総選挙で決まったこと
つまり、争点なしというが、29年4月には消費税を10%に引上げることを承諾したことになる。「消費税引上げ時限爆弾」のスイッチが事実上入ったことになる。
消費税増税法の規定では
消費税引上げの根拠法を改めて確認してみたい。
「社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革を行うための消費税法等の一部を改正する等の法律」(24.8.22公布、26.4.1施行)
*24年6月26日の衆議院における修正で題名中の「消費税法等」が「消費税法」に修正されている。なお、下記の第18条は修正で第2項が挿入され、「経済状況判断」は第3項となった。下記では第2項を省略している。
(消費税法の一部改正)
第3条 消費税法の一部を次のように改正する。
(要約)消費税の税率を7.8%(現行4%、平成26年4月1日以降6.3%)に引き上げることとする。(消費税法第29条関係)
上記の改正は、平成27年10月1日(以下「一部施行日」という。)以後に行われる資産の譲渡等及び保税地域から引き取られる課税貨物について適用する。
(消費税率の引上げに当たっての措置)
第18条 消費税率の引上げに当たっては、経済状況を好転させることを条件として実施するため、物価が持続的に下落する状況からの脱却及び経済の活性化に向けて、平成23年度から平成32年度までの平均において名目の経済成長率で3%程度かつ実質の経済成長率で2%程度を目指した望ましい経済成長の在り方に早期に近づけるための総合的な施策の実施その他の必要な措置を講ずる。
2 略
3 この法律の公布後、消費税率の引上げに当たっての経済状況の判断を行うとともに、経済財政状況の激変にも柔軟に対応する観点から、第2条及び第3条に規定する消費税率の引上げに係る改正規定のそれぞれの施行前に、経済状況の好転について、名目及び実質の経済成長率、物価動向等、種々の経済指標を確認し、前項の措置を踏まえつつ、経済状況等を総合的に勘案した上で、その施行の停止を含め所要の措置を講ずる。
この長ったらしい題名を持つ法律は、俗に「消費税増税法」といわれるが、おそらくこれを修正するか、新たな法律を作ることになる。
簡単なのはこの法律の修正で、第3条の適用開始日を平成29年4月1日と修正し、第18条第3項を削除すれば安倍さんが言ったことになる。
過去を教訓に
さて、上記第18条の第3項をじっくり読んでいただきたい。
「消費税の増税は経済に悪影響を及ぼすから、経済状況が上向いていないときは『引上げの停止を含め』て判断し措置しよう」ということを法律に書き込んだのである。
増税を決めたのはケシカランが、増税法を作ったとき、過去を教訓としてまだ正常な思考が働いていたのである。
平成3年にバブルが崩壊して経済が下降し始めた3年後の平成6年に、村山政権は消費税増税を決めた。実はこのときも、税率については平成8年9月までの検討条項が設けられていたが、橋本内閣は経済が落ち込んでいるにも拘らず平成6年に成立した5%の税率をそのまま閣議決定し、平成9年から5%に引き上げた。経済状況を無視した消費税の引上げで、経済は冷え込み、「失われた20年」といわれる今日の事態を招いた。
経済の状況を見ながら引上げを「停止」できるとしたのは、この轍を踏まないためだ。
今の状況は、1年半の先送りではなく、停止を措置すべきである。
この措置は法律で決められていることだから、政府が閣議決定で「引上げは停止」といえばできる。現に先送りをやるのだから法にかなっているわけだ。
安倍さんの言い分どおり、第18条を削除することになればどうなるか。
経済状況に関係なく、29年4月1日から10%に引き上げることになるのだから、橋龍政権の轍を踏む可能性が高い。
いま、実体経済はマイナス成長であるから、場合によっては橋龍政権より深刻な事態を招きかねない。「失われた40年」になる可能性が高いということだ。
第18条削除は大きな誤り
今の時点で第18条を削除するのは日本の未来にとって、重大な誤りとなる。
野党はどうであったか。共産党は「中止」を公約にしたが、18条問題をどうするかは国民に見えなかった。
他の野党が経済条項に言及した様子もない。
総選挙で「消費税引上げ時限爆弾」のスイッチが入った。国民の近未来は粉々になる
この予言が現実にならないように、早々に総選挙をやって、安倍政権を転換しなければならない。