先輩の教えをいましみじみと噛みしめている。
先輩の教えは、「人生は平坦な道ばかりではない。人生には三つの坂がある。ひとつは上り坂。二つ目の坂は下り坂。これは分かりやすい。驕らず、腐らず、努力すれば必ず乗り切れるし、いい結果になるだろう。もう一つは「まさか」だ。これは自分と無関係と考えがちだ。だが、この「まさか」こそもっとも警戒しなければならない。「まさか」こそ足元をすくわれる坂なのだ。人生には「まさか」があることをユメユメ忘れてはならない。」というものである。
この先輩の教えを意識して生きてきたおかげで、なんとか無事にいまに至っている。
最近、先輩の教えをまざまざと実感させる事態が頻発している。
台風で甚大な被害が起きている。亡くなった方は本当にお気の毒でお悔やみを申し上げたい。
自然災害なので、避けようのない事態なのだろうが、テレビインタビュー等で被害に遭われた方たちの話が報道されている。
まさか浸水するなんて。まさか地すべりが起きるなんて……。
まさに「まさか」「まさか」である。
そうした中で「まさか」の浸水を想定し、2階以上に入居者を運び上げ、被害を出さなかった施設がある。「まさか」の想像力を働かせることが、命を守ることになる好例だ。
異常気象である。自然災害が迫ったとき、まさか自分が被害に遭うとは思わなかったとならないために、最大限の対処を行って身を守りたい。
菅原一秀経産相がわずか1か月半の就任期間で辞任する運びとなった。香典を渡していた事実が暴露され、言い訳が利かなくなったためだ。
選挙民への贈答や香典が、大臣の座を明け渡すことになろうとは考えなかったに違いない。「まさか」の想像力がないばかりに、文字通り足元をすくわれた実例といえる。
チュートリアルの徳井氏。自分の会社が法人税等を申告せず、源泉所得税も納付していなかった。源泉所得税の多額未納は、即刑事罰の対象となる犯則事案だ。無申告や未納で芸能活動ができなくなるとは露とも思っていなかったに違いない。これも「まさか」の想像力がないばかりに、足元がぐらついている。
関西電力の役員の方々。まさかいまごろになって付け届けが引き金になって辞任に追い込まれるとは思ってもいなかったであろう。
返すのが困難なら、個人が受取り管理せず、個人が受取っても会社で管理していれば救われたであろう。ちょっとした注意力の甘さが「まさか」を招いたことになる。
あげればきりがないかもしれない。
若い世代に三つの坂の教え、とくに「まさか」を教えてあげることは長年生きてきた人間の務めだと考え、敢えて記した次第である。