認知症の人の金融資産(預貯金)が凍結されてしまい、家族と金融機関がトラブルになるケースが多発している。
介護費などに充てるお金がなく、親族が借金(金融機関)に追い込まれていることも多発している。
金融庁が業界に改善を求めているが、対応はなかなか進まない。
事務所もこのような相談が増えている。<一例>
・ 「お母さんが認知症になったが、金融機関は知らないと思う。ただ、お母さんはカードを持っ
ていないのでATMではおろせない。 何度もおろせないので100万円単位で4~5回おろせ
ないか? 友人に聞くと“身分を証明するもの”“本人の意思が確認できれば・・・”と言われ
たとのこと。どうすればよいか?・・・」
「死ぬまで待たなければいけないのか? 主人は会社員で、私はパートで働いているが、住宅
ローンと子供の学費(高校生と大学生)でいっぱい.いっぱいなのです・・・」
事務所でも対応するが、相談者の事情はそれぞれ異なり、一様にはいかない。「成年後見人」を立てることを進めるが、相談者はしり込みするケースが多い。
金融機関との交渉で、事情を分かってもらい引出が可能となっても、一旦親族が支払、その領収書を金融機関に提示し、その金額を限度として支払いを可能としたケースもあるが、あくまでも介護医療機関の支払金額だけであった。親孝行の支払は認められなかった。
民法では意思能力ない状態での取引は「無効」とされ、金融機関は、顧客が認知症と知れば、口座を凍結して取引を停止することが多い。
金融機関の担当者は言う。「親が亡くなられたら、相続であなたの財産になりますよ」・・・
親が貯めた預貯金を、親のため(介護費用)に使いたいとお願いしているのに、何という冷たい回答なのか? 親の貯蓄を最後の親孝行のために使いたいというのに・・・ 金融機関は単に預かっているだけではないか? と思うのは当然である。
預金・親族の引出し可能に ― 保険・証券は未だ
認知症の人は2025年には700万人にのぼると推定される。
2030年には金融資産の1割、215兆円を持つとの試算される。
金融機関も対応策として「成年後見人制度」を紹介するが、費用などがネックで利用は低調だ。
特定の親族にお金の管理を任せる「家族信託」もあるが、仕組が煩雑で利用し難い。
金融庁は金融業界に対応指針をつくるよう要請。 全銀協は今年2月、預金については、医療費や生活費など本人の利益に沿う支払は親族の引出しを認める初の指針を策定したが・・・実態は、本ページで記述したように「先に親族が支払、領収書を金融機関に提示、金融機関は医療費と認められる金額のみ支払に応じる・・・」との対応に終始している。
三菱UFJ銀行系列は、事前に親族らを代理人に指定しておくサービスを初めてが、三菱UFJ銀行系列のみのサービスであり他の銀行は対応していない。
今の社会、近所にも認知症の方は数多く見受けられる。
事前とはいえ、親族を代理人とし、預貯金を引出せる法制度を早急に制度化すべきである。
家族信託 ― 何もしないことは リスク
家族信託とは、『財産管理の一手法』です。
資産を持つ方が、特定の目的(自分の老後の生活・介護等に必要な資金の管理及び給付等)に従って、その保有不動産・預貯金等の資産を信頼できる家族に託し、その<管理・処分を任せる>仕組みである。
家族・親族に管理を託すもので、高額な報酬は発生せず、気楽に利用できる仕組みで、成年後見人に代わる柔軟な財産管理ができる。
元気なうちから資産の管理・処分を家族に託すことで、元気なうちは本人の指示に基づく財産管理を、本人が判断能力を喪失した後は、本人の意思に沿った財産管理をスムーズに実行できます。
認知症対策としての財産管理は、成年後見人制度や遺言制度がすでにあるが、高齢化社会の進展にともない、本人が認知症となった場合や、万が一のことがあった場合に財産の管理をどのように行うかについて不安をもつ方が多い時代、注目さる方法として家族信託がある。
自分で自分の財産管理ができなくなった時に備え、家族に自分の財産管理や処分をできる権限を与えておく方法 ― 一考の価値がある。