新自由主義がもたらしているもの
1973年を新自由主義への転換年とする見解に異議を挟む者はいないであろう。
そこから今年2024年は51年になる。
新自由主義の根幹をなすのは、資本主義の屋台骨なる賃金労働者・賃金労働者階級の雇用に関する規制解除である。規制解除の抵抗部隊となる労働組合を徹底的につぶしにかかり、資本家階級は労働組合つぶしに成功する。
こうして雇用規制を瓦解させ、資本家階級は不安定でより低賃金の賃金労働者群を作り出し、搾取率を高めて資金を膨大に溜め込むことに成功した。
安定雇用者群も不安性低賃金労働者群の出現に引きずられて、カッコつきだが「中産階級」から転落を余儀なくされる。こうして、資本家階級の蓄積度は一層の過激さを増す。
格差社会は必然化する。
プレカリアート って?
プレカリアートなる造語も生まれている。
英語で「不安定な」を表すprecaiousプレカリアスと、ドイツ語の「賃金労働者階級」を表すproletariatプロレタリアートを掛け合わせた造語で、非正規雇用者などの「不安定賃金労働者階級」を表す。
なお、余談だが、プロレタリアートは、proles(子供)をtarius(作る者)からきており、これは子どもしか財産のないものという底辺階級を表している。
はて、そうすると今は、子供すら持てないのだから、プロレタリアートとすらも言えない階級ということになる。マルクスなら、ノンプロレタリクラスとしたかもしれない。
金融自由化から金融化資本主義へ
新自由主義に話を戻すと、高蓄積がすすむ先に資本家階級が求める強欲は、金融自由化である。
ため込んだ資金の運用において何をやっても最後に勝てばいいとするのが、新自由主義の二つ目の根幹である。
実体経済を伴わない金融自由化はバブル景気を引き起こす。裏付けのない資産価値暴騰の行き着く先は、最後にババを引いて処分できないものが多額の負債を抱えて退場することになる。この負債は処理できないほどの巨額となるため、バブルは崩壊する。
バブルの繰り返し
新自由主義から転換しない限り、格差社会が維持され、搾取が高水準で維持されるため、カネ余りとバブル経済は繰り返される。バブル崩壊の深刻さも大きくなり、株価の上昇など見かけの景気は良さそうに見えても、実体経済は消費不況の悪循環から抜け出せずに長期停滞で推移することになる。
転換への動き
新自由主義がとんでもない人類上の弊害をもたらしてきたということに気づきはじめたアメリカ民主党政権は、ニュー・ニューディールなる政策を打ち出し始めている。
ニューディールとは、「新規まき直し」という意味である。1930年代の戦前にルーズベルト米大統領が取った政策を指す。いま、民主党政権が言うニュー・ニューディールとは「新・新規まき直し」政策という意味になる。
そこでは、労働組合の再生と役割発揮が明確に意識されている。
また、金融自由化を規制することも重要な課題として模索されている。
正規雇用と賃上げ、賃金労働者に対する社会保障充実による安定化が、資本主義経済を支えて成長させる根幹だとする政策である。
新自由主義を克服する道は、日本においても同じだ。
新自由主義と決別し、労働組合を再生させ、安定雇用と高賃金を義務化し、医療年金充実、教育費の無償化などの社会保障を充実させることだ。
政策を切り替えれば、人口減少にも歯止めがかかり、日本は長期停滞から抜け出せる。
はっきり言おう。自民党と連合を退場させない限り、日本では新自由主義から脱却できない。
まともな判断ができて政策を実行できる政権や労働組合を作るのは、国民・労働者の側にある。
なにをなすべきか、よく考えて行動しようではないか。
そうした真の改革を求める国民を権力で押さえようと、ナチス張りの緊急事態条項など、彼らは憲法改悪も日程にのせている。
危険な冬の到来を避けるためにも、考え行動しよう。