リーマン・ショックから10年
不動産バブルが崩壊し、融資が焦げ付き、危機を見誤り、対応が後手に回り、そして大銀行が破綻 ・・・ 90年代に金融危機を経験した日本ではリーマン・ショックは再来の光景であった。
2008年9月15日、アメリカの大手融資銀行リーマン・ブラザーズが経営破たん、世界的な金融・経済危機の引き金を起こしてから10年がたつ。
100年に一度といわれた世界的な金融危機、各国は大規模な金融緩和などを通じ何とか危機を鎮めた。
各国は大規模な景気対策などで、アメリカを中心に何とか景気は良くなった。 しかし、世界はリーマン前の成長力を回復できていない。
ここから何を学び、どう生かせばよいのか、今また問われている。
各国は景気対策で借金をしたり、大規模な金融緩和でお金をだぶつかせたり、 ・・・ だが、完全に正常に戻ったとは言えない。 ヨーロッパでは国の借金が多かったギリシャの財政が破綻した。
日本の借金はいま1000兆円を超え世界でもと突出している。
雇用の劣化と格差の拡大
リーマン・ショックで各国の雇用は歴史的な落ち込みとなった。アメリカの雇用者数は第二次世界大戦後最悪の減少となった。青年失業率は19%を超えた。
ユーロ圏の失業率は10%を突破、日本の失業率も5%を超えた。
その後、各国の失業率は数字の上では改善に向かったものの、さまざまな形で雇用は劣化していった。 職を持たず、職探しもしていない “消えた労働者” が増大した。 労働条件が劣悪な職が増え、多くの人が労働市場から消え、リーマン・ショック以前の状態に戻っていない。
日本でもリーマン・ショック以降、非正規雇用が増え、雇用者全体に占める比率は37%、女性にいたっては55%を超えている。 実質賃金は1996年をピークに下がり続けている。 低賃金の職には求職者が集まらず、有効求人倍率を押し上げている。
安倍首相が自慢する有効求人倍率の上昇は景気の回復、雇用の改善ではなく大企業本位の経済成長と雇用の劣化である。
再び バブル・マネー
対極的なのが株価、東京証券市場も株価はリーマン・ショック後の落ち込みから3倍の上昇だ。
中央銀行が大規模な金融緩和を実施し、巨額のマネーを金融市場に供給したことが株価をつり上げ、バブル状態を再現させている。
アメリカの中央銀行、連邦準備制度理事会(FRB)は量的緩和を終了し、「ゼロ金利政策」を解除した。 欧州中央銀行(ECB)も量的緩和の打ち切りを決定した。 大規模な量的緩和を続けているのは日本銀行だけだ。
実体経済でも日本の国内総生産(GDP)の伸びでは、アメリカ・ユーロ圏を下回っている。 株価上昇に踊るのは大企業と富裕層だけ、 国民との格差は広がる一方だ。
来年10月の消費税増税は格差と貧困をさらに広げることになる。
増え続ける債務 危機の再来も
危機の再来はないのか?
長引く低金利と大規模金融緩和は次のバブルの温床となりかねない。
格差拡大を放置してきたアメリカでは、社会の分断が生んだトランプ政権が自国(アメリカン)ファースト、保護主義に突き進み、欧州でも自国ファースト(右傾的政治状況)が政治的不安定を増している。
危急の際の国際協調が出来ず、自国ファーストの風潮がこのまま続けば、世界経済、ひいては私たちの生活にも重大な影響を及ぼしかねない。
仮想通貨への投機や一部マンションローンなどへの融資が持て囃され、 1000兆円以上の財政赤字を抱え、 通貨安も懸念され、マクロ経済政策の余力も乏しい日本にとってはリーマン・ショック以上の惨禍を被る恐れがある。
危機は偶然には起きない! 危機前の政策に問題がある。
アベノミクス、安倍自公政権に私たちの生活を任せておけるのか?