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   人間のタイプ

 アメリカ大統領選出のドタバタを見て、人間のありようを考えざるを得ない。
 大胆にいってしまえば、人間のタイプが2種類に分類されるように思う。
 ひとつは、自分の利益欲求を前面に出して考え行動するタイプの人間。
 もうひとつは、社会のありようを考え自分の利益欲求をなんらかの規範をベースに考え行動するタイプの人間。
 いうまでもなくいろいろなことがまとわりついて人間は生きているのだが、どちらかの素地が色濃くその人間のあらゆる場面に現れて、その人の行動となって表出する。
 どんなに猫をかぶっていても、人のありようは隠しようがないものだ。
 報道に接していると、候補者本人もそうだが、それを選出する主体の国民もほぼ2つに分かれていると思う。
 票数でいえばほぼ拮抗している。ということはアメリカ社会の分断と報じられているが、二つのタイプの人間がほぼ同数で社会を構成しているといえる。
 やや悲観的な見方になるが、この分断が短期に解消して融和的な社会になるとは思えない。資本主義が大手をふるっている間は。

   国のトップを白紙委任
   支持率が歯止めに


 翻って、日本の総理大臣選出を題材にして考えてみたい。
 アメリカのように直接的な国民の選択はないので、密室で国のトップが決まる。
 建前は議会が選出するのであるが、絶対的な選出権を持つ多数党から出る候補者が間違いなく選出され、多数党は国民が信任を与えた存在であるから、総理大臣は国民の信任も得ているというのが制度の建前だ。
 しかし、多数党内での候補選出は国民から見れば白紙委任に等しい。ここにこの制度の怖さがある。国民は議員を選出するとき、総理大臣をだれにするかの公約を受けたことはない。政府の選択において国民は、白紙委任するのが議院内閣制の欠陥である。
 この欠陥をいくらかでも補正するのが、世論調査における内閣支持率といってよい。
 低支持率が続けばその内閣は持たないから、やめさせることに限っては国民の直接的選択権が一応あるといえる。もっとも、相当の低下がなければ、長々と居座る者もいるので、支持率を受けて判断する様々な要素も大事だが、これが機能不全となると全体主義に近づく。アベ政治下ではこの兆候がかなり強まった。

   スガさんのスカスカのねらい

 そんな政権であったが、アベ政権は50%を超す高い支持率を維持してきた。
 端的に言って、アベ政治は自分の利益前面主義者に好都合の政治を行ってくれたから、そのタイプの国民が支持したといえる。ということは、国民の半数以上が自分利益前面主義のタイプの人間だということでもある。
 この政権をそっくり事業承継すると誓って総理大臣についた菅さん。
 長年アベさんを支えてきて、支持率を高水準で維持することが政権の持続に不可欠だということをよく知っているに違いない。また、国民の半数以上は自分利益前面主義者だということもしっかり掴んでいることだろう。
 新型コロナウイルスで国民受けを狙ったが、まさに失笑ものの愚作の連発で支持率に陰りが見え政権から逃げだしたアベさんの轍を踏むまいと、事業承継するとしつつ、携帯料金を値下げするとか、はんこをなくすとか、実に自己利益前面主義者の国民に受け入れられそうな施策をぶち上げている。
 なるほど、学術会議の任用拒否という政治的には大問題を引き起こしているにもかかわらず、支持率は50%を維持しているので、菅さんは狙い通りだと読んでいるに違いない。

 こうして、前政権、現政権とも、自分利益前面主義者受けする政策を続けることになる。
 受け狙いが受けて支持率が維持されればいいのであるから、そのためには何をしてもいいのだという姿勢になる。嘘も空ぶかしもOK。

   いま外してはならないこと

 しかし、それを許すなら、社会は成り立たない。人間は社会的動物で、社会が成立して機能していかなければ、種としても存在していけないのだ。
 新型コロナウイルスへの対応は、そのことを改めて人間に突き付けている。
 この情勢下で、嘘をついていたアベ政権の多くの行動に鬼滅の刃が突き付けられ、社会の機能を正常化するいくつかの動きが出てきた。
 モリ、カケ、サクラの嘘を正す、任命拒否を正す、ここを外してはいけない。
 菅さんは、嘘で固めた事業を承継してはならない。
 寅さんはいっている。それをやっちゃおしめえよ。