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   不平等というパンデミックへの取り組み ・・・

 国連のグレテス事務総長は、「不平等というパンデミックへの取り組み、新時代のための新しい社会契約」と題してニューヨークで演説した。

 「新型コロナウィルスの世界的流行(パンデミック)は、私たちの世界のもろさを露呈させた。不十分な医療制度、社会的保障の欠如、構造的な不平等、環境破壊、気候危機など、私たちが数10年にわたって無視してきたリスクを表面化した」

 強度の貧困に陥る人がさらに1億人増える恐れがあると指摘、歴史的な規模の飢饉が発生する可能性についても触れた。

 「新型コロナウィルスは、私たちが構築した社会のもろい骨格に生じた亀裂を映し出すⅩ線のような存在」だと表現した。

 そして、「あらゆる場所で、誤謬や虚偽が明るみに出ている。自由市場がすべての人に医療を届けられるというウソ。 無給の育児や介護は仕事ではないという虚構。 私たちの暮らす世界に人種差別はないという妄想。 そして、私たちはすべて同じボートに乗っているという神話。 事実、私たちは同じ海の上を漂っているとしても、豪華ヨットに乗る者もいれば、流れてきた残骸にしがみついている者もいる」

 「豪華ヨット」の富裕層と「残骸にしがみついている」貧困層との格差こそ、現代社会を特徴づけている。 ・・・ ところが、「すべて同じボートに乗っている」という考え方は、富裕層と貧困層に格差や対立・矛盾は存在しない、という見方につながる。 このような虚構や妄想、神話がはびこる世界は、現実から人々の目をそらせたいと思っている大企業や富裕層たちにとって、都合のいい場所なのだ。

 「世界で最も豊かな26人は、世界人口の半数に等しい資産を保有している」 これが私たち生きている世界の紛れもない現実です。 ・・・ と

   アメリカ億万長者の上位25人 所得税ほとんど払わず

 コロナ禍で世界の人々が苦しむ中、この1年間で富豪たちの資産が急拡大した。

 アメリカ誌「フォーブス」が4月に発表した2021年版・世界長者番付よると、総資産額が10億ドル(1100億円)を超える富豪の数は前年比660人増の2755人と過去最高を更新した。富豪の合計資産は2020年8兆ドルから13.1兆ドル(164%増)に膨張した。

 非営利企業のアメリカ調査機関「プロパブリカ」は、インターネット販売大手のアマゾン創業者のベゾス氏、電気自動車ステラのマスク最高経営責任者、投資家のバフェット氏ら、アメリカの上位25人の億万長者が、巨額の富を築く一方、税逃れで所得税をほとんど払っていないと報じた。(トランプ大統領も?)

 フォーブス誌は、億万長者25人は2014年~2018年に5年間で資産価値を4010億ドル(44兆円) ― <令和3年度日本の国家予算中、租税収入は57兆円に匹敵する> ― 増やしたが、プロパブリカによると、その間、25人が支払った所得税は136億ドル(1兆5千億円)で所得の3.5%に過ぎない。

 <アメリカの最富裕層の所得税率は37%である>

 バフェット氏の納税率は0.1% ベゾス氏は0.98%である。

 この不公正税制は日本でもしばしば指摘されている。

 所得税以外に富裕税の導入も国際的に検討しなければならない。<抜け道のない税制で>

 国際通貨基金(IMF)のゲオルギエワ専務理事は指摘している。

 『行き過ぎた格差は、成長をさまたげ、国の基盤を空洞化させる』

   低金利も格差拡大

 日本の普通預金金利は0.001%という歴史的に例のない超低金利。 100万円を銀行に預金しても年間で受け取る利子は10円だ。

 それは、日本銀行が政策金利を操作し、マイナス金利水準まで引き下げたためだ。

 超低金利政策は、多くの国民の利子所得を削減(392兆円)し、家計から銀行への巨額の所得移転をもたらした。

 一方、超低金利政策は、貸出金利も引下げ、企業が調達する借入金利子負担は大幅に軽減(571兆円)された。

 政府は国債利払い費の引き下げを実現した。

 超低金利政策は、株式などの金融資産価格を上昇させるので、金融資産を大量に保有する企業や富裕層などの資産価値増大に貢献した。

 超低金利政策は、多くの国民の利子所得を奪う一方、企業の金利負担を軽減し、国債や株式を保有する企業や富裕層の資産を増大させる。

 超低金利政策は、異次元の金融緩和政策で円安を誘導し、大企業や富裕層の利益を増大させる一方、輸入物価高を招き、国民生活に困難をもたらし、二重の格差拡大をもたらしている