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 来年10月1日からインボイス制度がスタートする。
 スタートしてから対応すればいいのではないかと暢気に構えていると、事業継続にいろいろな支障が出るので、とにかく準備を怠りなくやっていただきたい。
 ポイントを改めて書き連ねたので、参照にして対策していただければと思う。

 インボイスに関する国税庁の広報をはじめ、様々な解説本やパンフレットでも、このニュースでお知らせするポイントまで言及しているものはほとんど見当たらない。
 その点このニュースは、具体的で実務に直結するる内容になっているので、面倒がらずに参照して対策を取ってもらえればと思う。

 

   インボイス制度導入
    政府の思惑(本音)

 ① 税収を上げたい
 ② 法人税と所得税はいじりたくない(むしろ法人税は下げたい)
 ③ 免除事業者(500万~800万)のうち160万業者が課税業者になり、税収増が2,480億円見込める
 ④ 記帳と書類保存が進んで税務署がチェックしやすくなる
 ⑤ 消費税のいい加減さが少し解消する
 ⑥ 簡易課税制度に手を付けるステップ

   何が変わるのか

 <現 行>

➣ 課税資産の仕入は基本的に無制限で仕入税額控除ができる
・ 消費者・免除事業者・簡易適用事業者からの仕入も100%控除
・ 前段階税額控除方式(前者から送られてきた消費税を控除するという紐付き関係のもとで消費者に負担させる方式)が有名無実化

 <導入後>

➣ 課税資産の仕入は適格請求書(インボイス)によるものだけが仕入税額控除できる(消法30)
・ 消費者・免除事業者からの仕入は控除できない(両者とも適格請求書を発行できないため)
・ 前段階税額控除方式がいくらかまともになる(課税事業者が登録事業者にならなかったり簡易課税制度のもとでは紐付き関係は機能しない)
➣ 適格請求書発行に関する義務と罰則がかぶさってくる
・ 発行事業者に交付義務。不正発行者に刑事罰

  何が問題となるのか

➣ 基本的にすべての事業者が課税事業者なのか免除事業者なのかが世間一般に知られることになる
・ 領収書や請求書の登録番号表示有無から
・ 国税庁HP公表サイトから
➣ その結果、免除事業者の取引それ自体や「対価」で軋轢が生じることになり、免除事業者は免除事業者のままでいくのか、適格請求書発行事業者になるのかの判断が求められる
・ 免除事業者にとっては、売先が消費者(C=consumer)であれ事業者(B=business)であれ、取引における自分の立ち位置(優位・劣位)と、「対価」における消費税の扱いが問題になるため、BtoC、BtoB、BtoB+Cの取引で自分の営業にどのような影響が生じるのかを検討せざるをえないことになる
➣ インボイス制度スタートの令5.10.1までに、すべての事業者に事前準備をすることが求められる
・ 免除事業者であれば免除の継続か、登録して発行事業者になるのかの判断と、取引先との交渉
・ 制度スタート時から適格請求書発行事業者となるためには適格請求書発行事業者登録を令5.3.31までに済ませる(理由があれば~内容は問わない~令5.9.30まで申請すれば、令5.10.1から適格請求書発行事業者として取り扱われる)
・ 簡易課税制度の選択判断(新規適用は申請期限等に注意)
・ 売り手として諸様式の改訂(登録者は直ちに改訂OK)
・ 買い手として諸様式の改訂(登録者は直ちに改訂OK)
・ 事業者(売手であり買手でもある)としては売上先・仕入先・経費支払先の登録状況の事前確認と対応の検討(免除事業者対策、帳簿等の記帳保存対策)
   (注)保存に関しては、令6.1.1以後の電子取引データ保存義務にも準備が求められる

  課税事業者はどうすればいいのか

➣ 現在課税事業者であれば、BtoBだけなら登録し、BtoCだけであっても発行事業者登録をすれば問題は生じない
・ 営業上の変化は少ないと思われるが、消費税を巡る事務負担は増える
・ 店舗営業なら「インボイス発行店」などの表示も検討
➣ 登録後、取引先に登録番号を通知したり、即時に適格請求書に書式を改定して取引すれば、売上先は令5.10.1以後も仕入税額控除ができる取引先として認識する
➣ 課税売上が5千万円以下(税抜)なら簡易課税選択の検討
・ 簡易の場合、仕入に関してはインボイス無関係(消費者や免除事業者からの仕入であっても、それらの請求書等の保存は不要で、みなし仕入率に応じた仕入税額控除ができるという特別扱い。ただし、所得税・法人税における帳簿書類の保存はかぶさってくる)
➣ 令5.10.1から登録事業者として営業するには、令5.3.31までに登録申請する(例外として令5.9.30まで事前申請できるが、番号交付まで2週間から1月要するので、少なくとも令5.8.31までには申請すること)
➣ 消費税の申告・納付にあたっては、課税仕入についてインボイス制度に対応しなければならないため、原価・費用の支払先および支払対価に関する精査・準備・対策を講じる(免除事業者からの仕入については3年間は80%、その後の3年間は50%が仕入税額控除できる経過措置がある)
➣ 委託販売、立替、口座振込、社員旅費精算、賃貸借契約、リース契約、適格請求書の保存が要件とされない取引など、インボイス制度の特殊な扱いについて整備する

  免除事業者はどうすればいいのか

➣ 自己の業種・業態・取引先(売買両方)との関係、これまでの消費税の扱い(対価に含めていたか否か)、それらのもとで売上総利益(粗利)、営業利益、当期純利益はどうであったのかをおさえる
➣ BtoBの場合、売先から何らかの折衝があると思われるので、協議する
➣ そのうえで、令5.10.1以後も免除事業者を継続するか、登録して適格請求書発行事業者になるのかを検討する(登録すれば課税事業者になる)
➣ 検討・協議にあたっては、取引先との関係、経過措置(免税事業者からの課税仕入れについては3年間80%、その後3年間は50%仕入税額控除ができる経過措置があることも踏まえて)を含めた消費税の扱い(免除事業者が令5.10.1以後も消費税を乗せて請求することについて法的な規定はないため、消費税を乗せたとしてもそれが直ちに「違法な適格請求書」にはならないとされている)、「対価」自体の見直し、事務負担に関する手当と費用、簡易課税を選択した場合の益税などを視野に置き、結果として自己の粗利や当期純利益が確保され営業継続が図れるのか、これらを総合してシミュレーション(推定)して結論をだす
➣ 免除事業者から課税事業者になれば、課税事業者としての立場から仕入先への対応等、前述「課税事業者はどうすればいいのか」を手当てする必要が生じる
・ 簡易課税選択判断は不可欠
・ 免除事業者の登録初年度は令5.10.1~12.31の3か月が課税期間となり、令6.3.31までに消費税の申告が必要になる
・ 消費税の納税額に見合う「現預金」を確実に手元に確保しておくこと
➣ 免除事業者を継続する場合、BtoCあるいはBtoB+Cにおいて消費者から「対価」に対する質問や苦情、適格請求書の交付要求なども想定されるため、それらの対応策も検討しておく(店舗表示など)