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 食品公害となりそうな事態がまた起きている。
 小林製薬が製造販売しているサプリメント「紅麹コレステヘルプ」を摂取した人が、腎疾患で4人死亡し、106人が入院しているという。
 原因は腎機能の低下で、入院している人のなかには人工透析が必要な人も出ているという。
 腎機能が低下すれば、むくみ、吐き気、倦怠感が生じるとされる。要は、体に不要な毒素を排出できなくなり、死に至る。
 報道によれば、小林製薬は紅麹を自社製品だけでなく、原料として52社に卸し、それらの業者はお菓子やみそに使っているとして、多くの食品類を自主回収している。

   サプリとは「機能性表示食品」であり
    「アベ政治」の産物

 製薬は法律で規制され、許可基準もあるが、サプリは大抵のものが「機能性表示食品」として売られているものだが、事業者が安全性と機能性に関する科学的根拠などを消費者庁に届け出れば、審査なしで機能を表示できる。規制もなければ基準もないわけだ。
 「機能性」をうたうのであれば、少なくとも厚労省の所管のはずだが、消費者庁への届出だけというのであるから、政府として、行政として、国民の健康をそもそもチェックする気はなく、事業者の経済的拡大=「儲け」だけを促進しようという話になる。
 アベ政治が進めてきた「新自由主義の政治」=企業が儲ければそこから滴りが落ちて全体が豊かになる(トリクルダウン)というデタラメ政治の犠牲といっていいのではなかろうか。

 というのも、安倍政権は2012年にスタートした。
 その3年後の2015年に新設されたのが「機能性表示食品」である。
 この制度は、安倍首相の諮問機関である「規制改革会議」の2013年の答申が発端になっている。
 そこでは、手続の簡素化と健康・医療産業の経済的拡大が明確に意識された。
 そして、国民に対しては自分の健康は自分で守れ、つまり、自助でやれというのである。健康保険は使うな、金を払って買った商品で健康を守れとけしかける。そうすれば、健康・医療産業界の利益は最大化するという、新自由主義の政治の典型がみてとれる。
 なんと、健康・医療産業界から滴り落ちてきたのは、お金ではなく、毒素であった。
 「機能性表示食品」とは、まさに政治が生んだ鵺的食品だということを肝に銘ずる必要がある。
 アベ政治のなんとも罪深いことか。

  官僚よ、安全に関しては
   「積極行政」の気概を示せ

 安倍亡き後、自民党はガタガタになっているが、ともあれこの事態を受けて、厚労省は「機能性表示食品」として届出済みの6800商品すべてについて緊急点検を指示したと報道された。
 政治の機能とは別に、行政としてやるべきこと、やれるべきことはある。
 国民の安全に関することは、「積極行政」として行政が前に出ろと下山瑛二教授(行政法学者)は46年前から説いていた。厚労省がアベ政治による規制緩和に与して「消極行政」に陥ったことも、この事態を招いた大きな要因であろう。
 遅きに失したとはいえ、厚労省の指示は妥当である。
 官僚は、アベの桎梏を解き、行政としてなすべきことをやる気概を見せてほしい。