
税務職員の不祥事が相次いで報道されている。
不祥事というより、犯罪である。4件ほど紹介する。
報道年月日 2026年8月7日
竜ケ崎税務署の松尾康成職員(25)は、税務調査先の資産家から現金をだまし取り、それを元手にした競艇で儲けた3億3400万円の所得を申告せず、所得税1億3500万円を脱税したとされ、懲戒免職となった。
報道年月日 2026年6月19日
大阪国税局は2026年6月19日、警察官を名乗る第三者に納税者情報259件を送信して漏えいしたとして、国税実査官だった30代男性職員を停職6か月の懲戒処分とし、国税庁が守秘義務違反の疑いで書類送検したと発表した。
「259件漏洩」という数字だが、KSKの画面を何回となくスマホで撮影し、LINEで第三者に送っていた。税務調査中の納税者リストが、職員のスマホ経由で外部に出た、という。
報道年月日 2026年6月10日
神奈川県下の税務署に勤務する30代の男性職員が、令和7年10月8日、飲食店で店長に暴行を加え全治2カ月のけがをさせたほか、同店を経営する法人の売上など、税務申告の内容を店内で話し情報を漏えいした。この調査官、翌日に無断欠勤して同店に謝罪に出向いたが、そこでも店長らに再び法人の税務情報を漏えいした。東京国税局は、停職3か月の処分をしたと発表。
報道年月日 2026年5月27日
埼玉県下の税務署の女性職員が、許可なく東京のデリバリーヘルスで半年働き、パパ活と合わせて230万円を得ていたことが内部情報で発覚。国家公務員の兼業禁止違反として減給処分を受けた。
税務職員の犯罪行為はまたまだある。部内のパワハラ事件で裁判になっているものも何件かある。次々と立て続けに処分の発表が続いている。税務当局の組織運営に問題はないのだろうか。
国民が注視すべき「守秘義務違反事件」
国民が注視しなければならないのは、大阪国税局実査官の情報漏えいと神奈川県下30代男性職員の情報漏えい事件である。
国家公務員には国家公務員法で守秘義務が規定され、違反者は刑事罰が科せられる。
秘密の定義は「実質的に秘密として保護する価値がある事柄」とされており、外部に漏れた場合、組織や個人の利益を害する可能性がある情報は守秘義務対象となる。これを漏らした場合は1年以下の拘禁または50万円以下の罰金が科せられる。
税務職員は国家公務員だから、この守秘義務違反の対象になるが、税務職員はそれだけにとどまらない。
国税通則法第127条では、国税に関する調査や徴収で知りえた秘密を洩らした場合、2年以下の拘禁または100万円以下の罰金が刑事罰として課されることになっている。
一般の国家公務員より重い刑罰が科せられるのだ。
この場合の国税に関する調査にかかわるものは、納税者の事務所等に出向いて調査する者だけに限らず、税務署内で申告書を審理したりする職員も対象となるので、対象にならない税務職員はごく限られる。それだけの重さがあるということだ。
もう一つ知っておきたいことは、刑事訴訟法第239条2項で、公務員は職務上犯罪があると認識した場合、「告発しなければならない」と定められていることだ。
この規定は、訓示規定ではなく、法的義務として強制力を持つと解釈されており、告発義務を怠ると罪を犯したものではなく、告発しなかった公務員が懲戒処分の対象になるほどのものだ。
守秘義務違反者を刑事告発
このことを確認した上でさきに取り上げた事件を見ると、大阪国税局の実査官を守秘義務違反で告発したのは当然のことといえる。神奈川の事件は守秘義務違反で書類送検したという報道がないので、恐らくしていないであろう。なんともぬるい扱いをしているようだ。
大阪局・実査官が教えてくれたこと
それにしても、大阪局実査官の行為は、本来持ちだせないはずの納税者の秘密に属する税務情報が、いとも簡単にしかも大量に持ち出せることを証明したことになる。
どうゆうことか。パソコンからUSBなどにコピーしてデータ持ち出すことはできない措置をシステム的に施しても、税務職員がパソコンで作業する限り、画面表示しなければ仕事が進まないのであるから、それをスマホで写真撮影すればほぼ無制限になんでも持ち出すことができるということを具体的に教えてくれたわけだ。
国税庁はシームレスな社会実現に力を入れるとしている。シームレスに持ち出せる職場。シームレスに持ち出せる税務情報。洒落にもならない。
職員個人のスマホを事務室内に持ち込ませない環境下で仕事をさせない限り、納税者の情報はダダ洩れの危険にさらされているのである。
ガチガチの密室とガチガチの身体検査
クチにチャック?
スパイアクション映画ばりに、窓もない密閉された事務室に、探知機をくぐり、更に身体検査と所持品検査を受け、職員がスマホを所持していないことを確認して初めて入室できる、ということにしない限り、職員による税務情報の漏洩を抑える手段はない。
しかし、現状の税務署や国税局の職場状況はまったくそうはなっていない。
もっとも、神奈川県下の税務職員のように税務情報を第三者にしゃべってしまう事態は、手の打ちようがないわけだ。
そうすると納税者とすれば、申告することすら躊躇せざるを得ないことになる。
なにしろ、申告書には、売上はいくらでどこと取引しているのかとか、どこの銀行からいくら借入しているのかとか、預金はいくらあるのかとか、代表者〇〇の報酬額はいくらかなど、会社や個人事業主の経済上の「秘密」を大量に提供しているわけで、今の税務署の態勢では、情報漏洩に対する対策はゼロ、皆無といってよい状態なのだから、とても申告する気になれないということになる。
報道では、こうした観点から問題点を指摘し、国税庁を問いただす報道の動きが見当たらない。報道機関もぬるいものだ。
国税庁幹部がやるべきこと
かなり歴史的なことといってよいが、当局幹部は大阪局の実査官を刑事告発した。
実刑が出るのか注目されるが、肝を冷やした幹部が刑事告発して職員を締める措置に出たものと推察される。神奈川県下の税務職員の取扱いにみられるように、これまではぬるい対応に終始してきたが、このままではまずいと考えたのであろう。
なにしろいまの職場環境では、個人のスマホで画面撮影すれば「秘密」は自由に持ち出せるわけで、システム的にそれを規制する措置が取られていない。幹部はおそらくそれに気が付いて、「脅し」で職員に縛りをかけようとしたと思われるが、脅しを上回る誘惑があれば、人間どうなるかわからない。
つまり、情緒的な規制は規制に値しない。さあ、どうする?
税務職員に守秘義務がとりわけ強く課せられている意味を考え、申告納税制度を維持したいのであれば、国税庁は大阪局実査官守秘義務違反事件と神奈川県下税務職員守秘義務違反事件の問題点を詳細に知らせ、いかなる対策をとって納税者の秘密を守るのかを国民に示さなければなるまい。

