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 東日本大震災 追跡 「復興予算19兆円」

  「命を救うお金を、一体何に使っているのか !」と。9月9日、NHKスペシャルで放送された。
 復興予算19兆円は国民への増税で賄うものだ。その税金の行方を追跡した労作である。
 「社会保障と税の一体改革」を旗印に、野田内閣と民・自・公三党の「密室合意」は粛々と国民への負担と「増税」を推し進めている。
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  財政危機をあおって社会保障を切り捨て・自己責任に転嫁して国民負担を引き上げる。
 その貴重な税金がどう使われているのか ? である。
 今、NHKだけでなくテレビ朝日「報道ステーション」でも大きく取り上げている。

   8兆円増税(個人・中小企業)  20兆円減税(大企業)

 社会保障の財源にと消費税の大幅増税、東日本大震災の復興財源の一部に充てると「復興特別税」を導入した。個人所得税は2013年1月から25年もの長期にわたり所得税額の2.1%が増税される。個人住民税は2014年6月から年間1,000円増税され、10年間つづけられる。
 一方法人税は、税率5%の引き下げ条件のもと「復興特別税」は3年間のみ、5%の税率引き下げはその後も恒久的につづけられる。
 復興特別税が課税される25年間、個人や中小企業は8兆円の大増税となり、大企業は20兆円の減税となる。

  「防災」 「減災」 の名を借りた税金の横流し(大型公共事業)

 番組が注目したのは、9.2兆円にもおよぶ第3次補正予算の使途である。認可された事業の4分の1が「被災地以外」の事業に横流しされていた。その金額は2兆4500億円を超えている。
 ・公安調査庁へは「過激派が震災後の不安に乗じて勢力を拡大している」と車両14台を購入。
 ・「震災後、省エネが課題になったから」と電気自動車の燃料電池開発に16億円の補助。
 ・「売り上げが伸びれば将来、被災地にも波及する」と岐阜県のコンタクトレンズ工場へ支出。
 ・「地震対策」の文言を入れて、沖縄県の県道工事に支出。などなど ・・・
 「防災」「復興」にかこつけて税金の横流しが横行している。まさに“火事場泥棒”である。
 一方被災地では、「復興が全然進んでいない」という叫びがある。街を再建するため被災者たちが復興プランを練って補助金を申請しても「見送り」。予算が不足したためと4525件の申請数のうち6割が認定されない。補助金を受け取れても民間へは「額」も「率」も低く、再建のための借金は個人で抱えたまま。被災者の生命を守る医療機関の6割が未だ復旧できていないのが現実である。
 3年余まえ、民主党政権が誕生し「コンクリートから人へ」と騒がれた。この時、「安心」「安全」と名前だけ枕に唱えれば次から次へと予算を獲得でき補助金を支出した。民主党政権は官僚支配から政治主導へ、無駄遣いをなくす「仕分け」が売りであったが霞ヶ関官僚にことごと食いつぶされた。
 今、「復興」「震災対策」と枕詞さえつければ堂々と復興予算を横流し、税金を食いつぶしできる。まさに3年前の二の舞いであり、税金の無駄遣いである。霞ヶ関官僚と無能政治家の“へ理屈”がまかり通っている。
 復興予算の半分以上は個人所得税や個人住民税の増税で賄うものである。それも今後25年間の長期にわたり納めつづけなければならない。

   「再生戦略」 民・自・公3党合意

 民・自・公3党が修正合意した「社会保障・税一体改革」関連法には、18条2項に「財政による機動的対応が可能」となる(消費税増税で財政に余裕ができる)ので「成長戦略」「事前防災」「減災」に「資金を分配」するという項目が付け加えられた。
 「社会保障の充実」を口実に消費税を増税したはずなのに、消費税増税で浮いた予算は「日本強靭化基本法案」(自民)・「防災・減災ニューディール」(公明)とやらの名目のもと100兆円とも200兆円ともの税金が大型公共事業に回される。この計画が表に出たのも消費税増税が国会で可決した翌日であり、国土交通省は早速3兆円超を投入する整備新幹線の着工を認可し、税金のムダを中止すると公言していた八ツ場ダムをはじめ中止・検証を約束していた77事業のうち22事業を復活させた。まさに「人からコンクリートへ」の復活である。
 国民の「生命と生活が第一」とのスローガンを真に実現できる官僚・政治家を創りたいものである。国民の力で !

   環境税  今月導入

 地球温暖化対策税(環境税)が今月1日から導入された。増税幅はガソリン1ℓあたり0.25円となる。
 税率は2016年4月まで3段階で引き上げられ、完全実施後は2623億円の増税となる。
 電気・ガス料金などはすでに消費者に負担を求めているが、環境税もガソリン価格に転嫁され、中小事業者や家計に負担がのしかかる。
 電力業界(東京電力)は9月1日に実施した家庭向け料金の値上げに際して見直した料金原価に環境税分を織り込み10月から転嫁する。標準家庭で月14.5円の料金値上げとなる。
 環境税は原油や天然ガスなどにかかる石油石炭税に一定額を上乗せするもので、すべての化石燃料について二酸化炭素(CO2)排出量1トンあたり289円を新たに課税するものである。
 税率引き上げは今月1日より1ℓあたり0.25円、14年4月1日より同0.25円、16年4月1日より同0.26円と3段階で増税される。

   家計負担増  最大年5000円

 石油元売り各社は増税分を卸売価格に転嫁するとみられるが、中小給油所経営者は「消費税と違い端数増税なので認知度も低く、転嫁は難しい」「増税分を転嫁すれば“便乗値上げだ”と非難される」と語る。全国の給油所数は低燃費車の普及や価格競争でピーク時より3万7743ヶ所までと38%減少した。環境税導入でさらに淘汰が進む恐れがある。
 環境税が家庭用の電気・ガス料金に転嫁されると1世帯当たり年1200円程度の負担増になる。産業界も含めすべての製品価格に転嫁されると1世帯当たり平均年5000円程度の負担増となる。

   ここでも増税分の奪い合い

 環境税の導入で生まれた新たな財源(2623億円)も霞ヶ関官僚・政府内で駆け引きが始まっている。農林水産省はCO2を吸収する森林整備にと、総務省は地方の温暖化対策にと、様々な口実をつけ財源の奪い合いを行っている。復興特別税の財源奪い合いと同様環境税の使途も広げることが念頭にある。
 私たちは、霞ヶ関官僚や政治家の「税金奪い合い」、「税金横流し」のために生活費を切り詰めて税金を納付しているのではない !