富裕層増税が焦点
2000年代に始まった所得税などの大型減税、いわゆる「ブッシュ減税」が2012年末に期限切れとなる。
2011年にアメリカの債務上限が問題となり、2013年1月から強制的に予算が削減される。(国防費を中心に10年間で最大1兆2000億ドル(≒97兆2000億円)
2013年から、この減税切れ「実質増税」と「強制的歳出削減」が同時に起こり、崖から落下するような急激な財政危機「財政の崖」が起こる可能性があることをいう。
オバマ大統領の前に立ちはだかるのは日本と同じ「ねじれ議会」だ。
「財政の崖」といわれる大型減税の失効と強制的な歳出削減を防ぐことができるかが焦点となる。
富裕層増税(世帯年収約2000万円以上への減税打ち切り=実質増税)ができるか否かが壁となる。
日本の政治も同じ ? ・・・ 「景気回復ができないのは民主党政権のせいだ」「景気低迷、失われた20年は前の自・公政権の責任だ」と景気回復の遅れを批判するだけで、国民本位の経済政策や理念を置き去りにしている。
所得税・法人税減税で大穴
2012年度の日本の「経済白書」は、国の基礎的財政収支が悪化した背景について、「大型減税政策による税収の減少」を理由の1つにあげている。
白書は2009年度減収額について、1980年比所得税が約11.7兆円、法人税が約3.5兆円と15兆円を超えると試算。大金持ち・大企業向けに減税したことで日本の税収を空洞化させたと事実上認めている。
白書は所得税収が大幅に減少した要因の1つに、1994年秋の税制改革による累進構造の緩和を上げ(最高税率を大幅に引き下げ・・・いわゆる大金持ちベンツ1台減税)、高額所得者が恩恵を受け過ぎたとしている。
法人税収入が減少した要因のとして、景気低迷に加え、法人税率引き下げを指摘、あわせて大企業優遇の制度税制の実施(大企業のみが恩恵を受けた)を上げている。
日本の経済・財政の立ち直りは、白書も認めている“悪化の要因”(金持ち優遇の税制と大企業優遇の税制)を改めることから始まると言いたい。応能負担の税制に回帰することだ。
「緊縮より成長」 ・・・ フランス・オランド政権
「我々は行動していく」とフランスのオランド政権は、最低賃金の引き上げや前サルコジ政権が決めた付加価値税(日本の消費税に相当)の増税撤回を実現。身を切る政策として就任早々、閣僚の報酬を30%削減した。また、教育分野で65000人の雇用を生み出すため、来年以降国防省や財政省などの大幅な人員削減方針も決めた。
しかし、フランス国民には生活が良くなっているとの実感はまだ乏しく、失業率も高止まりしている。
オランド政権は「緊縮より成長」を掲げ、緊縮財政一辺倒から財政には配慮しつつ、一定の歳出増を容認し、成長による税収増を重視している。
財政規律と成長戦略の苦慮はあるが、国民生活が安定し、国民の信頼を得る政策が重要だ。
GDP3期ぶり減 ― 消費・外需とも総崩れ
内閣府が先月発表した7~9月期の国内総生産(GDP、季節調整済み)速報値は、物価変動の影響を除いた実質で前月比0.9%減、年率換算で3.5%減となった。
景気が後退局面に入った可能性が高いとの見方を裏付ける結果だ。
GDPの6割近くを占める個人消費は前月比0.5%減と2期連続のマイナス。個人収入が長期にわたり低迷・減少していることが背景にある。
電気・情報産業の大企業を中心に大リストラを強行していることも、消費を低迷させ、地域経済を冷え込ませるなどの日本経済の悪化に拍車をかけている。
大企業の横暴なリストラ、非正規社員化、低賃金と下請けイジメ(単価の引き下げ)が日本経済も財政収入も悪化させている原因である。
大企業の内部留保(利益の貯め込み)は260兆円にも上る。
「内需拡大」でデフレ不況の克服を
消費税増税でなく「税の応能負担」を
どこの国でも内需拡大政策を行うのに、日本だけが逆に内需を壊す政治を行ってきたことが長期デフレ不況(失われた20年)の最大の元凶である。
内需をさらに縮小させる消費税増税を止め、経済白書でも指摘していた金持ち・大企業優遇税制を能力に応じた税負担に戻すことこそ緊急に必要なことである。
税と社会保障の一体改革と称し、消費税増税を社会保障費の財源とするといっているが、国民へは消費税増税と社会保障費の(受益者)負担増・給付減ばかりが圧し掛かっている。
国民の負担増と給付減で浮いた財源を「日本強靭化計画」(自民)、「防災・減災ニューディール計画」(公明)と大型公共事業バラマキに使おうなど言語道断である。