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   「安保3文書」

 昨年1216日に閣議決定された「安保3文書」を読むと、思わず蹴躓いてしまった。
 安保3文書とは次の3文書

1 国家安全保障戦略について
2 国家防衛戦略について
3 防衛力整備計画について

 ネットで全文がダウンロードできる。それぞれ30数ページの大した分量の文書ではないので、是非精読していただきたい。

 読んでいただくとすぐに気づくはずだ。まるっきり現実味のない安全保障戦略であり、防衛戦略であると。

   何が問題か

 ズバリ言おう。
 原発への攻撃に対する戦略がまったく組み立てられていないことだ。
 シロウトが考えてもわかる話だ。
 ロシアのウクライナ侵略を見てもわかるように、原発は核弾頭に匹敵する武器だといってよい。

 日本はとりわけ最悪の、敵から見れば実に最適な原発の設置状況となっている。
 偏西風のため、日本より西に位置する国にとって、日本の原発がすべてメルトダウンしても自国への影響は最少で済む。一方、効果は絶大だ。
 ロシアがウクライナの原発をメルトダウンさせれば、ロシア本国への被害も避けられないため、占拠はしても破壊はできない。状況はまったく違うのだ。
 なお、原発の場所は政府が詳細に公表している。「特定秘密」でも何でもない。

 <資源エネルギー庁「日本の原子力発電所の状況」 クリックで拡大>

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   テロ的戦争では

  ロシアの動きを見てもわかるように、テロ的戦略をとる攻撃側は、国際的非難や制裁やその後の自国の地位などお構いなしだ。戦争犯罪や人道の罪などもお構いなしだ。相手国を破壊し、屈服させることだけが目的となる。

 仮に私がテロ的独裁国家の独裁者で、日本を叩きのめそうとするのなら、ためらわず日本の原発を攻撃してメルトダウンさせる。
 日本が過去に真珠湾を奇襲攻撃したように、原発銀座で15基(「ふげん」を入れて)が設置されている若狭湾に奇襲攻撃をしかけ、若狭湾の原発をメルトダウンさせる。80キロ圏の京都・大阪・滋賀・福井・石川は云うに及ばず、偏西風によって名古屋・関東にも放射能が降り注ぎ、日本列島の中央部は人が入り込めない地域となる。
 日本国民の人口集中地帯が原爆攻撃されたのと同じ事態になるといってもよい。
 東京にある横田基地は使えまい。
 加えて、静岡の浜岡原発をメルトダウンさせれば、東海道という東西日本を結ぶ幹線経路が完全に遮断される。 

 同時に、三沢基地は東通原発、岩国基地は伊方・上関・玄海原発のメルトダウンによって使用不能。千歳基地は泊原発で。鹿屋基地は川内原発で。なんと、沖縄を除く日本の主要基地はほぼ全部が隣接する原発によって機能不全に陥る。

 となれば、沖縄に対する奇襲攻撃に集中すればよく、これらが成功すれば、日本の戦闘能力はなくなる。かつ、日本は北海道の旭川以北が人の住める地域として残るだけとなり、日本は事実上消滅する。いうまでもないが、陸上部隊を日本に侵攻させることもなく、日本国土と日本国民を消滅できるのだ。
 この時、米軍が奇襲を防御できるであろうか。保障はまったくない。福島第一原発水素爆発のとき、アメリカは自国民を80キロ圏外に避難するように素早く行動した事実は重い。

   武装では防げない

  つまり、いくら武力を増強しても、武力で日本を、日本国民を守ることはできないということだ。 また、原発を武器として使われたら、日本が消滅することは小学生でもわかる話だ。にもかかわらず、原発再稼働や増設にかじを切るというのであるから、安全保障からいえば真逆の政策をとることになる。
 安保3文書において、原発を全廃して核燃料をすべてメルトダウンしないように処理保管するというのなら、いくらか現実味のある安保戦略といえるかもしれないが、記述されていることは、災害に毛の生えた程度の取扱いである。 「防衛戦略」が聞いてあきれる。それにもかかわらず、軍事費のために大増税!

 いやはや、開いた口が塞がらないまま、2023年の新年を迎えてしまった。