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   野放しの仕入税額控除に一定の規制

 平成28年度税制改正で、消費税についてはインボイス制度への移行が成立した。政府自体が「新消費税法」と称するほどであるから、制度としては大きな改正である。
 その主要点は、野放しで認められた仕入税額控除が「適格請求書」でなければ認められなくなったことである。
 「適格請求書」とは、登録事業者(免税事業者は登録事業者になれない)が作成し買手に交付する請求書や領収書のことである。その請求書等には政府が交付した「登録番号」など、6項目がもれなく記載されていなければならない。
 これにより、野放し状態の仕入税額控除に一定程度規制がかかることになる。

   生まれたときから盛りだくさんの懐柔策
 

 ところが……
 平成元年(1989年)からスタートした消費税であるが、とにかくもかくにも消費税を創設したいとする自民党政権は、消費税の納税義務者になる事業者の反発を和らげるため、でたらめでいい加減な懐柔策を税制に盛り込んだ。
 そのため、間接税である消費税の大原則である「前段階税額控除方式」、要は事業者においては消費税を次々と事業者に先送り(転嫁)して事業者は消費税を一切負担することなく、最終的に消費者に消費税を完全負担させる仕組みであるが、それをガタガタにしたのである。
 懐柔策は、免税制度と簡易課税制度である。この制度によって、国庫に入るべき消費者が負担して支払った税金(お金)が、事業者のフトコロに収まってしまうのだから、税制としては話にならない欠陥税制といえる。

   その結果は
   国民過半数のサラリーマンをコケに

 

 ごく分かりやすくいえば、国民の過半数にあたる6,500万人のサラリーマンが支払ってきた消費税の相当額が国庫に入らず、事業者のフトコロを潤してきたのである。
 本当に、本当に、ふざけ切っている税制が消費税なのである。
 サラリーマンが暴動を起こしてもおかしくない消費税制。ところが暴動も起きず、選挙でも自公政権が安泰なのだから、サラリーマンを見くびる消費税制と事業者を儲けさせる懐柔策は温存されたままとなる。
 手厚い免税制度と簡易課税制度が存続する限り、この事態は解消しない。
 したがって、インボイス制度への移行でこの欠陥が解消されるのかという問いに対しては、「一定の歯止めとはなるが、まったく解消されない。」が答えとなる。サラリーマンはコケにされ続けられることになる。
 「前段階税額控除方式」などというのは、虚構にすぎない。

   いくらかの正常化が
   またまた逆戻りしそうな報道

 

 ところが、一定の規制がかかることに対して、すでに改正済で施行を待つだけの新消費税法について、施行前に与党税調はそれを緩める再改正の動きがあると報じられている。
 報道によれば、免税事業者から課税事業者となり登録事業者となった場合、小規模事業者は正規の計算によらず、課税売上高に対する税額の20%の消費税を納付すればよしとしようという案である。
 事例を考えてみよう。

 建設業で課税売上が税込1,000万円で課税仕入れが税込600万円だった場合、
 原則課税であれば納付消費税は909,090円-545,454円=363,600円となる----A
 簡易課税であれば納付消費税は3種で272,700円である----B

 これが、改正案だとしたら、9,090,909円×10%×20%=181,800円となる。

 Aであれば、181,800円が事業者のフトコロに収まる。
 Bであれば、90,900円が事業者のフトコロに収まる。

 もう一つ報道されているのは、現行の「3万円未満特例」(インボイス移行で廃止される特例)をまるまる復活させるか、「1万円未満特例」として金額を縮小して復活させるという改正案である。
 この特例は、この金額未満の取引であれば、請求書や領収書は交付しなくてよいし、仕入税額控除をする側は請求書等の保存がなくても仕入税額控除ができるというもの。
 そうすると、極端な話、分割販売できる物、例えば小麦粉だとすれば、一袋60キログラム税込5万円で売るものを、一袋10キログラム8,333円として販売すれば、インボイスの交付も保存も必要なしとなり、インボイス制度自体が骨抜きとなる。
 当然のことだが、インボイス制度から外れるので、免税事業者や消費者からの仕入であっても控除できることになる。

   この国の将来???
    与党税調が教えてくれるよ
     票が逃げなきゃいいと
 

 いやはや、何をかいわんや、である。
 物言わぬサラリーマン・消費者であることをいいことに、やりたい放題。
 消費税を消費者の立場で適正施行を求める視点や議論が、社会的にも国会でも、あるいは学会でもほとんど見当たらない。

 サッカーワールドカップに一喜一憂するものいいが、与党税調の税制改正大綱をよく検討し、日本の将来の姿に一喜一憂し、あるべき姿を求めることも大事なことであろう。