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  なぜ日本は核兵器禁止条約に参加しないのか ?

 今年も8月6日(広島)、8月9日(長崎)の原爆投下、8月15日の終戦日をまもなく迎える。

 安倍首相は、『唯一の戦争被爆国として、“核兵器のない世界”の実現に向けた国際社会の取り組みを主導していく決意』を広島市での平和記念式典で示した。

 しかし、日本政府は核兵器禁止条約<TPNW>の批准どころか、署名すらしておらず、その姿勢は世界から批判されている。

  核兵器禁止条約<TPNW>は、将来的な核兵器の全廃に向け、核兵器を包括的に法的禁止とする初めての国際条約である。前文において被爆者の苦痛に対する憂慮とともに、国際人道法と国際人権法の原則にもとづき、核兵器の開発・生産・保有・貯蔵などを禁止して、核兵器のない世界を目指すための国際条約だ。2017年、賛成122ヵ国の圧倒的多数によって採択され、2021年発効された。

  日本が核兵器禁止条約<TPNW>に署名しない理由に政府は、「日米安保条約でアメリカの核抑止力に依存“核の傘”する立場」としているが、真の国際潮流から目を背ける態度である。

 日本世論調査会による今年の調査は「核兵器禁止条約<TPNW>に参加すべきだ」が72%に達しており、核兵器廃絶国際キャンペーン<ICAN>や被爆者団体なども日本が核兵器禁止条約<TPNW>に参加しない日本政府の姿勢を強く批判している。

   核兵器禁止条約の機運 NATO加盟国内で拡大 !

  北大西洋条約機構<NATO>首脳会議は共同声明(6/14)で、ロシアの核兵器を理由に「核兵器が存在する限り、NATOは核同盟であり続ける」と宣言したが、その足元では、核兵器禁止条約の署名・批准を求める圧倒的な世論を背景に、各国の議会や一部の政権内で、核兵器禁止条約に参加する可能性を模索している。

  『非核の同盟』

  核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)が6月10日、その検討の状況をまとめた調査報告書『非核の同盟』を公表した。

 議論の一つが、NATO加盟国が核兵器禁止条約に加盟する際の法的制約だ。・・・「軍事同盟」との自己規定は政治宣言にすぎず、北大西洋条約自体には核兵器への言及はない。ということ。

 ノルウェーのエリクセン外相が「署名・批准を妨げる法的義務はない」と認めたことをはじめ、多くの加盟国の学術機関や政府当局が確認している。

  日米安保条約という「軍事同盟」に属していようとも、核兵器禁止条約の署名・批准を妨げる法的義務はなく、核兵器の実験、製造、保有などの禁止義務を負うことはできる。

 茂木外務大臣も、「核兵器禁止条約に入らないのは法的理由からではなく、“わが国の方針”だ」と述べており、政治判断だ。

   日本の「核兵器禁止条約」参加を世界中が期待

  日本は唯一の戦争被爆国であり、非核三原則を持つ国だ。

 国民の7割が核兵器禁止条約への参加を願っている。

 核兵器の使用がもたらす壊滅的な結果を世界でいちばん経験し、体験しているのも日本だ。

  世界で唯一の被爆国である日本が、核兵器禁止条約に署名・批准し、世界をリードしていくことは日本の使命ではないだろうか !

  「生命より五輪を」を優先する日本であるが、 「軍事同盟より人類の平和」を願う日本を築き上げたい思いを新たにしたところである。

   『それでも、日本人は「戦争」を選んだ』

  著者・加藤陽子

 1960年、埼玉県生まれ、東京大学大学院人文社会系研究科教授

 2010年、『それでも、日本人は「戦争」を選んだ』(朝日出版社)で小林秀雄賞受賞

  かつて日本は、世界から「どちらを選ぶか」三度<①満州事変 ②三国同盟 ③日米交渉>問われた。しかし、 ・良き道を選べなかったのはなぜか? ・普通のよき日本人が「戦争しかない」と思ってしまったのはなぜか? 昭和史の大きな転換点を、「日本がなぜ戦争の道を歩んでしまったのか」を、史実に基づいて考察している。

  日本の国民大衆が無謀な戦争へと突き進んだ背景には、都合の悪い真実は隠蔽し、ウソに基づいて集団的心理を煽り、マスコミ(今ではインターネット)により扇動する構図だ。

 戦争を反省したドイツ、反省しない日本。 戦争を始めた原因、その判断と政策。現在の日本の政治状況にも似ている。

 当時も国会があり、内閣があり、国家の政策は国会で議論を進めていた。 しかし、多くの国民を犠牲にしてしまった。

 
 今でも国家は、このような選択をする可能性はある。

  新型コロナ禍の今、日本の内閣をはじめ、各地方の行政のリーダーの政策決定が国民の生活と命に直結する。

  この論理を直視しなければ、かたちを変えて戦争は起こり続ける。

  身につまされる本でる。

   核戦争に 勝者はない