年末調整は、給与の支払者が給与の支払を受ける一人一人について、毎月の給与や賞与などの支払の際に源泉徴収した税額と、その年の給与の税額について、納めなければならない税額<年税額>とを比べて、過不足を清算するものをいう。
◉ 令和3年分の主な留意点
1 税務関係書類における押印義務の見直し
行政のデジタル化推進に向けて令和2年7月に閣議決定された「規制改革実施計画」において、行政手続きの押印廃止が盛り込まれ、税務署関係書類も令和3年4月1日以降、一定のものを除き押印が不要となりました。
これにより扶養控除等(異動)申告書の年末調整の際に使用する書類についても、従業員等の押印は不要となりました。
2 年末調整申告書を電磁的方法(電磁データ等)で提供する場合の税務署長の承認不要
従来は、年末調整申告書から電子データで受付・回収する場合、事前に税務署へ「源泉徴収に関する申告書に記載すべき事項の電磁的方法による提供の承認申請書」を提出し、承認を受ける必要がありました。
しかし、申請の手間や、申請から運用まで一定の期間が掛かることからタイミングが合わず電子化を見送る会社もありました。
そこで、令和3年度税制改正により令和3年4月1日以降に提出分から次の申告書に関して、事前承認が不要となりました。
・給与所得者の扶養控除等申告書
・従たる給与についての扶養控除等申告書
・給与所得者の配偶者控除等申告書
・給与所得者の基礎控除申告書
・給与所得者の保険料控除申告書
・給与所得者の住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除申告書
・所得金額調整控除申告書
・退職所得の受給に関する申告書
・公的年金等の受給者の扶養親族等申告書
なお、電子データで回収等する場合は、電磁的方法による提供を受けるために必要な措置や電磁的方法により提供するものの指名を明らかにするための必要な措置を行う必要があります。
3 e-Taxによる申請等の拡充
税務署長に対する申請等ののうちe-Taxによりその申請等に係る書面に記載すべき事項を入力して送信することができないものについて、書面による提出に代えて、スキャナにより読み取る方法により作成した電磁的記録(いわゆる「イメージデータ」)を送信することにより行うことができるようになりました。
4 新型コロナに伴う休業手当
新型コロナウィルス感染症等の影響に対応するための雇用保険法の臨時特例等に関する法律の規定に基づき、会社が休業手当を受け取っていない雇用保険法の被保険者に対して国から直接給付された新型コロナウィルス感染症対応休業支援金については、同法の規定により租税は課されないので、年末調整の対象となる給与の総額に含めて計算する必要はありません。
一方、会社が従業員を休業させ、従業員に「休業手当」を支給した場合は、前期のような非課税規定はないため、支給した際に所得税の源泉徴収を行う必要があり、年末調整の対象となる給与の総額に含めて計算する必要があります。
◉ 所得控除額一覧表<抜粋>
● 社会保険料控除額
支払った又は給与から控除された社会保険料の合計額
● 小規模企業共済等掛金控除額
(独)中小企業基盤整備機構に支払った共済掛金(旧第二種共済掛金は生命保険料控除の対象)、確定拠出年金法に規定する企年型年金加入者掛金又は個人型年金加入者掛金、地方公共団体が実施する心身障害者扶養共済掛金どの合算額
● 障害者控除額
障害者1人につき・・・・・270,000円
特別障害者1人につき・・・400,000円(同居特別障害者の場合750,000円
● 寡婦控除額
270,000円(「ひとり親」に該当せず、合計所得金額500万円以下の者は、夫の死別の場合扶養親族要件なし、夫と離婚の場合は費用親族要件あり)
● ひとり親控除額
350,000円
● 勤労学生控除額
270,000円
● 基礎控除額
最高480,000円
◎ 「住宅借入金等特別控除」は、給与所得者の場合、確定申告をした年分の翌年以降の年分につき、年末調整で適用を受けることができる。