26年度改正で大きな影響
復興特別法人税廃止でニンマリしているのは誰?
26年度税制改正が3月下旬に成立した。大企業向けの減税措置と個人や中小零細業者への増税が改正の基調ある。
なかでも、復興特別法人税の1年前倒し廃止はあまりにも露骨だ。確かに中小法人にも恩恵は及ぶが、その恩恵は微々たるものだ。
具体的な数字で推計してみよう。
国税庁発表の統計値
24年度 | 事業年度数 (≒法人数) | 申告所得金額 | 1社平均 |
資本金1億円未満 | 1,041 | 26,857百万円 | 26百万円 |
資本金1億円以上 | 86 | 996,669百万円 | 11,589百万円 |
法人税の基本税率は25.5%、復興特別法人税は税額に10%であり、廃止に伴い法人税実効税率は▲2.32%となる。
そうすると、資本金1億円未満の1社当たりの恩恵は60万円、かたや資本金1億円以上の1社当たりの恩恵は2億6,900万円である。
JTが復興特別法人税の廃止による減免を見込み、社員に20万円を臨時に支給すると報道された。減免の恩恵がいかに巨額か想像がつくと思う。
* なお、法人税の基本税率が30%から25.5%に引き下げられたうえでの話である。
中小不動産業の消費税大増税
かたや大きな増税に直面するのは消費税で簡易課税を選択している不動産業である。
簡易課税制度で不動産業を第6種事業とし、みなし仕入れ税率を40%とする。
27年4月1日以後開始課税期間から適用。現行の仕入れ税率は50%だから、一気に10%の増税となる。
例えば、年収30,000千円(抜)の店舗家賃収入がある不動産業者は次のようになる。
不動産業者で簡易選択者の納税額 推移 | |||||
摘 要 | 税率5%時 | 現行8% | 27.4.1以降 | ||
課税標準 | A | 30,000,000 | 30,000,000 | 30,000,000 | |
消費税率 | B | 0.04 | 0.063 | 0.063 | |
消費税額 | C | A×B | 1,200,000 | 1,890,000 | 1,890,000 |
仕入れ税率 | D | 0.5 | 0.5 | 0.4 | |
仕入税額 | E | C×D | 600,000 | 945,000 | 756,000 |
差引 | F | C-E | 600,000 | 945,000 | 1,134,000 |
地方消費税率 | G | 25/100 | 17/63 | 17/63 | |
地方消費税額 | H | F×G | 150,000 | 255,000 | 306,000 |
合計 | I | F+H | 750,000 | 1,200,000 | 1,440,000 |
増税額 5%時との対比 | - | 450,000 | 690,000 | ||
増税額 現行対比 | - | - | 240,000 |
表を見れば一目瞭然で、3%の税率引き上げで45万円も増税になるが、みなし仕入れ税率の引き下げで更に24万円、つまり5%の時は納税額が75万円だったのが、27年4月以降は144万円の納税額となり、ほぼ倍の増税となる。
この増税が行われた背景に、会計検査院の報告がある。検査院の調査で、不動産業者の実際の仕入れ率は42.5%だとした。改正ではこの調査結果よりさらに2.5%引き下げて、40%にしたのだから、便乗引下げといってもよい。
不動産業で簡易を選択している業者は、消費税納税額の確保を見据えて対策をとらないと痛い目に合うので気を付けたい。