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    税務調査の行方、 コロナ禍でも厳格

 コロナ禍の影響は、申告期限の延長や納税の特例猶予、税務調査の中止等大きな影響を与えてきた。

 日経新聞の報道によると、“全国の税務署や国税局が新型コロナウィルス感染拡大防止のため、4月から中止していた新規の税務調査(訪問)を再開させることが、関係者への取材で分かった。
 国税側は9月の連休明けの23日から納税者に電話で調査を受けてもらえるかどうか確認し、10月から再開する見通しだ。
 調査の中止が続くと税逃れの放置につながることに加え、来年2月に始まる所得税の確定申告受付に備え、10月の再開が欠かせないと判断したとみられる。
 一方、調査は屋内で長時間実施することが多く、高齢の納税者が断る可能性もあり難しい対応を迫られそうだ。

 日本税理士会連合会などの関係者によると、国税庁は12ある国税局・事務所(沖縄)のトップを集めた会議で再開を通知し、18日に日税連に連絡した。

 国税庁は訪問調査時のコロナウィルス感染防止策について「税務職員の人数や滞在する時間を可能な限り最小限にする」などとしている。

 7月、国税当局では人事異動があり、各税務署では新たな人員による調査体制が組織された。
 今後の調査について納税者の状況を配慮しつつ行っていくとしているが、従来通りの対面税務調査を行うとしている。

   コロナウィルス感染は終息したのか?

 4月7日に7都道府県に緊急事態宣言が発令。16日には全国に範囲が拡大された。
 その後、第1波は大きく減少したが、夏場、コロナウィルス感染は下火に向かうとの予想に反し、第2波は第1波を大きく上回る新規感染者が発生した。

 現在、1週間の新規感染者は微妙に拡大傾向を続け、秋・冬に向けインフルエンザの流行と合わせ最大限の警戒を警告している専門家も多い中、この時点で税務調査再開は妥当なのか疑問を感じる。

 経済の再開も重要だが、税務調査は経済回復には繋がらない。財政(税収)悪化再建の論理が優先した税務調査再開に思われる。

 これが消費税増税に繋がらなければよいが ?

   税務調査を受ける環境は? 納税者側にはない!

 一方、納税者側に税務調査を受ける環境・対応が十分にできているのか?

 家庭内感染・職場感染が拡大している状況で、今後調査依頼があっても税務調査を受ける環境・対応が十分にできない場合が想定できる。

 税務調査権の行使に拒否権はない。
 税務調査は会議室や応接室が使われる。会議室や応接室は密閉空間となり、三密は避けられない。仮にコロナウィルス感染が発生した場合、会社側・税理士の対応は最大のリスクを負うことになる。

 会社側・税理士側の環境整備として
 ・ 換気や窓・扉を開けたままで対応する ?
    * 会社や税理士にとって機密事項や社員の知らない事項・プライバシーまで税務調査官に
     説明しなければならない。税務調査官には守秘義務がある。 … 対応が難しい
 ・ 調査は三密状態で対応する ?
    * 三密の状態に会社や税理士、税務調査官が長時間同席する。 … リスク回避難しい
 ・ 定期的な換気・アクリル板の仕切りも考えるが ?
    * 税務調査のためだけの対応である。 ・・・ 万全ではない
 ・ 会社がテレワークを推進している状況でどう対応する ?
    * 社会的に推進しているテレワーク勤務。 ・・・ 対応が十分に行えない

 以上を考えると、秋・冬の感染拡大<第3波 - コロナウィルス感染拡大の最大危機>が予測されている中、税務調査の再開は妥当なものか疑われる。

 国税当局(特に税務調査官)が、今までと同じような税務調査ができると思っているのであれば、危険としか言いようがない!

 国税庁は訪問税務調査時のコロナウィルス感染防止策について「職員の人数や滞在する時間を可能な限り最小限にする」などとしているが、 税務調査が再開される場合『3密を徹底的に避け、コロナウィルス感染防止に万全を期した場合に限定(国税当局もこの対策を確認すること)し、短時間で効率よく行うこと』を徹底してもらいたい。 少なくとも「税務調査最優先」の行政対応は行うべきではない。

埼玉県内の新型コロナウィルス感染者数(9/22、午後8時現在)
 ・ 感染者合計 4,458人(東京、大阪、神奈川、愛知、福岡に次いで第6位)
 ・ 同 死者数  100人(東京、大阪、神奈川に次いで第4位)

   コロナウィルス・パンデミック 有効な対応は「税の公平」

 国連人権理事会のデシュッター「極度の貧困と人権」特別報告者は、同理事会の報告書を提出し、「富の再配分を大幅に行わないなら、ただ経済が成長しただけでは貧困に有効な対応できない」と指摘、各国政府に「税の公平」を求めた。
 報告者は、新型コロナウィルスのパンデミック(世界的流行)のため1億7600万人以上の人たちが極度の貧困に追いやられているが、貧困や不平等、人命の軽視に対する国際社会の指導者や経済学者が貧困対策を“自画自賛”しても「現実には数十億の人にはチャンスがなく、限りなく冷遇され、直面する必要のない飢餓や予防可能な死に直面し、基本的な人権もない」と訴えた。

 「世界経済は冷戦終結後倍加したが、今も世界の半分は1日5.5ドル(600円弱)で生活している。経済成長の恩恵はほとんどの最富裕層の手にわたっているのが主要な原因だ」と告発している。

 政府が社会保障に必要な予算を確保するためには、税の公平が重要だと強調。 2015年には、多国籍企業が推計で40%の利益をタックスヘイブン(租税回避地)に移す一方、世界の法人税率は1980年の平均40.38%から、2019年には24.18%にまで引き下げていると指摘した。

 日本の法人税実効税率、安倍政権発足前37% ➡ 2018年度29.74%
 家計消費支出も2012年平均360.1万円から2019/10~2020/6月平均324.8万円と35.3万円と月額30,000円近く減少している。

 経済活動の“再開”のみの前のめりし、感染拡大防止の最前線にある病院・医療従事者には経済支援はなく、病院、医院の6.7割が赤字経営。 医療従事者の賃金はボーナス無、残業代無の状態に陥っているが、そこへの経済援助は行き渡っていない。

Go Toトラベル
 「コロナウィルス感染拡大防止と経済再建の両輪」と称し、Go Toトラベルを拡大しているが、その実態は 
 1 夫婦2人旅行1泊@12万円×2=240,000円、 ― 旅行代金が最大50%割引、120,000円
  お得・・・
 2 宿泊料金が@12,000円、Go Toトラベルで5,300円割引、地域共通クーポン2,500円利用する
  と実質2,800円で利用できる(実質72%お得)・・・
 3 さらに、各地域ごとに割引クーポンがあり、実質0円で旅行できる・・・
などと格安旅行、豪華旅行をアピールし、コロナ禍での経済政策に前のめりして、このシルバーウィークの利用者が急増したが、この経済活動の“再開”の恩恵に預かる人は、生活に余裕があり、旅行ができる限られた人達だ。

 宿泊施設側、低所得者側から見れば、ギリギリ低料金でやっと家族旅行を企画してもGo Toトラベルの恩恵に該当しない。 ・・・ 生活と家計に余裕のある人達向けのGo Toトラベルだ。 Go Toイートも同様だ。 

 コロナ禍、早期退職、雇止め・パート切りや解雇に見舞われた派遣労働者、パート従業員。 母子家庭でギリギリの生活をしている親。 大学費用を自ら稼がなければならない学生など、生活と家計にゆとりのない人たちには無縁だ ・・・ コロナ格差が拡大している
 Go Toトラベル・Go Toイート・Go Toイベント・・・ の恩恵を受ける余裕はない。

 菅総理は、「自助」➡「共助」➡「公助」というが、これらの人たちこそ一番公助を求めている。 そこに公助が行き渡っていない。 菅総理、公助を一番必要としている人達を無視していないか ?

 いつかあった選挙スローガン『国民の生活が第一』 思い起こされる。

 日本の経済政策 『税と給付の公平』を強く求める。

 最大の経済政策は “消費税の減税” “法人税の増税” “所得税の累進課税の強化”による『応能負担』と『所得の再配分』 だ。