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 5月26日、朝日新聞は「赤木さん妻『希望の光ぷつんと消えた』」と報じた。 

 このホームページのトピックス147(2020.01.01号)で、私は赤木夫妻と安倍夫妻を2021年の「人」として取り上げた。
 その理由は、「全体の奉仕者」である公務員が、特定の者のために国民の財産を不当な安値で払い下げ、そのものに利益をもたらすという謂わば汚職に相当する行為を行ったにもかかわらず、何らの科もうけず、国税組織の元締めである国税庁長官になったものがいたという事実に関心を持つからである。

 多くの報道を総合すれば、その違反行為は誰が何ゆえに行われたのか見えているが、当事者はだんまりと詭弁を繰り返し、自らの非を認めようとしない。

 とんでもない上からの指示に抗しきれず改ざんに手を染めざるを得なかった赤木俊夫さんは、自分を追い込んで死を選んでしまった。
 妻の雅子さんは、なぜ死を選ぶまで追い込まれたのかの事実を知ろうと、国と佐川宣寿氏(当時財務省理財局長で改竄を指示したとされる元国税庁長官)に対し、損害賠償の訴訟を起こした。

 昨年12月15日、国は原告の請求を認める「認諾」を行い、国との訴訟は終結した。
 国の言い分が振るっている。
 国側は同日付の準備書面で、改ざん指示を受け業務負担が増した赤木さんの自殺について、「国家賠償法上の責任を認めるのが相当」とし、原告の追加主張などの内容を再検討した結果、「いたずらに訴訟を長引かせるのは適切ではなく、決裁文書の改ざんという重大な行為の重大性に鑑み、認諾する」というのである。そして、請求額の1億700万円を支払った。
 それまで国側は請求棄却を求めて争っており、主張を一変させる異例の対応である。
 改ざんを指示したと認めたということだが、要は証人喚問で下手な証言がでたら、この改ざんの大本に類が及ぶ恐れがあるので、この際、さっさと裁判を打ち切ろうというのだ。
 こうして、国はこの裁判から逃げた。

 しかし、佐川氏の裁判は継続している。

 そうすると今度は、裁判官が、佐川氏と他の財務省幹部ら4人の尋問は行わないと表明した。
 代理人の弁護士は「なぜ改ざんが指示されたのか、真実が明らかにならないまま裁判が終わろうとしている」と指摘したと報道されている。
 「日本の黒い霧」(松本清張)が裁判官によって作り出されようとしているのだ。

 この方針を示した中尾彰裁判長は「(尋問請求を)採用しなくても、裁判は可能だ」とも述べたという。
 筆者は、中尾裁判長のこの言葉が、黒い霧にはしない、俺がすべてさばいてやる、俺に任せておけということを示唆しているのかもしれないと、淡い期待をする。
 ま、裏切られる公算が大きいと思うが・・・・

 判決がどのようなものになるのか、注意深く見守っていきたい。