年金所得者の確定申告不要制度
公的年金の収入金額が400万円以下で、かつ、その他の所得が20万円以下の人について、確定申告不要制度が設けられています。 いったい誰のため ?
公的年金者の申告不要制度は所得税についてのみであり、住民税の申告は必要となります。所得税の申告は不要だが、住民税の申告はしなさい。 ・・・ なら、なぜ所得税だけ不要としなければならないのか(所得税の申告をすれば住民税の申告は連動される) ?
それは、税務署の都合だけです。 ・・・ 年金者の申告が税務署に殺到すると税務署が忙しくなる。 税金を還付するような申告は受け付けたくない ・・・ が本音でしょう。
申告により所得税が還付される
確定申告を不要とする人であっても、申告することにより所得税が還付される場合がほとんどです。(源泉徴収税額がある方)
○ 医療費控除、寄付金控除、生命保険料控除、雑損控除などがある
* 家族の分も支払っていれば控除の対象になります
○ 住宅ローン控除を受ける
○ 社会保険料(介護保険料など)を普通徴収により個人で納付している
* 家族の分も支払っていれば控除の対象になります
○ 平成30年中に扶養親族等が増えた
○ 平成30年中の扶養親族等に誤りがあった、障害者控除、寡婦(夫)控除を受ける
* とくに、生命保険料や別途納付の社会保険料(後期高齢者医療保険料・・・)の支払がある場合は申告しなければ所得税の還付は受けられません。また、寡婦(夫)控除も年金受給の際に申告しなければ控除されておりません。(漏れていることが多く見受けられます)
年金の源泉徴収税額は、サラリーマンの源泉徴収と同じ概算であり、税法に照らし正確な税額となっていません。正確に計算すると所得税額と源泉徴収税額と一致することはなく、多くの年金者は税金を払い過ぎとなっています。 ・・・ 申告をすることによって還付を受けられます。(サラリーマンが年末調整で税金が還付されるのと同様です)
<事例> ― 申告不要制度に該当する者
年金生活者 年金収入2,172,950円 源泉徴収税額21,189円 配偶者<妻アリ>。
生活状況 ― 医療費支払額152,927円 旧生命保険料支払額100,254円 介護保険料支払額52,173円 地震保険料支払額25,620円であった。
還付申告すると源泉徴収税額21,189円全額の還付となる。 住民税10%(所得税5%)を加算すると4万円程度の税金の軽減となる。
税務行政の事務効率のため、年金者の確定申告の権利を奪うものと言えます。
所得税・復興特別所得税の申告は3月15日(金)
消費税・地方消費税の申告は4月1日(月)まで
今年も所得税・復興特別所得税の確定申告の時期となりました。還付申告は既に1月から始まっていますが、納付額のある人については、2月15日(金)から3月15日(金)までとなります。
消費税・地方消費税の確定申告は、2月15日(金)から4月1日(月)までとなります。
以下、平成30年分の確定申告のポイントを整理しました。
確定申告の対象者
● 確定申告をしなければならない人(主な例)
① 個人で事業を行っており、納税額がでる
② 不動産収入があり、納税額がでる
③ 給与が年間2,000万円を超える
④ 2ヶ所以上から給与をもらっている
⑤ 同族会社の役員等で、その会社に不動産や事業資金を貸付、賃貸料や利息を受け取っている
⑥ 平成30年中に土地等の譲渡があった
⑦ 給与所得者で、給与以外の所得金額が20万円を超えるなどです。
● 確定申告をすれば、所得税の還付を受けられる人(主な例)
① 雑損控除、医療費控除、寄付金控除、配当控除、住宅ローン控除を受ける
・ 確定申告をしなければ所得税の還付は受けられません
・ 住民税も減額されません
② 会社で年末調整(控除の申告もれ等含む)を受けられなかった
③ 年末調整制度がない公的年金を受給している
④ 退職金から源泉徴収されている人で、一定の条件の人などです。
所得税は収入ではなく ・ 所得にかかる
所得税の計算は以下のとおりとなります。
1 収入金額 - 必要経費 = 所得金額
2 所得金額 - 所得控除 = 課税される所得金額
3 課税される所得金額 × 税率 = 所得税額
4 所得税額 - 税額控除 - 源泉徴収税額 -予定納税額 = 納付税額/還付税額
以上より、マイナスされるもの(必要経費・所得控除・源泉徴収税額)を正確に把握することが、税金を正しく計算(納め過ぎない)するポイントとなります。
* 必要経費(収入から差し引かれる金額) ・・・ 字句のとおり、収入を得るために必要な費用です。収入との相関関係(相互関連)と金額的合理性(世間常識)であり、十分な主張と根拠を示して計算<自己主張>しましょう。
給与収入、公的年金収入に対しては、給与所得控除額、公的年金控除額として法令で定められている控除額が適用されます。
* 所得控除 ・・・ 俗に家庭事情控除と言われるものです。下記事項を参考にしてください。
・ 雑損控除 ・ 医療費控除
・ 社会保険料控除 ・ 小規模企業共済等掛金控除
・ 生命保険料控除 ・ 地震保険料控除
・ 寄付金控除 ・ 寡婦.寡夫控除
・ 勤労学生控除 ・ 障害者控除
・ 配偶者控除 ・ 配偶者特別控除
・ 扶養控除 ・ 基礎控除
* 税額控除 ・・・ 政策的控除とも言われるもので、下記事項を参考にしてください。
・ 配当控除 ・ (特定増改築等)住宅借入金特別控除
・ 政党等寄付金特別控除 ・ 認定NPO法人等寄付金特別控除
・ 公益社団法人等寄付金特別控除 ・ 住宅耐震改修特別控除
・ 住宅特定改修特別税額控除 ・ 認定住宅新築等特別税額控除
・ 源泉徴収税額、予定納税額は、既に支払っている税額であり、当然の控除です。
* 土地・建物の譲渡所得について一言
土地・建物の売却に際し、その取得価額が不明? ということでバブルの時代に購入したにもかかわらず売却価額の5%しか差引いてもらえなかったとの話をよく聞く。 売却物件の取得価額は 当時の購入状況の記憶を思い出し、購入時の土地価額や建築価額等の計算をして妥当な取得価額を控除を主張しましょう。
<事例>
昭和60年に土地建物(築20年)を購入した。小料理店を営業していた。平成10年に夫が死亡(小料理店は継続)し、土地建物を相続した。 今般、その土地建物を売却し老人ホームに入居した。
売却価額は1,000万円、夫が取得した価額は不明である。
税務相談では、取得価額が不明であり5%しか控除できない。 税金は1,000万円-5%の20%=190万円となる。 と言われ途方に暮れた。
土地建物の登記簿謄本に記載されていた事項は、当時(バブル時)銀行からの1,200万円の借入をし、抵当権が付いていた。
本人記憶では手持資金500万円投入し店舗に改築した。 ・・・ 当時の土地価額、平均的建物建築価額等推計すると。取得価額は1,700万円、内、土地価額は1,050万円と想定される。
税金は0円となった。
バブルが崩壊し、不動産の価額が著しく低下した現在、逆に赤字覚悟で売却している例が多い。
5%の取得価額のみの控除で課税されたのではたまったものではない。
取得時の契約書がなくとも、登記簿謄本を取り寄せれば取得時期が明白になる。記憶をもとに、或いは、関係者の話ではいくら位であったと主張すれば、その土地・建物の取得時の相場は税務署でも計算できる。
* 復興特別所得税
平成25年分から平成49年分までの25年間の所得税について、復興特別所得税が課税されます。対象となるのは、源泉分離課税や申告分離課税も含めたすべての所得税で、税額はその年の所得税額(基準所得税額)の2.1%相当額です。
・・・何故、個人所得税だけ25年も続くのか? 法人税は廃止されたのに! ・・・
確定申告書は送られてきません !
これは、今後、納税者を電子申告に誘導し、納税者サービスをカットして、浮いた経費と労力をすべて税務調査に振り向けようとする意図が見えてきます。