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  確定申告最終盤で送信できず

 いまや社会はネット社会となった。
 税務でのそれはe-Taxである。そのe-Taxが、確定申告最終版の3月14日から15日にかけて通信障害で動かなくなった。その後、国税庁は大きな負荷がかかったことによる障害だと発表し、申告期限もコロナ災害による申告期限の延長と同様の措置をとると発表した。
 国税庁はe-Taxを推進するために莫大なお金と人的資源を投入してきた。いうまでもなく、みんな税金である。
 課税庁にすれば、データで申告やそれに関連する情報を提供してもらうなら、管理や調査のための分析・照合などが格段に効率化できるので、ある意味、適正課税の大きな武器になるからだ。
 ところが、確定申告の送信が集中するぐらいで障害が起きてしまう。じつは過去にも同じようなことがあった。莫大な税金を投入しながら、こんな程度のシステムなのかと皮肉りたくなる。

  おかげで会計事務所は大変なさなかに

 そんなことの舌の根も乾かず、申告期限延長の最中である3月24日、ある税務署の副署長から直々に、相続税の申告もぜひe-Taxでやってほしいと当事務所に電話がかかってきた。
 思わず、いまその要請をする時期かとここでも皮肉りたくなった。
 確定申告のようにその影響が多大であれば、申告期限の延長などの措置を課税庁はすぐ手当するようだが、相続税は単発でその申告期限は区々である。申告期限ぎりぎりにe-Taxで相続税の申告を送信したはいいが、障害で送れなかったとしたら、いったいどのようなことになるのであろうか。相続税は税額が多額になるものが多いため、税理士は慎重のうえにも慎重に申告書を作成し提出するのだが、それが送信できず期限後申告扱いされたとなってはたまらない。

  ネットの障害は避けられない
    法的整備を行え

 そもそも、送信障害が当局に原因があるのか納税者側にあるのか、その検証も容易ではない。そのようなとき、課税庁がいかなる救済措置をとるのか、法的な整備もなく、何の保証もない。
 課税庁の法的裏付けのない行政上の手当てをお願いするだけというのであれば、何のことはない、社会的な基盤は江戸時代とかわらないではないか。
 早急に、システム障害や通信障害に対する法的整備を図るべきである。
 それにしても、みずほのシステム障害、地方銀行の障害、電気需要切迫による停電のギリギリ回避などに接すると、いま私たちの生業や暮らしが1本の線の繋がりに依存することが多くなり、それが切断されれば大変なことになるということが想像できる。
 じつは、我が家の暖房も1本の線の腐食で暖房が聞かなくなり、急に冷え込んだ日にまさに身も心も冷え込んだところであった。電話一本で駆け付け、修復してくれて再び暖をとれたが、修復するための社会的基盤があって我々の生活が成り立つと心にしみた。

  ネットの障害
   権力者による障害
    技術力や社会的英知で修復することの大事さ

 人間の知恵が多くの恩恵をもたらし、われわれはそれを有難く使ってそれなりに快適な生活を送っているが、1本の線の切断や障害でその根底が脅かされるという爆弾も抱えていることを忘れてはならないようだ。
 ウクライナの報道に接すると、機械やシステムの単なる障害ではなしに人間による破壊が行われることも忘れてはならない。
 馬鹿な権力者を生み出さないこと。機械やシステムを修復するのと同じように、馬鹿な権力者を修復する社会的な基盤を人間の英知でしっかり築き、維持することがなりよりも大事だ。