所得税・復興特別所得税の申告は3月15日(月)
消費税・地方消費税の申告は3月31日(水)
今年も所得税・消費税の確定申告時期を迎えました。還付申告は、すでに1月から始まっていますが、納税額のある人については、2月16日から3月15日(消費税は3月31日)までとなっています。
令和2年分の確定申告では、何か変わった点はあるのか? 改正点やポイントについて整理・解説します。
昨年は、消費税率引き上げと軽減税率の導入により、事業者の帳簿記載に大きな影響ありました。 本年は、所得税で大きな改正点がありましたので注意しましょう。
1 確定申告の対象者
(1) 確定申告が必要な人
<主な例>
① 個人で事業を行っており納税額がある
② 不動産収入があり納税額がある
③ 給与が年間2,000万円を超える
④ 2か所以上から給与をもらっている
⑤ 同族会社の役員等で、その会社に不動産や事業資金を貸付、使用料・利息等を受け取っている
⑥ 令和2年中に土地等の譲渡があった
⑦ 給与所得者で給与以外の所得金額が20万円を超える
(2) 所得税の還付を受けられる人
<主な例>
雑損控除、医療費控除、寄附金控除、配当控除、住宅ローン控除を受ける人
2 令和2年分の主な留意点
(1) 基礎控除の見直し
基礎控除額については、合計所得金額が2,400万円以下の者の控除額が48万円に引き上げられた一方、2,400万円超は減額、または0円となります。
(2) 扶養親族等の合計所得金額要件等の改正
同一生計配偶者及び扶養親族の合計所得金額要件を48万円以下の者とするとともに、源泉控除対象配偶者は95万円以下、配偶者特別控除の対象となる配偶者は48万円超133万円以下、勤労学生は75万円以下に引き上げられています。
(3) ひとり親控除の創設等
① 寡婦控除が見直され、現に婚姻していない者のうち、次の要件を満たすものである場合には、ひとり親控除として、その者のその年分の総所得金額等から35万円が控除されます。
・その者と生計を一にする子(総所得金額等の合計額が48万円以下の者)を有する
・合計所得金額が500万円以下である
・事実上婚姻関係と同様の状況にない(住民票に未届の妻又は未届の夫である旨の記載がない)
② 寡婦控除の対象は、合計所得金額が500万円以下で、夫と離婚した後婚姻をせず扶養親族がいる人、夫と死別した後婚姻をしていない者又は夫の生死が明らかでない者とされました。
また寡婦控除の特例は廃止されました。
(4) 青色申告特別控除の見直し
取引を正規の簿記の原則に従って記録している者に係る青色申告特別控除の控除額が10万円引き下げられ55万円となる一方、取引を正規の簿記の原則に従って記録している者で、次の要件のいずれかを満たす場合は、引き続き控除額が65万円とされました。
① その年分の事業に係る仕訳帳及び総勘定元帳について、電子帳簿保存法に定める「電磁的記録の備付け及び保存」又は「電磁的記録の備付け及びその電磁的記録の電子計算機出力マイクロフィルムによる保存」を行っていること
② その年分の所得税確定申告書、貸借対照表及び損益計算書等を提出期限までにe-Taxを使用して行うこと
なお、10万円の青色申告特別控除を受けるための要件は、変更ありません。
(5) 給与所得控除の見直し
給与所得控除額が一律10万円引き下げられるとともに、給与収入が850万円を超えると、195万円が上限となります。
(6) 公的年金控除の見直し
公的年金控除額が一律10万円引き下げられました。給与所得と公的年金の両方の所得がある場合は10万円ずつ控除が引き下げられ増税となります。そこで、+.-0となるよう所得調整控除が新設されました。
注意したいのは、所得調整控除は確定申告によってのみ適用されることです。
申告しないと損をすることになります。
㊟ 持続化給付金は課税されます。
持続化給付金(他にも家賃給付金・休業補償金など・・・)などを受取った場合は事業収入とし
て課税されますので注意してください。<消費税の課税対象にはなりません>
表1 所得税額速算表(令和2年分用)
課税総所得金額(A) | 税率 (B) | 控除額(C) | 税額=((A)×(B)-(C))×102.1% | |
超 | 以下 | |||
1,950,000 | 5% | 0 | ((A)×5%)×102.1% | |
1,950,000 | 3,300,000 | 10 | 97,500 | ((A)×10%-97,500円)×102.1% |
3,300,000 | 6,950,000 | 20 | 427,500 | ((A)×20%-427,500)×102.1% |
6,950,000 | 9,000,000 | 23 | 636,000 | ((A)×23%-636,000)×102.1% |
9,000,000 | 18,000,000 | 33 | 1,536,000 | ((A)×33%-1,536,000)×102.1% |
18,000,000 | 40,000,000 | 40 | 2,796,000 | ((A)×40%-2,796,000)×102.1% |
40,000,000 | ― | 45 | 4,796,000 | ((A)×45%-4,796,000)×102.1% |
住民税額の速算表(所得割) | |
[課税所得] | [税率] |
一律 | 10% |
表2 確定申告書チェック表 (令和2年分用)
区分 | 項目 | チェックの内容 |
所得金額 | 共通 | 営業・農業・その他の事業・不動産所得等については、収支内訳書の添付が必要です。 |
還付申告書を提出する場合は、給与所得以外の所得が20万円以下であっても、含めて申告します。 | ||
損益通算のできる損失は、不動産・事業・譲渡(注)・山林所得です。 | ||
所得から差し引かれる金額 | 医療費 ※セルフメディケーション税制との選択適用 | 補てん金は、未収であっても、見積りにより控除します。 |
差引負担額から10万円(又は所得金額の5%か、いずれか少ない金額)を、差し引いてありますか。 ※セルフメディケーション税制の場合、医薬品購入額が1万2千円超(8万8千円限度)。 | ||
医療費控除の明細書等の添付がされていますか。 | ||
寄附金 | 領収書、証明書等の添付等がされていますか。 | |
特定扶養親族 | 扶養親族のうち、年齢19歳以上23歳未満の人(平成10.1.2~平成14.1.1生まれ)で、控除額は63万円です。 | |
寡婦控除 | いわゆる「ひとり親」に該当せず、合計所得金額500万円以下の者(夫と死別の場合は扶養親族要件なし、夫と離婚の場合は扶養親族要件あり)が対象です。 | |
ひとり親控除 | 対象となる要件を満たしていますか(上記2-(3)参照)。 | |
配偶者控除 配偶者特別控除 | 合計所得金額が1,000万円超なのに適用していませんか。 | |
控除額は、最高38万円です(老人控除対象配偶者の配偶者控除は最高48万円)。 | ||
税額から差し引かれる金額 | 配当控除 | 対象となる配当所得は、剰余金の配当等です。 |
控除額は、課税総所得金額1,000万円以下は10%、それを超える部分は5%になります。 | ||
住宅ローン控除 | 申告書の住宅借入金等特別控除欄の「居住年月日」等は、すべて記入がありますか。 | |
添付書類の不足はないですか。 (1) 新築・中古家屋の場合 ①家屋(土地)の登記事項証明書 ②請負契約書又は売買契約書の写し ③住民票の写し(平成28年1月1日以降に自己の居住の用に供した場合は不要) ④住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書 ⑤建築年数基準(耐火25年以内、非耐火20年以内)に該当しない場合は、耐震基準適合証明書又は住宅性能評価書の写し、既存住宅売買瑕疵担保責任保険契約が締結されていることを証する書類のいずれか (2) 増改築等をした家屋の場合 上記(1)の各種の書類の他に「建築確認済証の写し」若しくは「検査済証の写し」又は、「増改築等工事証明書」 | ||
その他 | 源泉徴収税額 | 未払いの源泉所得税額も含めて記載します。 |
申告納税額 | 黒字の金額は、100円未満の端数は切り捨て。 | |
予定納税額 | 第一期・第二期とも、未納があっても記載して下さい。 |
(注)一定の居住用財産以外の土地・建物等を除きます。
昨年改正より引き続きつづくポイント
・ 源泉徴収票など、添付不要となる書類
① 給与所得、退職所得および公的年金等の源泉徴収票
② オープン型証券投資信託の収益の分配の支払通知書
③ 配当等とみなす金額に関する支払通知書
④ 上場株式配当等の支払通知書
⑤ 特定口座年間取引報告書
⑥ 未成年者口座等につき契約不履行等事由が生じた場合の報告書
⑦ 特定割引債の償還金の支払通知書
* この改正は、ワンスオンリー(行政機関に一度提出した情報の再提出の原則不要化)です。
紙による提出でもe-Tax申告でも内容を確認するため、必要があるときは、原則5年間、書類の提示又は提出を求められることがあります。
・ 消費税の課税事業者は、税率ごとの区分経理と区分記載請求書等保存方式
① 売上などで消費税を加味した取引を記載する場合、その売上が旧標準税率の8%なのか、新標準税率の10%なのか、軽減税率の8%なのか、区分して経理する必要があります。
② 仕入や経費などで消費税を加味した取引を記載する場合、その仕入や経費が旧標準税率の8%なのか、新標準税率の10%なのか、軽減税率の8%なのか、区分して経理する必要があります。
③ 「区分記載請求書等保存方式」
請求書に、取引が旧標準税率の8%なのか、新標準税率の10%なのか、軽減税率の8%なのかを明確にするため、令和1年10月1日から令和5年9月30日までの期間については、請求書等保存方式が導入されています。
区分記載請求書等とは、上記4項目に加え、軽減税率の取引については「軽減税率対象品目である旨」、さらに「税率区分ごとの合計請求金額」の2項目を追加記載するというものです。
なお、追加された2項目の記載がない場合など、記載事項に不備がある場合には、受取った側で追記することが認められています。
* 消費税率の引上げにあわせて軽減税率制度が実施されていますが、消費税の課税事業者においては、通常の帳簿記載に加えて、税率ごとの区分経理が求められました。
● インボイス制度 ・・・ 消費税の仕入控除の方式として導入された「インボイス制度」
制度導入は令和5年10月1日です。
インボイスの発行事業者の登録申請は本年10月1日から開始されます。
・・・免税事業者であっても、消費税の課税事業者登録を行わないと、
消費税課税取引から排除される恐れがあります。・・・
スマートフォンでも出来る 「確定申告」
・ 給与所得者で、2ヶ所以上から収入を得ている方は、スマートフォン版での確定申告が可能です。
一時所得と雑所得も可能とですので、年金者、副業などで雑所得のある方も対象範囲に入ります。
所得税は収入ではなく ・ 所得にかかる
所得税の計算は以下のとおりとなります。
1 収入金額 - 必要経費 = 所得金額
2 所得金額 - 所得控除 = 課税される所得金額
3 課税される所得金額 × 税率 = 所得税額
4 所得税額 - 税額控除 - 源泉徴収税額 -予定納税額 = 納付税額/還付税額
以上より、マイナスされるもの(必要経費・所得控除・源泉徴収税額)を正確に把握することが、税金を正しく計算(納め過ぎない)するポイントとなります。
* 必要経費(収入から差し引かれる金額) ・・・ 字句のとおり、収入を得るために必要な費用です。収入との相関関係(相互関連)と金額的合理性(世間常識)であり、十分な主張と根拠を示して計算しましょう。
給与収入、公的年金収入に対しては、給与所得控除額、公的年金控除額として法令で定められている控除額が適用されます。
* 所得控除・・・俗に家庭事情控除と言われるものです。下記事項を参考にしてください。
・ 雑損控除 ・ 医療費控除 ・寄附金控除 ・ 社会保険料控除
・ 小規模企業共済等掛金控除 ・ 生命保険料控除 ・ 地震保険料控除
・ 寡婦控除 ・ ひとり親控除 ・ 勤労学生控除 ・ 障害者控除
・ 配偶者控除 ・ 配偶者特別控除 ・ 扶養控除 ・ 基礎控除
* 税額控除 ・・・ 政策的控除とも言われるもので、下記事項を参考にしてください。
・ 配当控除 ・ 住宅借入金特別控除 ・ 政党等寄付金特別控除
・ 認定NPO法人等寄付金特別控除 ・ 公益社団法人等寄付金特別控除
・ 住宅耐震改修特別控除 ・ 住宅特定改修特別税額控除
・ 認定住宅新築等特別税額控除
・ 源泉徴収税額、予定納税額は、既に支払っている税額であり、当然の控除です。
年金所得者の注意点
本年改正から特に注意することがあります。年金を受給しながら給与収入がある方。
給与所得控除と公的年金控除がともに10万円づつ引き下げられました。よって、増税となってしまいます。そこで、+.-0となるように「所得金額調整控除」が新設されました。
注意したいのは、「所得金額調整控除」は確定申告によってのみ適用されることです。
申告しないと増税となります。
税務行政の事務効率のため、年金者の確定申告の権利を奪うものと言えます。