実体経済と乖離した株高
菅首相は3月17日、衆議院予算委員会で、コロナ禍の中で日経平均株価が1990年8月以来の3万円台を回復したことについて、「株高の恩恵を受けているのは、幅広い国民の皆さんではないか」と信じられないことを述べた。
首相は「株高によって、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の運用益が出ている」と強調。「3万円を超えた株式についていろんな意見があるが、慎重さも考えながら、しっかりと経済運営を行っていきたい」とも述べたが、大方の意見は真逆で、バブル株価、歪んだ株価、日銀介入株価、実態と乖離した株価との評価が一般的だ。
菅首相得意の、 “他の意見は聞かない” “自分の意見が正論だ” とする唯我独尊である。
コロナ禍で苦しんでいる国民への支援は十分に届いていないなか、年金受給額の切り捨て、高齢者医療費の2倍引上げ、介護保険料の引上げなどを次々と強行している菅内閣。 国民への恩恵など菅内閣では何一つない !
実質成長率 マイナス 4.8%
2020/1~12月を通じた年間の実質成長率はマイナス4.8%で、リーマンショック後の2009年(マイナス5.7%)以来、11年ぶりの大きな落ち込みだ。
個人消費にいたってはマイナス5.9%と統計比較可能な史上最大の落ち込みだ。
実体経済がコロナ禍で低迷する中、株価ばかりが急上昇するという、異常な状況だ。
実体経済と乖離した株高の原因は二つあると言われる。
一つは、世界各国の中央銀行がコロナ対策として大規模な金融対策を実施。
中央銀行が市場に供給したマネーが大企業や富裕層の余剰資金となり、株式市場に流れ込んで株価を引き上げた。
一つは、日銀マネーの株式市場への直接投入だ。
日銀は上場株式投資信託(ETF)を7.1兆円も購入、これによって株価を引き上げた。
中央銀行が株価に直接介入している国はなく、日本だけの異常な政策だ。
この異常な株高で恩恵を受けたのは、ごく一部の大株主だけだ。
米誌フォーブスが毎日集計しているビリオネア(10億ドル以上の資産を保有する大富豪)一覧表によれば、日本のビリオネア(現時42人)の資産が、11ヶ月の間に12兆円から24兆円に倍増している
再度、菅首相に言いたい !
この異常な日本の状況での株高。 「この恩恵を受けるのは国民」と言えるのか ?
バブルは、いずれ跳ねる。 そのツケは国民に跳ね返る。 あなたは、その責任をとれるのか?
ゆがみの蓄積 / 反転 ・・・ 混乱と損失の連鎖
日本の経済は2018年秋から景気後退に入り、株価は伸び悩んでいた。
その水準を大きく超える最近の上昇は、どこまで根拠があるだろうか
市場に上下の変動があるのは、それ自体健全だが、持続可能でない投資が過度に積み上がれば、急速に反転した場合に混乱や損失の連鎖をまねく。
経済の実情から離れて金融資産の高騰が続けば経済格差の拡大をまねく。
市場のゆがみが蓄積されると そのゆがみがもたらす不利益が大きくなることを注意しなければならない。
そのツケは、国民に舞い下ってくる。