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  「家族従業者の賃金は必要経費」・・・これが世界の流れ

 アメリカ・・・家族従業者であると否とを問わず、正当な事業経費として控除を認める。
 イギリス・・・事業目的のために行われたものについて、事業者の経費として控除を認める。
 ドイツ ・・・事業経費として支払われた金額はすべて控除するのが原則。
 フランス・・・家族従業者に対する報酬は、損金または必要経費として控除が認められる。
 韓  国・・・従業員には配偶者・扶養親族も含まれ、給与は事業所得の必要経費として認められる。
 オランダ・・・家族従業員への賃金は控除可能。

 日  本・・・配偶者やその親族が事業に従事した時の給与・賃金は必要経費に算入しない。

 『父親が経営する左官業で働いていた男性に対し労働基準法上の労働者にあたる』とした甲府地裁判決に対し国側は控訴せずこの判決は確定している。

 同判決は、仕事中の転落事故で重傷を負った原告に「同居の親族は原則として労働者とは認めない」とした旧労働省労働基準局通達(1979年)をもとに療養補償と休業補償を支給しなかった甲府労働基準監督署の処分取り消しを命じたもの。
 判決は労働基準法第116条2項(適用除外)について「同項は同居の親族のみを使用する事業を労働基準法上の事業から除外する規定であり、同居の親族を除外する規定ではない」と判示した。

 判決でも依然として同居の親族のみを使用している事業についてはその労働者性を否定しているが、全ての親族について労働者性を認めるべきである。

  明治の遺物・・・所得税法第56条は、速やかに廃止を

 所得税法第56条は、「個人事業者と生計をともにする配偶者や家族が事業から受け取る報酬を事業の必要経費と認めない」規定だ。配偶者や家族の働き分を、事業主の所得に合算することを押し付けている。
 その発想は、明治20年に制定された所得税法の第1条但し書きだ。「同居ノ家族ニ居スルモノハ総テ戸主ノ所得ニ合算スルモノトス」に遡る。戦前の家父長制度で、家長に絶対的な権力を持たせた「家」制度に由来する前近代的な規定だ。
 敗戦の反省に立ってつくられた日本国憲法は、「家族における尊厳と両性の本質的平等等」(24条)をうたい「家」制度は廃止されたはずである。

 戦後税制の基となったシャウプ勧告も、民主的「個人単位課税」に改めるよう指摘したが、・・個人事業者には、民主的家族制度が十分に定着していない・・との政府・大蔵当局の反対で制限措置が残された遺物である。

 その後も課税当局は様々な理屈を付け、差別的税制、前近代的、非民主的税制である所得税法第56条を温存し続けている。

 もはや戦後は終わった。ましてや明治は遠く歴史の世界となっている現在、所得税法56条を合理化する理由は何一つない。

 裁判でも、個人の権利意識の高揚、個人事業の実態変化など、立法の前提は変わってきている(東京高裁1991年5月22日)と指摘した。

 家族従業者も一人の人間として人格・人権が尊重され、「法の下の平等」のため非民主的税な所得税法第56条は直ちに廃止すべき税制である。