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   金融庁の方針転換 

10月21日、金融庁は2016年の金融行政方針を公表した。
 目玉は「金融仲介機能」を強化するため、融資を受けられない中小企業の実態調査を初めて行うことだ。
 これまでの金融庁の金融行政が不良債権処理を通じて金融機関の健全性をチェックし、金融機関を守ること柱にしてきた。このため、地域経済や地域の雇用を支えている中小企業の資金確保は金融庁の守備範囲にあらずの姿勢であった。
 ではどこがやっていたのかというと、中小企業庁ということになる。ところが中小企業庁は「やる気のある中小企業」に補助金を出したり、税制上の優遇措置を措置することが主な仕事で、金融となると日本政策金融公庫頼みという実態である。
 いうまでもなく、大銀行は歯牙にもかけない。
 いきおい、中小企業の資金確保は地銀や信金、信組任せとなっていた。
 ところが、金融行政の健全性確保の指導があるため、地銀や信金もリスクをさけて地域の有力中小企業にしか融資を実行していない。
 これでは資金枯渇による事業からの退出、業務の縮小を余儀なくされ、つまるところ地域経済は疲弊せざるを得ない。これが今の地域の状態といってよい。
 安倍さんがアベノミクスを全開するといっても、肝心の資金が地域の中小企業に回らなければ活性化しようがない。金融行政の失敗といえる。

  「日本型金融排除」と定義

 さすがにまずいと分かったのであろう。
 金融機関の健全性よりも金融仲介機能を発揮して、経済成長を重視しようと金融庁は方針転換した。
 地域の金融機関が中小企業に融資しない主な理由は、赤字であったり、不動産などの担保がないことであり、金融庁もそのぐらいのことは分かっていて、こうした実態を「日本型金融排除」と定義した。

 この定義、昭和38年(1963年)に制定された「中小企業基本法」の前文に明記された「不利の是正」や、その前提となった昭和32年(1957年)の経済白書で記述された「日本経済の二重構造論」を髣髴とさせる。
 日本経済の二重構造とは、端的にいうと日本は大企業と零細企業に二極化され、中堅企業が存在せず、零細企業は規模による不利によって格差が構造的にものになっていて、日本経済の発展を妨げているというものである。

 今年はそれから60年たっている。にも拘らず、中小企業に対しては「日本型金融排除」があると定義したということは、規模による不利、格差を公式に認めたに等しい。
 実態としても、日本経済の二重構造は変わっていないどころが、大企業はますます内部留保をため込み、一方中小零細企業は低迷し、二重構造が強まっているといってよい。

 ともあれ、地域経済の疲弊を融資問題の視点でとらえ、金融庁として仲介機能を強化するというのだから、まずは歓迎したい。
 ところがこうした金融庁の動きに対して、地銀大手などは、中小企業に融資するのはいいが、焦げ付いたとき金融庁は責任を取るのかと反発を見せている。

 これまで金融庁によるいじめ的金融行政を受けていた地銀等の金融機関であろうから、反発は分からなくもない。しかし、地域に根差した金融機関の責務として、地域の中小企業と一緒になって地域を発展させようという企業理念をもち、ここは金融庁の方針転換を受け止めてほしいものだ。