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   対象277犯罪のうち、資金源関連が101も

 5月23日、共謀罪で取締りができる組織犯罪処罰法改正案が衆議院で成立し、参議院に送られた。
 「戦後レジームからの脱却」を掲げる安倍政権の狙いは、テロ対策ではなく、治安維持法の復活といっていい。
 対象となる犯罪は当初の676から277に絞ったが、277の犯罪類型を分別すると、テロの実行に関するものは110、資金源に関するものが101という具合だ。
 資金源というが、会社法、金融商品取引法、税法など、経済活動に関するものである。それが101も共謀罪の対象になっており、これは経済活動を委縮させかねないという指摘が出ている。

   脱税犯罪も対象

 所得税・消費税・法人税の脱税犯罪が共謀罪の対象になっている。
 脱税犯罪はいずれも懲役10年以下とされており、共謀罪を法定刑4年以上に限定するというシバリもクリアしているというわけだ。
 法務省は事例を公開した。
〇 共謀罪の対象となる行為……いわゆる脱税請負人集団の構成員らが,帳簿を操作するなどして多数の会社の脱税を行うことを計画
× ならない行為……会社社長が,会社の業績が思わしくないことから,顧問税理士と話し合い,脱税をすることを計画

   適用あやふや
   取締まる側の判断次第

 法務省の例示はいかにもである。
 「脱税請負人集団」などと看板を掲げている組織があったら教えていただきたい。
 ありもしない集団を例示するということは、取締り側が「脱税請負人集団」と認定するかどうかにかかっているといっているに等しい。
 ところで、この例示はテロと関係があるのか?
 前から読んでも後ろから読んでもテロとの関係は読み取れない。例示は単なる脱税の相談でしかない。
 消費税の不正還付は未遂でも罰則が適用されるが、それ以外の脱税は未遂を罰する規定はない。
 ところが、法務省の例示によれば脱税の未遂犯にお縄をかけるというわけだ。
 テロとも無関係、法律では犯罪とされていない脱税未遂を「テロ等準備罪」として逮捕するというのだから、無茶苦茶だ。

 ならない行為の例示も意味が分からない。
 この会社の社長はテロリストで、テロのために資金が必要なことから、自分が運営する会社で脱税による資金確保を行うこととした。
 顧問税理士にテロを実行するためだなんてことはおくびにも出さないのは当然のことだが、間違いなくテロの準備である。
 法務省の例示では、このようなテロのための資金確保計画は「テロ等準備罪」の対象にならないというのだから、いったい何のために改正するのか分からない。
 
 ところがである。ならない例示のとおりA社長は業績が思わしくないので脱税相談したところ、競争相手のB社長がこれを嗅ぎ付け、この際会社を潰してやろうと画策。「A社長は、内心ではテロを実行するための資金確保のために脱税することを計画しており、A社長と顧問税理士はグルだぞ」と警察に密告。
 内心は誰にも分からない。共謀の事実はあるようだから、あとは逮捕して自供させればよいと、取締り側は動くことになる。

 日ごろの言動が国に反するようなことをしている社長に狙いをつけて、節税の話し合いを「脱税することを計画」と認定することも取締り側の認定次第だ。
 内心の自由を取り締まるという、この法律の最大の問題を法務省の例示そのものが示しているのは、なんとも皮肉である。
 二人が絡めば組織となるから、一般人が対象となることも明らかだ。
 治安維持法の復活そのものではないか。

   節税という正当な行為を委縮させ
   経済を委縮させる間抜け

 例えば税法はすべての取引を規定しているわけではないし、解釈・適用も見解が分かれるものが少なくない。納税者は法律が規定する課税要件を満たすのであれば、余分な税金を納める必要はない。その時、あらたな経済活動や取引がどのような課税となるのか、その場合、節税策はあるのかなど、法律の解釈権は納税者を含めすべてにあるのだから、検討し協議するのは当然のことだ。
 それが政府や当局の見解や解釈と別れることもあるが、そうした場合、その協議が犯罪の計画だと看做される可能性がある。
 企業や個人事業者に助言をした税理士や弁護士らも、政府の解釈によっては共謀罪に問われる虞があり、国会のやりとりを見ても、そこはあやふやだ。つまり大いにありうるといえるのだ。
 税理士とすれば、まともなアドバイスもできないことになる。
 その結果、経済活動が委縮し、ひいては日本経済が停滞することになる。
 基本的人権を侵害するにとどまらず、経済を停滞させる共謀罪。
 廃案しかない。

 共謀罪の怖さがよくわかる自由法曹団が配っているリーフレットを許可を得てまるまる掲載する。
 ぜひ目を通し、反対の声をあげていきましょう。
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