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   消費税増税は、大企業減税の穴埋め ?

 消費税10%への増税に言及した菅直人首相、自民党案10%を参考に議論するという。
 参議院選挙の争点に急浮上したが、「このままではギリシャのように日本の財政は破綻してしまう」消費税増税を「社会保障に回せ」「年金の財源に使うべきだ」「介護に使えば雇用も増える」「まずムダを削ってからだ」・・・とほとんどの政党は理由はちがえ消費税増税容認で一致している。
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  一方、この消費税増税論政党は、「企業の国際競争力を強化しろ」「企業の海外流出を防げ」「日本の法人税は諸外国に比し高い」・・・と法人税減税でも一致している。
 今年4月で消費税導入から21年目を迎えた。
 “社会保障充実の為”“少子高齢化社会に対応するため”との美名のもと導入・増税されてきた。しかしこの間、社会保障費は毎年2200億円削減され続けてきた。
 介護・医療・年金といった社会保障国民負担は、自己責任・受益者負担と改悪が連続されてきた。
 税制面でも年寄りはお金を溜め込んで消費しないと老年者控除を廃止し、定率減税を廃止した。
 いったい消費税税収分はどこへ消えたのか?
 消費税導入以来の消費税収入は213兆円といわれる。同時期の法人税減収は183兆円に達する。
社会保障にと期待して導入・増税してきた消費税収入は、法人税減税に回されたというのが実態で
ある。社会保障財源は、自己責任・受益者負担ということで国民に負担を押し付けてきた、“税”
と“負担”の二重払いであった。

  法人税減税(実行税率40%→25%) ・・・  9兆円
      消費税増税(税率5%→10%) ・・・ 12兆円

 消費税の税率を1%引き上げると税収は2、5兆円増える。現行の5%から10%に引き上げれば年12兆円超の増税になる計算だ。一方、法人税の税率を5%引き下げた場合現行(デフレ不況下)でも1兆円の減税となる。景気回復すれば15%の税率引き下げ効果は9兆円とも言われる。
 法人税率の国際的水準は25%~30%であり、日本の法人税率(実効税率)は高すぎる。だから国際競争力に負ける。企業の海外流出が防げないというが、果たしてそうだろうか?
 日本の三大銀行(メガバンク)グループ傘下の6銀行は、不良債権処理の名のもと国民の税金を何十兆円も入れてもらいながら10年以上法人税をまったく払っていない。主な製造業大企業の実際法人税負担率は、ソニー(12、9%)・パナソニック(16、6%)・京セラ(18、9%)・本田技研工業(24、5%)・トヨタ自動車(30、1%)と国際的水準を大きく下回っている。
 大企業の租税負担を言うならば、従業員の社会保険料企業負担も含め議論すべきである。大企業の法人税と社会保険料企業負担合計はフランスの70%しか負担していないのである。
 この10年大企業(資本金10億円以上)は経常利益を倍化させ、229兆円もの内部留保(溜め込み金)を抱えています。この1年間でも3月末決算を見ると内部留保額上位20社(銀行を除く)だけでも1兆5296億円の積み増しをしています。
ムダを削るとは、国会議員自らが身を削ることだと国会議員定数80人の削減も言い出しています。国会議員80人削減しても56億円にしか達しない。無条件で交付し、使い道の明細も明らかにならない政党助成金は320億円である。なぜ政党助成金の廃止を政治家自ら言い出さないのか? である。

  消費税増税は ・・・ くらしの破壊

 消費税の格差は一層著しい。輸出偏重の日本の大企業では、消費税を支払っている企業はほとんどなく、逆に輸出免税の特権を活かし消費税が何百億円と還付されている。
 一方、中小企業は消費税を転化できず会社利益は赤字でありながら消費税支払に自腹を切っているのが現状である。
 庶民は、増税以外のなにものでもなく、デフレ不況下で苦しむ生活はますます破壊されることは必至である。
 菅直人首相は、「強い経済、強い財政、強い社会保障」と消費税増税の関係を強調している。
 法人税減税で強い経済(企業の国際競争力強化)、消費税増税で強い財政(財政赤字の解消)、を唱えているが、何を持って強い社会保障を唱えるのかはっきりしない。
 この21年間を見る限り、またしても庶民増税と自己負担の強化につながらないか心配である。
 雇用の拡大、賃金の改善、生活の向上を中心に経済成長を損なわず、社会保障の強化もできるという有機的な戦略こそ、国民生活の安心・安全につながるのではないだろうか