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 10月20日~21日、沖縄糸満市で全国税制懇話会の秋季研究集会が開かれた。全国から75名が参加し、勉強を重ねた。当事務所からは5名が参加した。
 メイン講演を行った山本守之先生は、税の公平が歪んでいる現状を指摘し、専門家である税理士が問題意識を持って勉強していない現状を問題だとした。
 心にグサッとくる先生の指摘に参加者一同、心を新たにしたところである。

 山本先生の指摘は鋭いものであった。以下、概略を掲載し、読者の皆さんも考えてもらえたらと思う。
  「税の公平が保たれていない」
  
と時代の変化を鋭く指摘する山本先生

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<山本先生の講演>
 企業が生む価値を反映する企業価値の源泉は、製造業が中心であったころの「モノ」から、グーグルやアップルなどのデジタル企業の無形資産(ノウハウ、顧客データ)に代わった。
 こうなるとどこで稼いだか見えなくなってきている。知的財産権を低税率国に移すことで節税が行われる。
 米国の代表的な株価指数であるS&P500の構成企業の市場価値は次のように変化している。
 1975年 機械や不動産などの有形資産   83%
       無形資産                17%
 1995年 有形資産                32%
       無形資産               68%
 2015年 有形資産                13%
      無形資産                 87%
 課税でいえば、無形資産が生む所得に対する税率は10%、その他は標準税率が適用されると考えてよい。
 すると、従来は一定の税引前利益があれば、それに応じた税負担額があった。しかし、現在は税引前利益がどんどん伸びても税負担額は伸びない。
 これは世界的傾向で、企業の税負担額が下がり始めているということである。これで公平な法人税が保たれるのだろうか。
 そこでデジタル課税が出てきた。しかし、日本をはじめ手さぐり状態である。
 巨大な「勝ち組」への無策といってよい。
 専門家として、税理士はこれらにどのような公正税制を構築すればいいのか、勉強して提言できるようにせよ。

 山本先生の話は視野を一気に広げるものであった。先生は86歳になられた。しかし、勉学の意思はなお盛んで、講演を聞くと新鮮な風にあたる感がある。
 とても先生の期待に応えられそうもないが、問題意識を持って世界の動きを注意深く見ることはできそうだ。
 貴重な講演に感謝しつつ、報告としたい。