そのため、個人であれば確定申告で精算するが、個人の場合は1枚の確定申告書で復興特別所得税の上乗せと源泉所得税として納付済みの復興特別所得税が精算される仕組みになる。過去に行われた定率減税のやり方を思い描いてもらえればよく、それほどの手間はかからない。
法人は ひと手間もふた手間もふえる
法人の場合は申告書が1枚増え、2枚の別表1が必要となる。
通常法人税の「○○事業年度分の確定申告書」と復興特別法人税の「○○課税事業年度分の復興特別法人税申告書」である。
バブル時代に行われた法人臨時特別税は1枚の申告書で処理されたが、今回は違う。両方に代表者自署押印・税理士署名押印が必要で、税理士の代理権限証書にも復興特別法人税を書き込まなければならない。手間が増える。
なお、通常の法人税における課税所得がなければ、法人税額が発生しないので、復興特別法人税も発生しない。その場合は申告書を提出しなくてもよいとされている。ただし、これから述べるように、申告しなくてもよい場合は、法人に普通預金等がないという稀な例となろう。
しかも、である。復興特別法人税の対象期間である3年間がすぎても、25年間は通常の別表1に加えて「○○課税事業年度分の復興特別法人税申告書」を出し続けなければ正確な納税にならないことだ。よくもこのようなバカな法律にしたものだ。
まずはおさらい
通常所得税の取扱いは、所得税額控除の対象になり、申告書別表1において法人税から控除できる。控除しきれない場合は還付となる。控除対象にしない選択もでき、その場合は租税公課として経費とする。この場合は所得税額のうち法人税率分だけしか税金を取り戻せないので、普通の場合は全額を控除対象とし、控除あるいは還付を受けることになる。
復興特別所得税の扱い
さて、創設された復興特別所得税額は、復興特別法人税額から控除することとされており、法人税額から控除することはできない。かつ、復興特別所得税を控除する場合は、復興特別法人税申告書に明細書を添付することが要件になっている。
普通預金を持っていない法人企業があるとは思えないので、25年1月1日以降は25年間にわたって受取利息から源泉徴収される復興特別所得税がついてまわる。
3年間は2枚の申告書でいいとしよう。
それが経過した後も復興特別所得税は発生するが、法人税額があっても控除できないので、課税標準をゼロとする「○○課税事業年度分の復興特別法人税申告書」と明細書を提出して還付を受けることになる。法人税額がなくても同じである。そうしなければ、この法人は確実に損をすることになるからだ。
愚策を改正せよ
大きな税額ではないからとこの手続きをやらなければ、国がこの税額を稼ぐことになる。
チリも積もれば大きな額になるのを見込んでこんな仕組みを作ったのだとしたら、狡辛い話だ。
申告書の紙代(国の予算も使うであろう)、事務処理における時間の浪費を納税者や職業会計人に押しつける愚策である。現実社会を無視して、あるいは現実社会に思い至らず、税制を弄んでいる典型である。
わずか4年で廃止に追い込まれた「特殊支配同族会社の業務主宰役員給与の損金不算入」(18年度改正で創設したが、激しい批判を受けて22年度改正で廃止)を彷彿とさせる。
無駄を押し付けないようにするのは簡単だ。
復興特別所得税は法人税からも控除できることにすればよい。
こんなところにも政治の貧困が垣間見えるのが悲しい。