントである。

 審査請求に関しても、「審理の計画的進行等の責務」が明記された。
 また、「担当審判官の除斥」や「争点等の事前整理手続」、「審理手続の終結」が新設された。したがって、スピードは速まることになり、納税者の負担は軽減するであろう。
 物件の閲覧等では、すべての提出物件が対象になり、閲覧に加えてコピーも可能になった。
 コピー代を支払うことになるが、そもそも争いがあることに対して、課税庁がどのような証拠等で事実認定を行ったのか、あるいは法律等の適用を行ったのか、納税者側は現物により確認できる。それを十分精査し反論を組み立てることができることとなる。この点も、大きなポイントであろう。

 このように、今回の改正は税務署の処分に対して、事後救済が以前に比べて大きく改善された。
 税理士はこの改正をしっかり押さえておきたい。