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27年度税制改正法案が国会に上程

  27年度税制改正の法案が2月17日、国会に上程された。修正もなく年度内成立が確実視されているが、ちょっと待ったである。
 27年度改正の特徴を一言でいえば、「格差拡大促進税制」の超推進改正となる。
 何がといえば………

さらに富の集中と格差の相続が・・

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 <個人の関連>
 ① ジュニアNISAの創設
 ② NISAの拡充
 ③ 住宅取得資金贈与の特例見直し
 ④ 結婚・子育て資金の一括贈与特例の創設
 ⑤ 教育資金の一括贈与特例の見直し
 ⑥ 事業承継による贈与税の納税免除の拡大
 <法人の関連>
 ① 法人税率の引下げ
 ② 研究開発税制の税額控除拡大
 ③ 地方拠点強化税制の創設

 いくつかの内容を簡単に解説すると……

 ① ジュニアNISAの創設
 親や祖父母が子供・孫名義でジュニアNISA口座(1口座のみ)を開設し、そこで株などの投資を運用する。期間は5年間で年間の枠は80万円。累積の総額で400万円が運用できるというわけ。その間の株の譲渡利益や受取配当は非課税扱い。子や孫が18歳になるまでに口座からの払出しをすると課税されるが、18歳の1月1日以降(高校3年生の1月以降)は払出し可能で課税されずに現金を手にすることができる。
 なお、20歳になれば自動で成人NISAに引き継ぎする方法もOK。
 この制度は、口座内の譲渡利益と配当の非課税措置で、贈与を非課税とするものではないので、毎年80万円ずつを口座に預け入れれば子や孫への贈与となるが、110万円の贈与税の基礎控除内なので贈与税はかからない。
 株が値下がりするリスクもあるが、運用次第で大変な額が無税で子や孫に引き継がれる。

 ② NISAの拡充
 これは成人NISAの話で、年間の現行枠100万円を120万円に広げる。期間は5年間。
 そうする①と併せておとなひとりの累計で1,000万円の投資枠になる(自分の枠で累計600万円、子供の枠で400万円)。夫婦がそれぞれ使えば世帯で2,000万円の投資枠となり、うまく運用できれば億のお金が無税で懐に入ったり子供に引き継げることになる。

 <個人関連>の③~⑥は、要は金持ちが資金や会社を世襲で子や孫に引き継ぐときに税金を優遇するもの。庶民も使えないことはないが、高が知れている。これでは格差が広がるばかり。ピケティさんは資産に累進で課税し格差を縮小すべきといっているが、真逆の税制になんというか………

   大企業に補助金

 <法人関連>も、今回の改正は儲かっている大企業が「大歓迎」の横断幕を掲げ「よくいらっしゃいました」ともみ手をしているニヤついているもの。
 ①の税率引き下げ②の研究開発費減税は説明するまでもなく、儲かっている大企業の内部留保を太らせ、益々儲かるようにする税制。
 ③の地方拠点強化税制の創設は、東京にある本社を3大都市圏以外に移転したり、既存の地方事業所(支店や工場)を拡充した場合に、新規に取得したり拡充するしさんの特別償却か税額控除を措置するもの。さらにそこで雇用を増やせば、雇用促進税制を拡充して増員1人50万円を税額控除できるというもの。
 受け入れる地方自治体は、その企業を支援することがこの税制の前提になっている。
 そこで現実問題を探ってみると、使える法人は絞られてくる。
 中小法人が本店を移転するのは家賃問題が主要であって、本社建物を法人が所有している場合、営業上の問題もあり簡単に本社ビルを売却し、地方に本社ビルを新規に取得するというわけにはいかない。
 しかし、企業名が世界的に認知されているような企業であれば、本社機能がどこにあっても影響は受けないといってよい。事実、グローバル企業は税金逃れのために本社を世界的基準で移転している。この傾向は国内においても同じであり、結局この恩恵を享受できるのは、名の知れた大企業となる。
 詰まる所この税制は、地方に移転する大企業に国と地方自治体の2者が手厚い補助金を出すということにつきる。
 これが地方創生の中身であり、ここでも歴然とした格差拡大が生じることになる。

 27年度税制改正は日本社会にある格差を一層広げるものであり、抜本的な修正が必要と思う。野党は税制改正で正面から立ち向かってほしいものだ。