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 真似をすることは決して悪いことではない。学ぶということは、真似が入り口になるからだ。
 だが、モノマネとなると、これはお笑いの世界になる。娯楽を与えてくれるのならいいのだが、さてさて。
 
   聞くぅ~?
 
 漫才の大木こだまさんは、「〇×なんだけど、聞くぅ~?」と、突然のこの一言でそれまでの話の流れとまったく関係ない話題に切り替えて笑いを取る。
 この「聞くぅ~?」の表情が小馬鹿にしているようでなおかつ有無を言わせない趣があって、相手はつい「うん」といってしまうところが一つのもち芸になっている。観客は、「おっ、きたな。何の話かな」とつい耳を傾けてしまうのだ。
 
 党首討論で立憲民主の枝野さんが「五輪が国民の命を脅かすのではないか」と質問したのに対し、菅首相は突然「57年前の話だけど、聞くぅ~?」「57年前の東京五輪の時、私は高校生だった」として、東洋の魔女やヘーシンクなどの思い出話をとうとうと披露した。
 これって、完全に大木こだまさんのもち芸のパクリ。
 落ちがあれば観客は大いに笑うところだが、面白さも落ちもないのだから、相方の枝野氏はあっけにとられて固まったが、見ている観客(国民)も固まってしまった。
 
   ちょっと何いってんだかワカンナイ
 
 続く党首討論で共産の志位さんが「命のリスクを生んでまで五輪を開催する理由は何か」と質問したのに対し、菅首相は「命を守るのは私の責務」とトンチンカンな答えを繰り返した。
 これって、まるでサンドウィッチマンのやりとり。伊達さんの話に対して、富澤さんが「ちょっと何いってんだかワカンナイ」と言って笑いを取るお決まりのもちネタ。菅さんはサンドウィッチマンを研究してパクったようだ。
 志位さんが富澤さんの真似をして、「ちょっと何いってんだかワカンナイ」とボケれば観客(国民)の笑いが取れたところだが、そこは国会の場。志位さんも固まり、観客も固まってしまった。
 
   ヤホォー
 
 落語好きだと公言しているのは加藤官房長官。その加藤官房長官は会見で「よせき(寄席)等に対し無観客開催を要請」といった。
 これって、ナイツのはなわさんが「yahoo(ヤフー)」を「ヤホォー」とあえて言い間違えて笑いを取るネタそのまま。さすが落語好きだけあって、ナイツの掛け合いもよく研究してパクったようだ。
 観客(国民)も、落語家も凍り付いた。三遊亭好楽師匠なら「よせぇ~(寄席)」といなすところまで織り込んでいたのかもしれない。
 
   ヤクザの殴り込み
 
 五輪向けアプリの事業費に関して、請負先のNECに対して「脅しておいた方がよい」と指示した平井卓也デジタル改革相。「デジタル庁はNECに死んでも発注しない」とか「完全に干す」などとも語っている。
 これはお笑いの世界からのパクリというより、ヤクザ映画の一場面を見ているようだ。
 反社会的団体の内輪話の世界を見せつけられているようで、NECも震え上がったことだろうけれども、観客(国民)も背筋がヒヤッとした。
 「てめえら、デジタルでガンジガラメにするからな」と、そのうち本気を言い出すに違いない。
 
 それにしても、こうもパクリを繰り出すからには、元ネタの人たちに少なくとも断りや仁義を通しているはずだが、そんな様子はない。
 それでも観客に大うけするならそれまあ愛嬌と流していいのだが、木久扇師匠よろしく「まるでウケないじゃないか」なので、愛嬌とばかりに受け流すこともできない。 
 いやはや、この政府は大丈夫かね。