法案の欠陥と狙い ― 示せない国民の利益
全国民に番号をつけ、所得や社会保障などの個人情報を政府が利用する「共通番号(マイナンバー)制」法案。 「行政の効率化と国民の利便性の向上」などをうたい文句にしている。 この法案の欠陥は、行政(権力者)の個人情報管理が優先され、国民の利便性など全くない国民監視法案である。個人情報の「漏えい」や「成りすまし」犯罪を防ぐ手だてもないことだ。 新藤総務大臣は「ペナルティー(罰則)があることが抑止力になる」というが、罰則で規制することは不可能である。 | あなたを狙う監視カメラ |
罰則で規制できるのであれば犯罪は起こらない。罰則で規制できるものであるなら人権侵害は起こらない。起こってしまえばその代償はあまりにも大きい。
不正使用は国内だけでなく、海外からも行われる。現在のインターネット社会では数万件の犯罪に1件逮捕できるかどうかだ。その間、失った財産、人権は戻ってこない。
「漏えい」が起きても番号を変えればよいとしているが、「漏えい」が起きてからでは取り返しがつかない。法案ではどう変えられるようにするのか規定していない。国民みんなが犯罪を防ごうと毎年変えようとしたらどう対応するのか ? ・・・
行政の効率化を上げているが、行政の効率化に役立つと思われるケースは、行政事務の0.01%しかないことも明らかとなっている。
政府・与党からも「ふたを開けてみないとわからない。相当いろいろな問題が出てくるのでは・・・」「導入の効果は・・・あると ? と思います」「国民の利益について・・・現時点では個別にお示しすることは困難である」と懸念の声も上がっている。 そんな不十分な法案、なぜ強行しようとするのか ? である。
結果として共通番号(マイナンバー)制の狙いは、権力者・官僚が“所得のみならず、資産も個人情報(親族関係や人間関係)も把握して、医療費や介護費の自己負担割合を引き上げ、社会保障費の大幅削減の道具にすると同時に、国民総監視を強化し、軍事国家・徴兵制にもつなげようとする”ものだ。
公務員の「守秘義務」は解除
地方公務員法では「職員は、職務上知ることのできた秘密を漏らしてはならない」(34条1項)とあり、地方税法第22条でも職員の守秘義務を規定している。
しかしこの「守秘義務」について、「共通番号(マイナンバー)制」のシステムに提供する場合は“解除”される。個人のプライバシー情報を第三者に提供するには、本人同意を必要とするなど慎重に扱ってきたが、「共通番号(マイナンバー)制」のシステムの場合は、個人が知らぬ間にプライバシー情報にアクセスされる危険がある。
「共通番号(マイナンバー)法」では、個人情報の提供について地方公務員には ・守秘義務が解除され ・情報提供の求めがあった場合、情報を提供する義務がある としている。
「共通番号(マイナンバー)法」では、(情報提供システム上)個人情報の提供の求めがあった場合は、情報を提供する義務を課しているのだ。
法案は3年後に民間分野などへの利用範囲拡大を検討している。
知らぬ間に「プライバシー情報」が提供
個人のプライバシー情報が無関係の第三者によって集積され、人格まで丸裸にされ、情報が売買され、不正利用されるような気味の悪い社会をつくってしまう。
憲法が保障する基本的人権の侵害にも直結しかねない重大な問題を含んでいる。