昨年は大変な年であった。歴史に刻まれる年といってよい。
今年はどのような年になるのであろうか。
筆者は、日本がデジタル管理社会へ突き進む元年になる年で、昨年同様歴史に刻まれる年になると考えている。
何を管理するのか。国民である。管理のなかには、監視という意味合いも含まれる。
政府が単に政策願望を述べているのではなく、令和3年度予算案で財政的措置を施した。政策はすべて財政的裏付けがなければ進まない。そこを手当てしたことで、デジタル管理社会が今後一気に進みだす。
隠れた目玉
令和3年度予算の隠れた目玉は、「内閣・内閣本府等及びデジタル庁関係予算」である。
内閣の「情報システム関係予算」は次のようになっている。
〇 令和2年度 674億円
〇 令和3年度 2,986億円(前年比443%増)
純増額 2,312億円
令和3年度の2,986億円の内訳は、内閣官房計上2,699億円、デジタル庁計上287億円である。
この急増を政府は次のように説明している。
「令和2年度から開始した政府情報システム関係予算の一括計上については、デジタルガバメント閣僚会議の下に設置されたデジタル改革関連法案ワーキンググループにおける議論を踏まえ、その対象を大きく拡大し、令和3年度予算において、2,986億円を計上」
つまり、令和3年度からデジタル庁を内閣の所管する官庁として設置し、これまで各省庁が手当てしてきた情報システム関係予算を内閣に集中することにしたわけだ。
例えば国税庁の情報化経費であるが、次ようになっている。
〇 令和2年度予算額 499億円
〇 令和3年度予算額 24億円(前年比95%減)
純減額 475億円
国税庁の純減額は、デジタル庁に一括計上され、そこから配分される方式に変わる。つまり、国税庁のシステム開発は内閣の意向に沿う形で展開されることになる。
「とりまとめ」のとおりの動き
これらはワーキンググループ作業部会の「とりまとめ」のとおりの動きになっている。
国民の将来を大きく左右するデジタル社会を目指すという作業部会の「とりまとめ」を国民が十分に承知し、政府の描く将来像を納得しているとは到底いいがたい。
国会でもこの問題が十分に議論されているとはいいがたい。
ある意味では、国民の知らないところで国民の生活を大きく左右する社会に突き進もうとしているといってよい。
近い将来、この令和3年がとんでもない社会のターニングポイントであったとなる。
「デジタル改革関連法案ワーキンググループとりまとめ」が総務省から2年11月26日付で発表されている。
ぜひ目を通していただきたい。そこに描かれていることは大変便利になるバラ色の将来社会だ。だが、デジタル社会はデジタル化される情報とその運用によって、その情報による管理(監視)社会の実現を容易にする。ここを見落としてはいけない。
なにが「危険」なのか
管理の対象は国民だが、具体的にはなにか。その人にまつわるすべてである。
出生から死亡するまでの生物的変遷(出生・医療・投薬・埋葬)、人間関係(家族関係・友人関係・近隣関係・師弟関係)、場所的変遷(所在地・渡航履歴)、就学変遷(学歴・資格)、就労変遷(職歴)、所得資産変遷(収入・所得・プラス資産・マイナス資産、金銭移動)、消費変遷(消費性向・趣味嗜好)、納税変遷(関連全税目)、社会保障受給変遷(給付履歴)、思想的変遷(国家反逆・共謀罪該当・所属団体)、宗教関係(信仰傾向・宗派・所属宗教団体)、反社会的変遷(犯罪・受刑履歴、行政罰履歴、所属団体)。
思いつくままに挙げてみた。もっとあるのではないかと思うが、ここに挙げただけでもあなたのすべてにまつわる情報が、国によって容易に一元管理され、それが本人のチェックの利かないところで運用される恐れが十分にあるのだ。
ほぼ議論もなく、国民もほぼ知らないところで進められるデジタル社会化。
作業部会のとおりに予算化された今年は、歴史に刻まれる年になるといえる。
それは、日本をデジタルによる国民監視社会に導く元年になるといえるからだ。
国民として、どのような社会の在り方を求めるのか。
年頭にあたり、特に若い人たちは真剣に考え議論してほしいと切に思う。