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 TBSの日曜ドラマ「日本沈没」が話題になっている。
3.11東日本大震災が実際に起こり、また、南海トラフによる途方もない大規模地震と大津波についても公式に予測され、その備えが進められている。
こうした状況にあるのだから、「日本沈没」を単にドラマの世界やありえない架空の話でもないと思いつつ、私を含めた庶民は娯楽番組として楽しんでいるのではないだろうか。 

だが、二つのことが頭をよぎる。 

ひとつは金持ちとそうでない者の近未来の姿だ。
お金持ちは海外移住を準備し、着々と対策を取っているのではないだろうか。
労働所得により生活している庶民は、簡単に移動することはできない。
しかし、労働所得もあるかもしれないが、金融所得で生活できるお金持ちは、生活拠点の移動に制約がない。どこの国に生活拠点を置こうが、グローバルに投資した資産の譲渡所得の繰り返し獲得や利子・配当所得で豊かな生活ができるからだ。
実際に、海外にも生活拠点を確保しているお金持ちは結構いるという。なにかあれば、彼らは日本を脱出する用意をしているのである。 

一方庶民は、せいぜい地震や津波そして火災に対する防災と避難の備えをするしかない。
生活拠点を海外に確保するどころか、国内で被害の少なそうなところに生活拠点を事前に確保することも難しい。その結果、何かあれば国内ですら「流浪の民」となってしまうことを、福島の原発事故で故郷を追い出され人たちの現実が教えている。
福島原発事故は事実上その地域の「沈没」と同じであり、その「沈没」に対する政府の頼りにならない姿もわれわれ日本人は体験済みなのである。 
海外に逃れることが出来るお金持ちと、海外にも国内にも安全なところに移住できない国民。国民に「犠牲者の続出」という既視感に身震いする。 

もうひとつは、自然災害の沈没ではないのだが、財政破綻による「日本沈没」の近未来である。

コロナ対策で巨額の補正予算を組み、その財源を国債で行うことから、国債発行残高がついに1,000兆円を超えたと報道された。地方債が約200兆円で、いわゆる国の借金はすでに1,200兆円を超えている。
原油値上がりが食料品などの値上がりに跳ね返っているいま、資源のない日本の評価が下がり、国債の信用が無くなれば行着く先は円の信用喪失と財政破綻である。
その場合どうなるのかは、ギリシャやほかの財政破綻国の例が教えている。超インフレが起き、国民が物を買えないだけでなく、円の信用がなくなるため日本の輸入が止まる。
そのために最も深刻になるのが、食料品が無くなるということ。直撃を受けるのは大都市圏に住む住民である。東京、大阪、名古屋、福岡など、主要な大都市は大パニックとなり「沈没」する。
地方都市の住民は、近隣農家や漁業関係者の協力があれば、なんとかしのげるかもしれないが、首都圏等はしのげない。
薄氷の上にコンクリートのビル群が乱立しているのが、大都市の姿だといえるのではないだろうか。 

財政危機といわれて久しいが、歴代の政権はこの危機に立ち向かおうとしないばかりか、財政危機を膨らませている。財政基盤は強固などころか、スロースリップを起こしつつあるといってもいいのではないか。一気に瓦解する前に、財政基盤を安定させなければならない。

そのための財政政策を立案し、確実に実行することが政府の仕事だと思うが、ドラマのようなヒーローは出てきそうもない。