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  脱デフレ ・・・ 物価上向き ?
    
賃金は 以前大幅デフレ !

 日本銀行は、2011年度の物価上昇や経済成長率の見通しを上方修正する方向である。
 今春以降、景気の持ち直しがはっきりしてきたのでというのが理由である。
 中小企業にとっては未だ景気の見通しははっきりせず、下請単価の切り下げや強要が続いており、経営は依然として厳しく、倒産も相次いでいる。
 金融市場への資金供給を増やす「追加緩和」が見送られる公算が大きく、今でも資金繰りに苦しい中小企業にとっては、景気の回復を実感することなく厳しさのみが続くことになる可能性が高い。

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 日銀は、半年に一度の「経済・物価情勢の展望」をまとめる。そのなかで、「デフレ克服へ向け、幾条かの光が見え始めている」と、実質国内総生産(GDP)の成長率や消費者物価指数の上昇率の見通しを示す。物価上昇率の見通しを引き上げるのはほぼ確実で、11年度は0、2%の下落から0%まで引き上げ、あるいはプラスに転換するとの見通しだ。10年度の経済成長率も1、3%と見通しを上向かせる方向だ。
 日本の経済の見通しは数値的にそのような方向が見られるかもしれないが、中小企業の“実感経済”はまだまだそのような方向を見通せる段階には至っていない。

   世界経済成長率は4、2%に上方修正 ・・・ 10年、IMF見通し

 IMFは、「経済活動の回復ペースが多くの先進国では低調な一方、大半の新興国・途上国では堅調だ」「世界経済は当初予測以上に回復している」と2010年の世界全体の経済成長率を1月時点の予測よりも0、3%高い前年比4、2%増に上方修正した。
 デフレ経済を克服するのは生活・家計経済の回復にかかっているといえよう。

   消費者物価指数とデフレ

 消費者物価指数は物価の変動を表す代表的な統計である。全国の世帯が購入するモノやサービス585品目の価格を調べ、2005年を基準(100)として指数を算出する。価格の変動が大きい生鮮食料品を除く総合指数が重視される。
 デフレはインフレの反対語で、物価が下がり続ける状態をいう。国際通貨基金は「少なくとも2年間継続的に物価が下がる状態」をデフレとしている。

   賃金は大幅デフレ ・・・ 第一生命経済研が分析

 全労働者の賃金を時給に換算すると2009年の平均時給は前年より35円少ない2228円と14年(1995年)前まで逆戻りした低水準であることが明らかになった。不況の中で大手企業は賃金水準を引き下げ、残業時間を減少させたことが大きな要因とされているが、時間当たりの賃金を低く抑える「賃金デフレ」が加速されていることの現れである。
 労働者全体の平均時給は、直近ピークが2001年で2328円、8年間で100円下がったことになる。時給減少を月給に換算(174時間=残業なし・週休2日)すると、この8年間で月17400円の給料減に相当する。
 大手企業を中心に非正規社員が真っ先に「雇い止め」になったのに対し、この賃金抑制・賞与カットの圧力が正規社員にまで向かったと見られる。
 第一生命経済研究所は、「賃金体系が元に戻るのは期待しにくい。賃金デフレからの脱却は当面難しい」と指摘する。
 賃金デフレを脱却しない限り、経済デフレを脱却することは難しいであろう。